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とても簡単に幸せな生活にする方法

「自分も相手も大切にする自己表現」のあり方を身につけるアサーティブネスを伝える活動を長くやっています。伝えたいことをあまり迷わず適切な方法で伝えることで、心はいつも軽くなり、自分のことを理解してもらいやすくなります。
 心理学系の授業を担当していて、いつも伝えている話があります。
人は心にコップを持っています。ガラス製で、うすはりガラスのように繊細なコップもあれば強化ガラスの人もいます。日々生活していると、コップの中にストレスの水が断続的に入ってきます。梅雨時でムシムシするなぁという時に入ってくる水は、自然の中に生きる人間にとっては生来的になじみがあるので揮発性で、いつの間にか蒸発してしまい、通常、コップの中に留まる続けることはありません。ですが、揮発性でない水もあり、代表的なものは人間関係に関するストレスの水です。人が深い悩みを抱える時、8~9割が人間関係に起因しているといわれています。この水は蒸発しないので、自分で取り出さない限り心のコップに留まります。毎日の生活で、忙しさストレスの水や体調不良ストレスの水、選択に迷うストレスの水などあるうえに、この人間関係の水も多々入ってきます。1つ1つはちょっとしたこと―挨拶したのに相手が返してくれなかった/買い物したコンビニの店員さんがぶっきらぼうだった/友達の中で自分だけ遊びに誘われていない 等々―まぁ、人によって場合によってはちょっとしたこととはいえない水も、出さずに溜めていくとどんどん暈が増し、コップの空き容量が少なくなっていきます。これが心のキャパ。なんだかイライラするとか、気分がふさぐ、ちょっとしたことが気になってくよくよする、という形で「キャパがすくなくなっています」とサインが出ます。気持ちの面以外でもサインは出ていて、原因不明の頭痛や腹痛、下痢や吐き気が時々出るとか、身体のどこかに痛みや不具合が出るということもあります。それでも水を溜め続けると、やがて表面張力いっぱいいっぱいになり、ついにそれ自体はたいしたことのない1滴が入った時、一気にコップからこぼれ出ます。これが“切れた”“爆発した”という状態。あふれた水をその時目の前にいた人に浴びせかけてしまうのですが、それはたいてい、自分がどんなふうであっても立ち去らない人―自分の子どもや親、親友、恋人、パートナーなどーであることが多いものです。水をかけちゃっても自分を見限らないと思っている人。(但し、真性の「クレーマー」の方たちはサービス業の人や教師など立場上自分をムゲにしない人を選んでますね。)でも、考えてみると、“どんな自分であっても立ち去らない人”って、自分にとって一番大切な人なんですよね。様々なストレスやしばりがあって子どもに厳しくなりすぎるママたちも、学校や友人関係でためたストレスを親に八つ当たりする子どもも、職場では“良い人”するのにクタクタになり、妻に無愛想で無礼な態度をとる夫たちも・・・。気を遣って水を溜めている相手より、きっと水かけちゃった人の方が自分のことを思ってくれている、一番大切な人なんです。また、水を誰にもかけたくないからと、フタをする場合もあります。このフタは不思議な性能で、ストレスの水が入ってくるけど出ていかない構造です。すると、溜めて溜めて・・・やがてコップ内の水圧は最大になり、ついにヒビが入るか、いきなりバン!って割れてしまうでしょう。ヒビの場合は、心の大きめの不調。ひどい気持ちの落ち込みで人と会うこともできない、職場や学校に行けない、涙が止まらずつらくて仕方ないなど。粉々に割れてしまったのは、精神の病といわれる、自分も周りもどうしていいか困ってしまう状態です。こうなってしまったら、自力や気力でなんとかはならないので、医療的な支援も受ける必要があります。現代の優れた治療で、ヒビの部分に薬を入れて、しばらくしっかり負荷がかからないようにサポーターをして、仕事等はお休みして療養すればやがて生活できるようにはなります。粉々になったかけらを集めて丁寧に薬で貼り合わせ、ヒビの場合よりも長めにしっかりとサポーターをして、決して負荷がかかることのないよう環境にも配慮して保護します。サポーターがとれるようになって、たくさんのヒビ模様は残っても、コップは再び活動できるようになります。でもこの場合は、以前のようには負荷をかけることなく、その後の生活でできるだけ水を入れないよう、継続して薬を入れるようにして安定した生活をめざします。
 心のコップはこのようにサインを発したり、無理が重なれば壊れたりします。割れたりヒビが入ったりするのはできれば避けたいし、心のキャパがいつも小さくて、怒りっぽかったりすぐキレたり、傷つきやすすぎたりくよくよしすぎたりすれば、自分も幸せ感が薄いし、人とも円満な関係がつくりにくいですね。そんなふうに過ごさないためには、そう、単純にコップに水が入ってきたら出せばいいということなんです。1滴入ったらすぐ1滴出す。そうはいかない場合でも、出すのが大変にならない程度の溜め方でちゃんと出す。コップの容量を自分で大きくしておくわけです。あら、排泄と同じですね。
 どうやったらタイムリーに水を出せるのか。その最もシンプルな方法がアサーティブネスなんです。言いたいことを一番早い適切なタイミングで(コトが軽いうちに)、言うべき相手に適切な表現で伝える。慣れてしまえば単純なことで、とても簡単に軽やかにいられます。ですが、コップに水を溜めがちな人は、これが身につくためには練習が必要。日常生活の場面で練習するのもいいですが、なかなか勇気がいるかもしれませんから、アサーティブ・トレーニング(AT)では仮想場面でトレーニングメンバーどうしでロールプレイをやっていきます。行動療法の原理なので、練習として実際に自分の思いを率直に伝え、結果として成功体験を重ねることで、安全に表現スキルを身につけていくことができます。うまく表現できなくても、他メンバーの表現を参考にして何度でもやってみて、やがて自分らしい、心のコップが空になる気持ちの良い表現ができていきます。同時に、相手役になってみて、イヤなやつだと思っていた相手の立場や気持ちを体験することで、他者尊重の気持ちができていきます。攻撃的にならず、受身で我慢することなく、相手も自分も大切にする心の土台の上に、様々な状況で自在に自分の思い、考えを表現できるようになっていきます。相手の個性によっては、望むように理解しあえないこともありますが、相手に無用に期待や要求をする気持ちがないので、そういう相手をそのまま認め、穏やかに距離の取り方を考えることができるでしょう。
 この「心のコップ」の話は、コップにストレスの水が入ってくるときに感情のセンサーが鳴るので、感情―特に怒りの感情を否定せずキャッチして、水を出すためのアサーティブな適応行動をとろうということを伝える場合によく話します。怒りの感情は最初のごく小さい段階では、「あれ?」「モヤッとする」といった違和感くらいのものですから、そのタイミングで取り合うのが面倒で、つい「ま、いいか」とやり過ごすクセがついている場合も多いものです。でも、これを放っておくと、怒りの水はコップ内で変質していき、タール状の、サラッとは出てくれない状態になり、さらには「憎しみ」「恨み」といった他者への攻撃性に満ちた感情になってしまい、自分ではコントロールが困難になったり、自分の感情に自分が振り回される状態にもなりうるでしょう。ですから、感情が最初の扱いやすい段階の時にちゃんとセンサーをキャッチして、サッとコップから気持ち良く出すパターンを身につけるのが一番省エネなんです。時間を経て変質した感情は重いので、抱えるのも渡すのも苦悩します。早い軽い段階だと相手にとっても受け取りやすいので、話し合いも大変ではないでしょう。
 気づいたのですが、これは人間関係のみならず、“片付け”や“断捨離”といったモノに関しても同様のことがいえますし、身体の管理についてもそうですよね。部屋に物がたくさんあって、何かを探す時間が人生の無駄時間となり、イライラもすることや、溜めて溜めていざ片付けるとなるととても疲れるし、時間もかかる、だから取りかかるのにエネルギーと覚悟が必要と。片付けの専門家によると、不要な物たちは人のエネルギーを奪っているらしい。身体も、溜めて溜めて皮下脂肪・・・溜めた時間と同じかそれ以上をかけて朗らかならぬダイエットを繰り返す。スッキリ人生のコツは、物も入ってきたら手放す、取り出したらしまう、汚れたらその時サッと拭くといった、コップに溜めない原理のようです。身体も、そもそも生理学的に必要な分しか身体は要求しないでしょうから、ストレスやコップのヒビからの漏水によって過剰に摂取し、出すのが滞りがちになると、ダイエットしたくなるような状態となるでしょう。
 つまり、心も身体も部屋も、“入ってきたら出す”で本来の自分らしいあり方で生きられるように思います。心も体も軽く、暮らす空間もスッキリしていたら、自ずと幸せ生活になっているでしょう。なんて簡単なんだろうと思いました。“入ってきたら出す”―良いことにもいえますね。人から受けた愛や親切や恩は、愛と感謝の気持ちをすぐ返す、できることをできる時にできる相手ににして返す、ということでしょう。心のコップがいっぱいになりかけている人がいても、そんな連鎖で思いがけず溜まった水をすくい出すことになっているかもしれません。
 いかがでしょう?「そうだ、じゃあ今日からそうしよう!」となれば少しずつでもきっとそうなれます。「え~、とはいっても難しいよね~」と思ってしまうと、「難しいから自分にはできない」と脳に指令を出してしまい、結果できないままになってしまいます。私はカウンセリングをしますが、こう単純にはいかない場合の方々の苦悩に伴走します。(「走」ではないですね、「伴歩」って言いたいです。)カウンセリングを受けに来られる方の中には、わかっていることができない状態の人、わかっていなくて、気づくための支援を要している人、あるいは、本当にはわかろうとはされず誰かに自身の問題解決をしてもらいたいという人がおられると思います。最初のタイプの方にはアサーティブ・トレーニングはより効果的ですし、2番目のタイプの方には、考え方・価値観の棚卸し作業が必要な場合もありますが、トレーニングで楽になっていく実感が得られるでしょう。最後のタイプの方には、自分は自分の思い通りになること、自分の人生を自分がプロデュースすることの自由さすばらしさを知ってもらえることをめざします。でも、きっとこんまりさんややましたひでこさんの本、あるいは本稿を読んだだけでも、今の瞬間から自分の生活を自在に望むように変容させることができる人も多いことと思います。
 今年度もアサーティブ・トレーニングをやっていきます。たくさんの方とまた出会いがありますように。誰かがちょっと、できれば大いに楽にハッピーに生きられますように♡

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