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チャリダーアキの自転車世界旅行 オーストラリア一周編(9)


 

暑すぎます


 毎日、毎日、信じられない暑さで頭がおかしくなりそうだ。おまけに正面から強風が吹いて、全く前に進まない。
 ブルームを出てから野宿することが多かったこともあり、Port Headland(ポートヘッドランド)の町ではちょっと贅沢して安宿に泊まることにした。野宿でもキャンプ場でもなく宿に泊まるのは、いったいどのくらいぶりだろうか?
 
 宿のリビングには当たり前のようにソファーやテレビがあって、数人の宿泊客がゆっくりとくつろいでいる。

(このような辺境といってもよい地の宿に滞在している旅行者達って、いったい何者なのだろう?)

 と思うのだが、向こうからしたら僕の方がよっぽど何者なのだろう?と思われているのだろう。

 テレビから明日の天気予報が流れていたので、ちょっと気になって目を向けてみると、
 
(明日のポートヘッドランドの最高気温41℃)
 
 とある。
 
「暑いとは思っていたけど、41℃もあるの?」
 
 宿のオーナーに目を向けると、
 
「この時期は毎日40℃超えているよ。」
 
 と、聞きたくも無い情報を教えて下さった。
 
 ここ最近の気温が40℃前後というのは実は納得がいく。日なたに出るだけで火傷するのではないだろうかと思ってしまうくらいだから、自転車を漕ぐ漕がないの問題では無い。
 だが、ここが40℃だとすると、キャサリンからブルームへ続く道は、いったい何℃あったのだろうか?
 
 僕は久々に見たテレビに心を折られてしまい、もう一泊することに決めたのだった。
 
 夜になると、この辺りのツアーに参加したという方々全員が宿に集まってきて、BBQが始まった。こういった辺境の地でもツアーが組まれていて、結構な人数の参加者がいることに驚かされた。
 そう、そして、当たり前であるかのように、またまたクリちゃん達に再会してしまった。会えばお互いに満面の笑みで挨拶を交わすのだけれど、正直言ってあまりにも会い過ぎていて話すこともなくなってきている。もう少し会わない期間が長ければ近況報告も盛り上がるのであろう。
 それにしても、出会いの神様はどうかしている。確率とか、すれ違いとかを度外視しているのだろう。
 BBQを楽しむ方々が酔っ払ってうるさいのだが、冷えたビールをご馳走になり上機嫌で就寝した。明日も40℃を超えるという。朝4時には起きて走り出すつもりだ。午前中に距離を稼ぐしか術はないと思っている。
 
 
 早朝は、夏休みにラジオ体操に出掛けていた子供の頃に感じていたような、すがすがしい気分だ。自然とスピードも出てきて気力も充実している。
だが、日が昇り始めると気温はみるみる上昇し、それと時を同じくして気力はみるみる低下していく。午前10時頃、たまたま見付けた休憩所でぶっ倒れてふて寝していた。
 
 ふて寝しているとはいえ、僕は確信している。やけくそではない、待っているのだ。
 
(間違いないはずだ。)
 
 しばらくすると、1台の車が休憩所に入ってきて僕の近くに止まった。
 
「よし!」
 
 来た。
 
「アキ-!!」
 
 いつもの声だ。クリちゃん達がやってきて、冷たい水を飲ませてくれて生き返る。
 
(どうなっているのだろう?GPSか?何か発信器的な物が荷物に紛れ込んでいるのか?)
 
 僕に水を与えると、サッと車は出発していった。
 
「よし、走るか!!!」
 

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