【連載記事まとめ】乙庭好みの植材 アガベ関連記事
植栽家の太田敦雄です。私は「ACID NATURE 乙庭」名義で、オンラインショップでの植物販売と、建築家とコラボワークでの植栽デザイン、植物に関する執筆を主な職業にしています(他にもいろいろマルチワークスタイル)。
植栽家としての私の立ち位置としては、個性的な植物選びと独自のメッセージ性がある植栽をデザインをする者でいたいなと思っています。私の本も自著・共著で2冊出版されているので、有言実行できてるかな😊
今回は、私が庭や植物から始まる心豊かなライフスタイルを提案する情報サイト「Garden Story」内で書かせていただいている連載「ACID NATURE 乙庭 Style」から、私が趣味の園芸家時代から好んで植栽に用いている植物のひとつ、アガベについての過去記事をまとめてご紹介します。
アガベは主に北アメリカのメキシコ〜アメリカ南部を原産とするキジカクシ科の植物です。硬質のぼってりしたロゼット姿と荒々しい棘姿には幾何学的・彫刻的な美しさがあり、植栽に織り交ぜると絶好のフォーカルポイントになります。2010年代頃から日本でも植栽に多く用いられるようになってきた人気の植物ですね。
アメリカ西海岸地域に見られる乾燥地域の植物を使ったカッコいいドライガーデンの雰囲気や、2022年現在 人気が高まっているオーストラリア原産のネイティブプランツを使った植栽などにもアガベはとてもよく似合います。
日本でのアガベの普及史を考えてみると、昭和の通な愛好家間での多肉植物ブームあたりから珍品の斑入り品種なども含め、その存在は知られていましたが、鉢植えで大切に育てて眺めるような愛好家アイテムであり、庭植えにされることはとても少ないものでした。
流通面でもコアな多肉愛好家間でのクローズドな交換会や販売会、あるいは生産者のハウスを訪問して買うような形で苗のやりとりが行われていて、ごく普及種のアオノリュウゼツラン(Agave americana)以外は市場流通はほとんどなかったり、稀少品扱いでとても高価だったりして入手が難しいものでした。
2000年以降はネット通販の普及により、コアな趣味家が海外のナーサリーから好みの品種を個人輸入して楽しむようになり、また海外の植栽事例を洋書やネットで見て庭植え素材としてのアガベの魅力も徐々に知られるように。
そして2015年以降あたりから、巷の「ビザールプランツブーム」の煽りを受け、アガベやその近縁種も、日本国内での流通量や個人の輸入販売者も急増。
2022年現在の日本では、流通量も格段に増え、かつては洋書や図鑑でしか見ることができなかった品種もネット通販や大手ホームセンターなどでも手に入るようになってきました。
珍しい植物が手に入りやすくなることは園芸家にとっては喜ばしいことです。
しかし一方でそれは誰でも簡単にその植物を手に入れられるということでもあり、2022年現在、アガベを扱う業者やアガベを植栽する園芸家を取り巻く環境は流行的なレッドオーシャン化しているといえるでしょう。
よほどなにかしらの独自性や力で突出しない限り陳腐化の海に埋もれてしまう状況ですね。
私も園芸を始めた頃から個人輸入したアガベを庭植えで使ってきたので、アガベは私にとって思い入れのある植物のひとつなのですが、アガベが時代的に流行アイテムになっている現在の状況においては、お客様にあまり強く「推し」にしないようにしています。
誰もがお約束のように庭にアガベを植えたがる現在の状況では、お客様もよほど印象的に植栽しないと庭友達との差別化が難しいし、私自身が本当に大切に思っているものを流行り廃りの渦に巻き込みたくないとも思うし、そもそも現在「流行っている」ということは「終わりが始まっている」ということでもあるから。
とはいえ、単体でのアガベがトレンディアイテム化していたとしても「アガベを何と合わせて植えるか」という組み合わせやコーディネートのオリジナリティを磨けば、いくらでも差別化ができるんですよね。園芸の講演などで「どうやったら個性的な植栽が作れるのですか?」といった質問を受けることがあるのですが、この答えは「信念を持って自分らしいセンスや語り口を常に追求すること」に尽きると思います。
アイテムはお金を出せば買えるので流通量が増えればどんぐりの背比べになりやすいいのですが、センスというのは「自分らしさ」や「自分が表現したいもの」が反映されるものなので多様性や個性を盛り込みやすい。さらに組み合わせ(コーディネート)の要素が加わると、よほどまんまの人マネをしない限り他人とカブることはないですよね。
自分らしく、自分の好きなように植える。ただそれだけで他人とは違う「○○さんらしい庭」と評価してもらえるし、庭と自分との自己同一性もアップします。
他者からどう見られるか気にしている庭より「自分はコレが好きです」が滲み出ている庭の方が素敵だな、と私は思います。
というわけで、植物のセレクトと組み合わせのセンスを磨いていけば、どんな時代でも「時流に沿いつつ独立生のある」自分らしい植栽が作れると思うんですね。
そんな観点から、「時代の流れの中で陳腐化しないアガベの植栽」について考えてみた記事3編です。自分らしいお庭造りの参考になれば幸いです。
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