モノクロの花

水彩の筆は下ろされて
カレンダーの日付を薙いでいった
遡るほどあざやかな届かない日
モノクロの花を手向ける
存在の名前
細胞は遡行しない
進みゆくだけ
ひたすら ひたすらに
劣化し縮んだ隙間を埋めるものを
確かめられないが
足りていない気がする
少しずつ減っていく
体も記憶も
塵に数歩近づく
足りていないことに慣れる
数歩近づく
路地の奥 引きずられセメントのへこみに残る
赤黒いだけの塊
花が散るような風情は望めない
醜くくだらなく
ずたぼろに腐っていくさまをさらす
私と同じもの
腐りながら縮みゆくかたまり
隙間を埋めていったものを知りたい
私だった場所は
宇宙のように果てしなく暗く
行き止まりの路地みたくひっそりとして
佇みはじめた
遡行を開始する
記憶だったところから花を摘んで
もう頭もない私は
塵へ 塵へ と
モノクロを咲かせて断頭台はまぼろし
残りすべてを始点に撒き
立ち尽くしているうち染まるだろう
手向けのかたちのまま
一瞬のための墓標となって

いただいたご支援はやる気アップとコーヒーやアイスになります お待ちしています!