忘れない / poetry

きょうのことを忘れていく
さっきあったことを忘れていく
どんどん忘れていくことを止められない
そうやって日々を生きて
忘れながら生きて
何を忘れないと言えるだろう
忘れないと言った事柄を
本当に宝物のように箱に入れて
絶対に忘れない棚にしまって
本当に忘れないでいられるか
私には断言できない
日々、思い返して
思い出して
寝る前ごと思うような事柄こそ
続いていくのかもしれないと思いながら
いつかは思い返さなくなる
その日がくることを知っている
知っていて
思い返したり思い出したりしまったりする
しまった事柄をていねいに取り出し
ひとつひとつなぞっていくような時間を
とれることは少なく
あまりない、と言ってもいい
私たちには時間がないから
過去のことを思い出すのに大きな時間をさけない
さけないのに
絶対に忘れない、忘れたくないと
思ってしまう
わがままに
自分勝手に
自分の記憶力とは関係なしに
絶対に
忘れたくないと
強く想うちからを
持て余している
追いつかない記憶の容積
老いていくという時間の経過
そういうものを抜きにして
忘れたくないと思ってしまう
情動の熱さ
忘れたくなさの塊を抱く
いつ蒔いたか忘れた種から花が咲くように
あちこちで知られずに開く
忘れられたくなかった思い出たち


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