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大丈夫なんかじゃない

本当にそう。全然大丈夫なんかじゃない。いつだって

「あなたなら大丈夫」

という言葉は別れと同義で彼、もしくは彼女が私から離れて行く時に決まって口にする言葉だった。

明日から家に帰ってこなくなる父に、3年ぶりに会った母に、会社を辞めてしまうお世話になった先輩に、ずっと好きだった彼女にその言葉を告げられた時はいつも目の前が真っ暗になる。

無責任だと思ってしまう。彼等が私から離れていく理由は様々だけれど、どうしようもない理由があるのだけれどそれでもやっぱりそう思ってしまう。情け無い話だ。


心の弱い私はいつも軽薄な人間の装いをしていて、お酒やパチンコ、夜遊びを至上の娯楽の様に振る舞い続けていた。いつのまにか読書や映画鑑賞、観劇などからは足が遠のいていた。

ただこの軽薄な人間の装いというものは意外にも根暗な私とかなり相性が良く、「悩みがなさそう」なんてことをよく言われた。事実そうした振る舞いをしている間悩みは頭の中になかったし、楽しかった。友人も増えた。


しかし同時に自分が徐々に不安定になっていくのもどこかで感じていた。

いつもなら簡単に終われる仕事に時間をかけてしまったり。忙しい時に後輩が話しかけられない様な雰囲気を発してしまっていたり。

家に帰っても何もする気が起きなくなってしまって気付いたら夜中になっていたり、テレビのリモコンを落とした拍子に涙が出てきてしまったり。最近ではどんな量の食事を摂っても摂らなくても吐き気がする様になってしまった。

楽しい事もあったのだけれど楽しかった事に目を向ける余裕がなくなってしまっていて、しんどい事ばかり思い返してしまう。情けないにも程がある。


私がいかに大丈夫ではないかという事の発信なんて被害者意識が過ぎて我ながら気持ちが悪いけれどこんな事すら文にしないとやってられないくらい何かボンヤリとしたものに深く落ち込んでしまっている。

恥なのか外聞なのか軽薄な人間の装いを脱ぎ捨てる事ができないまま情けなくいつもヘラヘラと笑い続けているけれど、実際そういった余裕がある様な態度をいつだって取れるくらいしか取り柄がないのだから明日には取り戻したい。

出来ればうんとくだらない話をして。

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