2022/10/23 自己啓発100倍希釈アカウント

だいぶマシになったけれど、自己啓発系の話にアレルギーがある。それは、僕自身が社会人になりたての頃、自己啓発洗脳をうけ、某企業に搾取された過去があるからだ。あの会社にいたのが2016年。ビジネス本界隈も花盛りで、多種多様な自己啓発書が発売され、現在活躍しているインフルエンサーの書籍も、このころから増え始めたという印象だ。

現在2022年、書籍は相変わらずビジネス本は人気だが、それよりも目に見えて増えたなあと感じるようになったのが、「自己啓発100倍希釈アカウント」の存在だ。

「自己啓発100倍希釈アカウント」とは、既存の自己啓発本の内容を100倍希釈したくらいに薄めて、中身の無いことを、さも中身ぎっちりであるかのように、含蓄のある、示唆に富む、趣深い、いとをかしなレトリックで書き、理想と現実のギャップに苦しむ人間たちをターゲットに、優しく、ときに厳しくアメとムチを使い分け、情報発信に勤しんでいるSNSアカウントのことだ。

最近は誹謗中傷の認定ラインが極めて高く、具体的にこのアカウントです~とか書けないので、この日記の説得力は途端に皆無に等しくなるけれども、身に覚えがある人は多いと思うんだよね。

胡散臭いアカウントの出現は枚挙にいとまがない。妙に前向きなことをずっと言っていたり、そのアカウントオリジナルのビジネス方法論をお伝えします!とかだったりと様々。投資詐欺やアフィ誘導は見分けが付きやすいけれど、一般人にまぎれている自己啓発100倍希釈アカウントは少しばかりたちが悪い。

もしかしたら死語になっているかもしれないが、自己啓発100倍希釈アカウントは、「意識高い系」と似ている。意識高い系と違うのは、「自分をメタ認知する能力がなさそう」という点だ。

意識高い系は自分が意識高い行動をすることに自覚的である。意識低い行動や意識低い態度をした瞬間、意識高い系は自己崩壊を引き起こす。彼らにとって重要なのは、世の中をより上手に渡り歩く上で必要なスキルや知識の獲得に前向きで、実践的であることである。

が、100倍希釈自己啓発アカウントは必ずしもそうでは無い。普通に落ち込んだり、人生を楽しんだり、サボったり、仕事を頑張ったりと、普通の人生を暮らしている。しかし時たま、人生哲学を語りだす。それが明らかにポジティブに偏っていたりすると、味わい深い芳醇な香りが、スマートフォンやPCのモニターから漂ってくる。

彼らの正体は、感動屋である。他人の言葉に影響を受けやすい。それ自体は悪いことでは無い。僕も影響されやすい人間だから気持ちわかる。いい話聞いたら人に話したいもん。

自己啓発100倍希釈アカウントな方々は、利他精神と思いやりが人一倍強いとも解釈できる。なんだけれど、自分を他者の視点から見ることができないせいで、くっせーことを公の場で書いちゃうだけなんです。僕もその気があるので本当に気をつけたい。もしかしたらこの記事自体がそうかもしれない。消そうかな。

大抵はどこかの書籍からの受け売りである。もちろん、元になっている書籍で伝えられている情報よりも薄い。Twitterでは文字制限があるために、なお薄い。そういうのに出くわすと、「ホホホ笑」ってなる。ホホホ笑。

気にし過ぎではないかと言われるかもしれないが、僕にはこうした文章に敏感になってしまったのは、冒頭でも書いたとおり、腐るほど自己啓発本を読んできてしまったおかげで、いいこと言っている文章を見ると全て胡散臭く思えてしまう病に侵されているのである。
我、自己啓発難民経験者也。

社会人1年目に入ったとある広告代理店で、毎月100冊の読書ノルマを言い渡されるという頭おかしい状況を経験した。そのとき、自己啓発本なら薄いし難しくないということで、そういうのばっかり読んでいった。

おかげで一時期は特定の自己啓発メソッドの信奉者っぽくなっちゃったし、その情報を周囲の人間に伝えて「これいい考え方だよ!みんなもやろう!」みたいなくらいまで喧伝するほど追い詰められていた。正気に戻ったのは会社を辞めてから1ヶ月後だった。今でもあの会社の悪夢を見る。

自己啓発の最大のメリットは「課題の創出」であり、最大のデメリットもまた「課題の創出」である。自分に必要な課題の創出が可能であれば成長の糧となり、全く自分に必要のない、みせかけの、虚無の課題の達成に義務感を感じる、あるいは感じさせられるようになった瞬間、精神的苦痛がそこに伴ってくる。

自己啓発100倍希釈アカウントさんたちの前向きなツイートを読んでいると、不意にこう思う。

その課題やその生き方は、果たして自分が本当に必要だと思って背負ったものなのか、それとも社会の同調圧力か、はたまた存在しない課題を自己啓発本の著者にあるものと思わされて背負わされたものなのか、今一度、よくよく顧みてほしいな、ってね。

余計なお世話か。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?