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「図書館史」

今から6年ほど前にK大学で司書資格を取ったときの「図書館史」のレポートが出てきた。
図書館で働きながら一年で11本のレポートと15回ほどのテストを受けて取得したのも懐かしい思い出だ。
通信だったのですべて自宅からできたのはありがたかったが、他の人がどんな風に書いているのかわからなかったので、よく検索してはブログにアップされたレポートを見たものだった。
というわけで、誰かの参考になるとも限らないので載せてみる。
ちなみに「情報資源組織論」だけは4回提出する羽目になった。
毎回、指摘された点を直して送っても違うところを指摘されるのでキリがなく、最後は大学に抗議の手紙を送ったことを覚えている。
結局、その科目は最低点で通ったが、同時期に同じ大学の司書資格を取っていた同僚の合格レポートと比べても何が悪いのかわからなかった。
基本的に教員の好みに合わせる要領の良さが求められるところに釈然としないものを感じたのだった。

問題
日本または西洋のどちらかを選び、それぞれの時代(古代、中世、近世、近代以降)の図書館発展の特徴をコンパクトに要約し、かつ私見(400字程度)を述べてください。

解答
日本における図書館発展の歴史について述べる。
 
1. 古代(上代から平安時代)
 日本に文字(漢字)がもたらされたのは4~5世紀頃、典籍(経書)が朝鮮半島からやって来たときのことである。552年には仏教が伝来し、釈迦像などとともに経論が到着、610年には高句麗の僧から絵の具、紙、墨を得たとされる。情報伝達媒体の基礎は仏教の伝来によって芽吹いたといえるだろう。
 日本最初の著作は聖徳太子による『三経義疏』である。この頃は仏教派と儒教派の対立があったが、ともに漢籍や仏典を日本にもたらし、文化的に大きく貢献した。当時、複製は書写にて行われたが、それらを保管する「経蔵」や「校倉」が建立された。この施設は教育機関としても利用されたといわれている。
 645年の大化の改新以降、律令国家として立った日本は文書を紙や木簡に記し、保管施設として「図書寮」を設置。図書の収集管理、書写、校正、材料の調達などを担った。また、省庁などが使用する用紙を製造する「紙屋院」も設置された。10世紀ごろからは複製を収めていた私文庫を「官務文庫」として利用した。なお、書写は「写経所」に書生を集め、国家レベルで組織的に行った。ちなみに、世界最古の印刷物は764年頃の百万塔陀羅尼経だが、印刷方法はわかっていない。
 平安中後期には貴族文庫が興隆。有名なものに「芸亭」(石上宅嗣)、「紅梅殿」(菅原道真)などがある。
 
 2. 中世(鎌倉・南北朝・室町時代)
 中国(宋)との交流が盛んになり、版木に文字を刻印して印刷した「宋版本」が請来。日本でも「寺院版」が誕生した(なお、16世紀末には活字印刷機による「キリシタン版」がもたらされたが、朝鮮と西洋から来た活字本を総称して「古活字本」という)。また、武家の興隆により武家文庫が誕生、「金沢文庫」(北条実時)、足利学校の文庫、「名越文庫」(三善康信)などがある。これらは時代とともに廃れたり姿を変えたりしたが、
 国宝級の資料も含まれている。また、一部の公家や朝廷の文庫も存在した。
 
 3. 近世(江戸時代)
 徳川家康による天下統一は平和をもたらし、町民文化が興隆した。読書人口が一気に増えたため、古活字本より手間がなく一度に大量に印刷できる整版本が再び脚光を浴びた。出版や販売を担う書肆が登場し、本を売り歩く本屋も人気となった。
 図書館的機能を持った施設は、武家や大名の文庫、朝廷や公家の文庫、町人の文庫、幕府直轄学校や藩校の文庫、寺社や寺院の文庫、そして庶民が利用する個人文庫や貸本屋などがあった。
 
 4. 近代以降(明治から現代まで)
 明治に変わり、欧米の図書館を視察、紹介した福沢諭吉、田中不二麻呂らの啓蒙の甲斐もあって明治25年に「日本文庫協会」が発足。明治40年には機関紙「図書館雑誌」が発行され、翌年「日本文庫協会」は「日本図書館協会」と改称し、今に至っている。
 「国立国会図書館」の源流は、明治5年に発足した「書籍館」である。いくつかの改称を経て、明治30年「帝国図書館」となり、昭和24年に「国立国会図書館」となった。
 近代公共図書館は、明治5年に御雇い外国人ボールドウィンの建言によって設立された「集書会社」が先駆けである。その後、全国各地に有料、無料の書籍館ができたほか、新聞縦覧所や貸本屋などの存在も明治期図書館運動を後押しした。
 明治32年に日本初の図書館に関する法律「図書館令」が交付された。これは昭和8年に「改正図書館令」として再交付された。図書館関係の法律としては「国立国会図書館法」(昭和23年)、「図書館法」(昭和24年)、「学校図書館法」(昭和28年)などがある。
 戦後、「図書館の自由に関する宣言」(昭和29年)が採択。また「中小都市における公共図書館の運営」(昭和38年)の提起などにより、市民サービスに重きを置き、市民の権利を保障する現在の図書館の基本的な考え方が確立した。
  昨今、資料の形態も電子化の方向が進み、それらの維持管理、保存、検索、有効活用の必要性が高まっている。「国立情報学研究所」(平成12年)が設置され、情報学の総合的研究や基盤の開発、整備などが行われているが、公共図書館では設備の拡充、各大学図書館では機関リポジトリの整備など、さまざまな試みが始まっている。
 
 5. 図書館の歴史に関する私見
 日本における図書館の歴史を俯瞰してみると、文字や書物の発展に宗教が大きな役割を果たしていることに気がつく。人間が世界を把握しようとし、新たな観念や知識を表現物に記録するとき、それらを適切に保管し、後世に伝えたいと考えるのは自然である。図書館に対する思いは、古代から現代に至るまで変わらない人間の営みなのだと感じた。
 翻って現在は、全国各地に無料で利用できる図書館がある。当たり前のように感じていたこれらの施設が、先人たちの努力のうえに成り立っていることをあらためて考えさせられた。
 図書館の数や運営内容の高度さは、国民の教育水準、文化水準、知的水準に直結する。図書館史を学び、一図書館員として責任と自覚を持って仕事に当たりたいと思いを新たにした。

参考文献
小黒浩司 編著『JLA 図書館情報学テキストシリーズ 12 図書及び図書館史』(日本図書館協会)
佃一可 編集『現代図書館情報学シリーズ 図書・図書館史』(樹村房)

講評
猛暑、酷暑、残酷暑? 体調管理にはお気を付けください。
レポートはコンパクトによくまとめてあります。歴史の大きな流れを骨太に整理された点が評価できます。
最後まで頑張ろう。
お疲れ様でした。

総評 合格


【本日のスコーピオンズ】

35曲目「Steamrock Fever
5th アルバム『〜暴虐の蠍団〜Taken by Force』(1977)より。

とうとう5枚目のアルバムまで行きつきました。
けど10日ごとに1曲ずつ聴いているのでまったく積み上げがありません。
毎回初めて聴くバンドのような気持ちでいます。
さて、Steamrock Fever
ん? ヴォーカルがなんだか違う。こんな感じだって?
あと、フィーバーだからかシュプレヒコールのSEが入っていたり
子供の声?のコーラスがあったりと不思議アレンジ。
アルバム一曲目ということで期待感を抱かせる演出なのか。
ひとまず静観しよう。

感想は以上です。

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