『犬鳴村』トゥルーエンドじゃなかった説

映画『犬鳴村』観てきた。
奇才・清水崇監督の最新作。

犬鳴村の予告が流れるたび、「これは来る!」とワクワクしていたのが、この前劇場版メイドインアビスを観たとき。
まあその後ボンドルドって奴にメンタルをメッタメタのズッタズタにされて逃げ帰ってきたわけですけれども。

そして、満を持して『犬鳴村』公開。
たまたまスケジュールが空いたので、公開日に映画館へ足を運ぶなど映画オタクっぽいことをした。
座席は最大限スクリーンを大きく観られて、かつ首が痛くならないぎりぎりの神シートを確保成功。やったぜ。
いつもはラクしたいから、だいたい最後列に近い席を取るけど、ホラーとなれば話は別。

さあ映画泥棒を華麗にスルーして、いざ上映――――!!






お?

おおっ!?

え?

おおお!!

んんんんん!?

は?

で?






結論:んにゃぴ……よくわからなかったです。

――で終わったらわざわざnote書く意味はないので、以降ちゃんと書きます。











※ここからネタバレ入ります※











まず、肝心のホラー演出。これは非常によくできていた。
さすがは清水崇。がっちりと要点を押さえて王道ホラーを作り上げている。
じりじりと悪い予感のツマミを上げていき、一気に観客を捻じ伏せる。
まるでジェットコースターのような「分かっているのに逃れられない」――そういう恐怖感。
ベタといえばベタだが、案外これをしっかりとやれる監督は少ない。一歩間違うとギャグと化してしまうから。

では、ストーリーの話に行こうか。
ネタバレの但し書きをしたので、ここまで読んでいる方は観賞済みかもしれないが、一応あらすじを。
「覚えとるわそのくらい!」という方は飛ばしてください。

西田明菜と森田悠真のカップルは『犬鳴村』の都市伝説の検証に訪れていた。
しかし、明菜が何者かに襲われたことで危険を察知した悠真は、命からがら明菜とその場を離れる。
戻ってきた明菜は明らかに様子がおかしく、精神も幼児退行しているようだった。
そして、ふいに悠真の元を離れて徘徊したと思うと――明菜は鉄塔の上から、真っ逆さまに身を投げた。

総合病院の精神科に勤める、悠真の妹・奏。
少年・遼太郎は、毎晩奇妙な夢にうなされているとのことだったが、母親や奏の説得でも決して話そうとしない。
その後に父親の告白で遼太郎は、独り身の母親が産後間もなく死亡したために引き取った養子なのだと話す。
だが奏には、遼太郎の周りに立ちすくむ、真の母親と思しき女の姿が見えていた――。

犬鳴村を焼き払おうと、友人たちとトンネルに向かった悠真だったが、そこには高々と積まれた行く手を塞ぐ壁が。
気味悪がった友人たちが止めるも、悠真はその壁を越えていく。愛想を尽かした友人たちはその場を後にする。
悠真は何者かにトンネル内で襲われていた。そこに、こっそり付いてきた彼の弟・陽が現れ、脱出にその手を借りようとする。
しかし敢えなく、二人共々トンネル奥の闇へと吸い込まれてしまうのだった。

奏たちの周りでは、次々と異変が起こっていた。
悠真と陽の失踪に、狂犬の如き凶暴な反応を見せる母親。彼女に普段から忌み嫌うような言葉を吐き、その豹変にひどく怯える父親。
奏に襲いかかる怪奇現象。次々と変死を遂げる悠真の友人。数々の関係者が『溺死』によって命を落とす非常事態――。
奏が、何かを知っている風な父親を問い質そうとも、口を割ろうとしない。

埒が明かなくなった奏は、父親の言動を手掛かりに、母方の祖父の下を訪ねる。
祖父は、犬鳴村がダムに沈んだ『地図から消された村』であること、奏の祖母が来歴の分からぬ捨て子であったことを話す。
奏はダム近くで、幼少期から視えていた『謎の男』に話を聞くことに成功する。
そこで奏は、母方のルーツが犬鳴村の民に、父方のルーツが犬鳴村を沈めた一味にあることを知る。

真相を知った奏は、拒絶しようとも考えたが、全てを終わらせるため犬鳴村へと向かう。入口で、例の男が待っていた。
犬鳴村へと足を踏み入れると、とある倉庫の中に囚われた悠真と陽の姿が。
彼らを助けようとする奏に、男は檻の鍵と、建物の奥で倒れていた『摩耶』という娘の産んだ赤ん坊を託す。
瀕死の摩耶は最後の力を振り絞って赤ん坊を取り戻そうとするも、男と悠真の犠牲によってなんとか犬鳴村の脱出に成功した。

祖父に赤ん坊を託そうとした奏と悠真だったが、赤ん坊は現世[うつしよ]の存在ではなかった。
半世紀以上も前の祖父の家に拾われたことになっており、それはすなわち赤ん坊こそが奏たちの祖母であるということを示していた。
後日、悠真の遺体が発見され、母親は正気を取り戻した。遼太郎の『夢』もぱたりと無くなり、彼は通院を終えることに。
去り際、遼太郎は奏に『おかあさん』の言伝をする。「おともだちによろしくね」――――

――祖父曰く。犬鳴村には、里を抜け出した身寄りのない者が幾らか居たという。

遼太郎に背を向け歩き出した奏は、まるで狂犬の如き仕草を見せたのだった。

…………はい。

え、結局どういうこと?
いや、わかる。わかるんだよ。だいたい、奏が犬鳴村に凸ったあたりまでは。
結末付近の展開が雑すぎやしないか!?
なんで謎の男の赤ん坊を救出することが解決の鍵みたいになってんの?
なんでそれでちょっと解決した風になってんの?
なんで母親の狂犬化は治ったのに奏が狂犬化してんの?

……ホラーにディテールを求めるな? ライブ感で突っ走れ?

うるせええええええ!!!!!!

チャッキーやらアナベルみたいなIQ2でも楽しめるエクストリームシンプル設定ならまだしもだ。
あれだけ設定をペタペタ貼っつけるだけ貼っつけて投げっぱなしとか、そうは問屋が卸さないだろうが。

結末周辺に限らずとも、謎が残る点はかなり多い。

・「明菜はどのタイミングで死んだ?」
 明菜の死因が溺死だということは葬儀のシーンで明らかになるが、あの高さの鉄塔から落ちたのが直接の死因じゃないってお前の身体ラスプーチンかよ。
 ということは、それより前に肉体的には死亡していると考えるべきだが、だとすればフシギナチカラで動いてたんですかね……?

・「遼太郎の夢の真相は?」
 夢について作中で分かったのは、『悪夢』であることと『(産みの)母親に口外を禁じられている』こと。
 あとは、山野辺先生が危篤になったと同時に巻き起こる奏の夢中夢っぽいシーンで、遼太郎の心的世界と通じていたのか……?
 そのくらい。あとは何も分からない。おれたちは雰囲気で犬鳴村を観ている。

・「なぜ奏たちの親夫婦は結婚してしまったのか?」
 家を見る限り、代々伝わってきた格式ある家なので、恋愛感情に任せて駆け落ちしました~みたいな脳味噌ボロボロのラブロマンスは想像できない。
 ちゃんと踏むべき段階踏んで成婚したはずなのに、なんで犬鳴の血だと分からなかったんですかね?
 ……あれ、そもそもいつ母親の血が分かったんだ? 奏の爺ちゃんだって知らないんだぞ?

・「なぜ悠真と陽は死なずに囚われていたのか?」
 これに関しては「犬鳴の血が入ってるから」だと勝手に思っている。

・「犬鳴村の民の人外性はどこから?」
 『謎の男』の口振りでは、犬鳴村の民は「山犬を獲って食っていたのが特殊なだけの普通の人間」みたいな口振りでしたけど、明らかに違いますよね?
 どう見たってヤバめのアミニズムか何かをキメてますよね?
 そうじゃなきゃ村沈めた一味の末裔が肺に水溜めて死ぬ呪いにかかってたり、奏や母親が狂犬化する説明つきませんよね?
 それに爺ちゃんとか遼太郎が言及したはぐれ犬鳴民、その危険性…………これもう沈むべくして沈んだだろ。

・「なぜ犬鳴村に呪い殺された者が彼らに迎合するのか?」
 奏たちの犬鳴村脱出ラストシーン、悠真が明菜の亡霊(と呼んだらいいのか?)に後ろ髪を引かれる場面がある。
 犬鳴村の血は引いていない(はずの)明菜が完全に犬鳴側へと染まるのは正直予想外だった。
 あと、フィルム映像の中に出てきた、ダム建設一味の黒ハット男もあの中に居たんだよね。
 このシステムは割と謎が残っている気がする。

……まあ、他にもいろいろあるんですけど。
悠真が犠牲にならなくても割と逃げきれたんじゃね? とか。
なんで陽のパソコンまだWin7なんだ? とか。

要するに、物語の各所から結末部に至るまで、
好きなだけ謎という謎を放ったらかしたまま物語が終了するという。

勘違いしてほしくないのは。
これはあくまでホラー映画なので、問題が何も解決しないまま終わるのは作品性として全然アリだと思ってる、ということです。

それ以外のところで、どうしても納得がいかない。
納得がいかないから、こう思うことにした。
これはいくつもあるEND分岐のうちのひとつに過ぎないんだ、と。
TRUE ENDに進めてないんだから、そりゃあ解決されない謎も出てくる。
他のENDでしか明かされないことだって色々あるでしょう。

だからこれは、シュタゲで言ったらまゆしぃルートだ。
一応、結末までは辿り着いた風だけど、解決されなくちゃいけない問題が全然投げっぱなしになってるんだ……と。
きっと犬鳴村にもあるんだよ。
全ての謎を解き明かし、全ての悲劇から皆を救う世界線[TRUE END]が――――ッ!



…………何言ってんだ俺は。











追記: 大谷凜香の失禁シーン、とても良かったです。紳士たるもの是非劇場へ足を運んでみてください(ニッコリ)

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