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サガン鳥栖のサッカー

 自分の頭の中の整理も兼ねて、鳥栖の目指すサッカーについて改めて考えてみたいと思う。ロングボールとポゼッションの対立構造みたいな内容になってると思うけど、先に言っておくと自分としてはその2つに優劣は無いと思ってるし、どちらもしっかり選択肢として持てるのが理想のチームだと考えている。

 J1昇格後の鳥栖は、主にロングボール主体のサッカーを武器に戦っていた。このサッカーは縦ポンサッカーなどと揶揄されるが、SBとSHがサイドに張って相手を広げて中央を通そうとする仕組みや、献身性を軸としたセカンドボール回収の仕組みなど、とても理にかなった完成度の高いサッカーだったと思う。この頃の鳥栖は年俸面では低水準でありながらも、好成績を残し続け、戦術によって選手の市場価値以上の能力を引き出すことに成功していた。また最終的にはリーグ戦途中ではあるが、J1で首位に立つなど、そのスタイルは成熟していたし、その成熟度を山登りに例えると8合目辺りまで登りつめていたんじゃないだろうか。

  一つ今でもよく耳にする意見として『尹さん時代のサッカーでは優勝は狙えない』というものがある。個人的には、どうしてこういった意見が出るのかが全く理解できない。リーグ途中とはいえJ1で首位に立ち、上位争いをできていたのは事実であり、内容結果ともに充実していたように思える。タイトルこそ無いものの、どう見ても優勝を狙えるサッカーであったのは明白だ。結果で見ればJ1では成功の事実しかなく、失敗の事実はないため、そういった批判的な意見が出ること事態が不思議な話だと今でも思う(ロングボール主体のサッカースタイルが嫌いなど、好みの問題であれば勿論理解できるが)

 しかし、ここでシーズン途中ながら尹さんがクラブを離れることが決定。チームを離れた理由が未だ不明瞭であるため、この出来事自体について話すのは控えるが、一つ決定的なのは鳥栖がここからポゼッション重視のサッカーへ舵を切ったことである。8合目まで登りきったロングボール山を一度下山し、新たにポゼッション山を登ることに決めたわけだ。

 この後、吉田監督→森下監督→フィッカデンティ→カレーラス→明輝さんと監督が代わってきたが、一貫してボールを繋ぐ方針を貫いている。ここに関してクラブのやり方にブレは無い。ひたすら2015年から今まで5年間この方向性でポゼッション山を登り続けているが、問題なのは5年経っても未だに全く山の見えないところだ。

 2020年現在の鳥栖のサッカーとしては、後方での組み立ての仕組みがしっかりしていて、安定していてボールを繋ぐことはできているが、ペナルティエリアへの侵入は難しく、ゴールに遠い位置で回すことが多いという印象。山登りとしてはまだ3合目辺りだろうか。5年間一貫性を持って登りながらの現状の立ち位置がこれだと少し寂しい。

 最近よくTwitterで耳にするのが『今シーズンは準備期間だから』という意見。個人的にここに関しては少し認識が違っていて、5年前にロングボール山を下山したところから準備期間が始まっており、未だにその延長線として続いていると捉えている。

 降格が無い今シーズン、落ち着いて山登りに専念しやすいシーズンだと思うが、これまでの5年間と同じようなアプローチでは来年になっても山の頂点は見えてこない。今更また登るべき山を変えるのも難しいと思うので、なんとかして今シーズン終了までに5年間の集大成が形になってくれればと思う。そもそもこの山は鳥栖が登るべき山として正しいのか(クラブの伝統とか抽象的な話ではなく、選手構成的な面から考えて)等、色々言いたいこともあるけれど、結局自分はサポーターなので、文句を言いながらも応援して見守っていくしかない。

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