第9節 鹿島アントラーズ VS サガン鳥栖

鹿島VS鳥栖1

 ルヴァンカップでは大量の若手を抜擢した鳥栖。鹿島戦でもその流れを継続して左SBでは16歳の中野が先発。対する鹿島は鳥栖と同じくボールを繋ぐサッカーへの改革を進めるチーム。同じ方向性を目指すチーム同士の対決となった。

 鳥栖も鹿島も似たような方向性を目指しており、その信念をぶつけ合うような試合の流れ。お互いにオープンな状態でボールを持たれるのを嫌うため、高い位置から厳しめに、人数を掛けてプレスを掛けるが、お互いにGKを使った質の高いビルドアップを行えていたため、プレスを掻い潜り前線までボールを運ぶことのできるシーンが多くみられた。

鹿島VS鳥栖2

 鳥栖がボールを保持すると、鹿島はボランチのレオ・シルバ、ときには永木まで前に出して徹底的に前からプレスを掛けにくる。自分たちがボールを保持したいので、当然相手のボール保持はしっかり邪魔したい鹿島。ただ鳥栖もGKを使った組み立てをしっかり行うので、苦し紛れのボールを使わずにフリーの選手を作り出して精度の高いボールを前線に送り込むことができていた。

 ビルドアップの出口として最も機能していたのがドンゴン。鹿島はボランチの2人もかなり前掛かりになることが多いため、手薄になったそのボランチのエリアにドンゴンが下がってボールを受けることが多かった。ここでのドンゴンのポストプレーが非常に正確で、交代してから攻撃が全く機能しなくなっていたことからも貢献度の高さが伺える。

 相手の前プレを掻い潜って前線にボールを運ぶことに成功した鳥栖だが、そこから個人のミスが多くゴール前まで持っていくシーンは思ったより増えなかった。

 ここで改めてビルドアップについて話しておくと、基本的にサッカーは、自陣では楽にボールを持つ時間を作りやすいが、敵陣深くではそういった時間は中々作りづらい。よってまずは後方で時間を作り、そこで得た時間のバトンを前線に渡していくのがビルドアップになる。また前線の選手はこの貰った時間のバトンを、パスミスなどで無駄にせず活用しなければならない。

 しかし今日の鳥栖の前線の選手は、ビルドアップによって時間を得ることには成功したが、そこからパスミス、判断ミスなどでその時間を無駄にしてしまうシーンが多く見られた。(時折森下のドリブルなど時間を活かしたプレーも見られたが)

 対する鹿島は、ビルドアップによって得た時間をしっかりミスせずに決定機に繋げることができていたように思う。つまるところ試合を通じて個人の質の部分で差をつけられていた。鳥栖は間違ったサッカーをやってるわけではないだけに、こういった形で差をつけられるのは少し切ない。

 後半は鹿島が選手交代から大きく流れを引き寄せる。永木、白崎、伊藤を下げて和泉、三竿、荒木を投入。土居を前線に移して荒木を右に置いた。この辺りからこれまでレオ・シルバが担っていた前線へのプレスの役割を三竿が担うことが多くなり、レオ・シルバはやや低い位置で構えることが増える。幅広いエリアをカバーできるレオ・シルバによってドンゴンが下がって受けていたスペースを潰されるシーンが増え始める。

 またこの交代には前プレを継続するための体力的な側面もかなりあると思うが、交代前も交代後も良い意味で質の差が無かったため、これだけ人数を変えても全体的なサッカーの質は全く落とすことはなかった。

 対する鳥栖だが、代わって入った豊田にはドンゴンのような器用な働きは難しく、かといってその高さを活かすボールが入ることも少なかった。鹿島とは対象的に交代を重ねるごとに全体の動きは鈍くなっていったように見えた。

 色々な見方があると思うが、個人的なこの試合の感想としては、スタートの段階で差がついていた個の力の部分が、交代を重ねるごとにより顕著になっていって劣勢になった試合だったように思う。

 どれだけ組織でカバーしたとしてもこういった個の力という部分からは逃げられない。幸い今の鳥栖は若い選手が多く、個の力という部分も伸びしろが沢山あると思うので、次に鹿島をホームに迎え撃つときまでに成長して、次は真っ向から個の力で鹿島に打ち勝って欲しいと思う。何度も言うが、ここ数試合鳥栖がやってるサッカーの内容、方向性は間違ってないのでブレずに続けることが大事だ。

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