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#22 雪隠と留学 [第3部 スペイン編] ep.IX「古都トレド①」

「スペインで一日しかないならトレドへ行け」
、と言われる古都トレドへの日帰りツアーに参加した。川に囲まれた丘陵地帯に突然現れる小さな街だ。

昔ながらの石畳に同じく石の壁。細くて曲がりくねった坂道が多く、思ったより体力を奪われた。観光名所ということもあり、街の中心は人に埋めつくされていた。かつてはユダヤ教もスペインでは中心的な宗教だったため、その名残でユダヤ教会も残されていた。

このトレドという街をインターネットで検索すると上位に表示されるのが川を隔てた対岸からの全景だ。その場所は絶好の撮影場所ということで観光客が押し寄せる。例にもれず我々のグループもそこへ向かった。たしかに日本では到底拝めないであろう光景だったが、それは街の外観だけではない。

撮影場所は川へ続く崖の上にあり、足元には投げ捨てられた大量のごみが散乱していた。この街は経済的、政治的には現在のスペインでは重要な役割を担っているとはお世辞にも言えなく、観光で成り立つ文化的象徴だ。

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おそらくこのゴミもこの街の経済を回す観光客によるものだろう。川の色も濁っていて写真や絵に描かれているものと比べるとひどい有様だ。遠くに見える美しさも魅力的ではあるが、たまには見下ろすことも必要だ。

この街を支える観光客がこの街を破壊する。
なんてわかりやすい皮肉だろうか。観光とはいったい何だろうか。

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次回予告『雪隠と留学 [第3部 スペイン編] ep.X「古都トレド②」』

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