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【エッセイ】3月9日

 『3月9日』という題名の歌がある。日本のバンド「レミオロメン」のヒット曲である。メンバー3人の共通の友人の結婚式を祝うためにつくられたこの曲は、現在では卒業式の合唱曲として定番化しているらしい。歌詞だけみると二人の門出を祝う曲に感じられるが、プロモーションビデオをみて納得した。確かに卒業の場面がでてくる。しかも主演は堀北真希だ。学生服の真希ちゃんかわいい~♡、と食い入るようにみつめる私。どうしてこの曲を紹介したのか。答えは簡単で私の誕生日が3月9日だからである。単純に自分の誕生日が題名の歌があるっていいなと思う。(日付がタイトルになった有名曲を私は他に知らない)しかし私の本当の誕生日は3月3日になるはずだった。私は出産予定日を6日もおくれて生まれてきた赤ちゃんだった。

 私は父のことをセンスの悪い人間だと感じているが、名付けに関しては本当に感謝している。私は自分の名前が大好きなのだ。人からはそのまま物書きになれそうな名前だねと言われたこともある。ただ素敵なご家庭の娘さんたち、という印象を与えそうな名前の効果も空しく我が家は相当にいけてない家ではあったが。

 実際私の家庭が明るく健全な家庭ならば、この歌のことでかなり盛り上がったのではないかと思う。以下に私の理想とする家族の会話の想像を試みる。

私「みんなきいてきいて。『3月9日』というタイトルの歌があるんだって」   

 母「3月9日?それってあなたの誕生日じゃない」            

私「そうなのよ。しかもその歌、結婚式のためにつくられた歌なんだって」 

母「結婚式?んまぁ、それじゃあなたの結婚式には是非その曲を流さなくちゃ」           

父(聞き捨てならないという感じで)「なに?結婚?まだお前にはそんな話早いんじゃないか」

妹「お姉ちゃんばっかりずるい。私も自分の歌がほしい~」

 ざっとこんな感じだろうか。あまりに現実とかけ離れていて書いていて苦しくなってきた。残念ながら我が家は万年通夜状態みたいな家だったため、このような会話が繰り広げられる可能性は万に一つもなかったが。ただ本当に夫婦関係が良好で、彼らが真剣に子どもを愛するタイプの人間ならば私は健全に成長することができただろう。そして愛する人に出会いとっくに嫁にいっていたことだろう。(そんなことはNさんに指摘されるまで考えたこともなかったが)私は自分がなかなか人を好きになれない理由には、自分に何らかの問題があるのだと思っていたが、そうではなかったのだ。親からきちんと愛された記憶のない人間は、人との関係を築くのが不得手になって当然なのである。私はもともとは愛情深い人間だった。あの人たちの子どもとは思えないぐらいに。

 3月9日はサンキューの日。関門トンネルが開通した日。そしてとんねるずの木梨憲武さんの誕生日でもある。確かに自分の性格をかえりみて、「たかさん」の誕生日でないことは確かだろうなと頷く私であった。

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