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いじめ防止プログラム:MTSS

発達障害の子のほとんどが避けて通れないのが「いじめ」問題。発達障害はその特性によって一人ひとりの困り感は大きく違うのですが、「集団行動を乱す行動をとる」とみなされてしまいがちです。

たとえば、次のような困難がみられます。

  • ADHD(注意欠陥多動性障害)で落ち着きがなく衝動的な言動が目立

  • ASD(自閉症スペクトラム障害)で場の雰囲気にそぐわない言動をとる

  • DCD(協調運動障害)で集団の動きについていけないほど不器用さが目立つ。

最大の問題は、先生の中に「集団行動を乱す行動をとる」子にうまく対処できない人が多いことです。

子どもたちの間で明らかにトラブルが発生しているのに「自分たちで何とかしなさい」と放ったらかしにしたり、集団行動について来られない子を他の子の前で叱責したりすることもあります。

ただし、全てを先生個人の責任とすることも酷な話です。

まず、日本の学校は1クラス当たりの生徒数がとても多いです。30人以上の子どもたちをまとめ上げ、同じ行動をするよう指導するなんて、並大抵の大人にはとても大変なことです。

また、生徒間のトラブルに具体的にどう対処したらいいか、大学の教職課程できちんと指導を受けていないこともあります。発達障害に限らず、障害がある子が子どもの集団に溶け込むためにどうしたらいいか、対応策を学ぶ機会もほとんどありません。

30人以上の子どもをたった一人で面倒みさせるのであれば、先生として教壇に立つ前に、きちんと指導を受ける機会が設けられなければなりません。

たとえば、アメリカではMTSS(Multi-tiered Systems of Support:「多層支援システム」)という、いじめ防止プログラムが運用されているそうです。

Prevention and Intervention: Multi-Tiered Approaches to Bullying | StopBullying.gov

MTSSの第一段階:リスクの低減とレジリエンスの向上
クラス全体で好ましい行動(Positive Behaviors)を考えたり、いじめに対処するスキルを学んだりします。

MTSSの第二段階:予防と介入の個別対応
友達をいじめる危険性がある子や、いじめのターゲットとなる確率が高い子に対して個別指導をします。たとえば、いじめる危険性がある子には対人トラブルに対処する方法を指導、いじめのターゲットとなる確率が高い子には自己主張するトレーニング(Assertiveness Training)やピアサポート・グループづくりなどが含まれます。

MTSSの第三段階:さらに専門的な個別対応
第一段階と第二段階で解決できない場合は、心理面、行動面、学業面でさらに専門的な支援が入ります。支援に関わる先生の数が増えるほか、学校外の専門家や家族も支援に加わり、トラウマを緩和するために認知行動療法が取り入れられることもあるそうです。

日本の教育現場では、いじめに対応するよう求められるのが学校だけで、学校外の専門家と協働することはまずありません。学校だけで対応するため、いじめの隠蔽が起こってしまうのではないでしょうか。

いじめを根絶するためには、学校外の専門家を学校を速やかに繋げる制度を作る必要があるかもしれません。


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