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学びに影響する特性ー色覚異常

数年前、私は学びのメカニズムにとても興味を持っていて、認知機能を調べる検査キットをいろいろと取り寄せていた時期がありました。

学んだ内容を記憶することと、必要な情報を記憶から取り出すシステムについて調べようと思い、RAN検査(Rapid Automatized Naing)を実施しました。

RAN検査は学習障害のうち、物の名前の「想起速度」を測定するものです。何が分かるかというと、回答に時間がかかった場合、物は確実に知っているのに、それを音声化する能力に問題があると判断できるのです。

音声化のプロセスに問題があるということは、文字を見て意味が分かっても、それを声に出して読むまでに時間がかかるため、読む速度や内容理解に大幅に時間がかかってしまうということで、学齢期の子どもにとっては非常に深刻な問題となってしまうのです。

私がRAN検査を実施した対象は健常な大学生でした。成人の学習障害を見つけられるよう、まずは正常な成人のデータを収集しようと考えたのです。

ところが、ここで当初は想定もしていなかったことが起こりました。色の名前を言う検査の時、数人の男子学生が「すみません、これ、分からないんです」と検査の辞退を申し出たのです。

理由は、「赤と茶色、緑と青、紫とピンク、など、色が近いものの区別が難しい」と言うものでした。いずれも、例えば赤と緑が識別できないというほどの重度の色覚異常ではないため、学校等での色覚異常検査はパスしてきたそうです。

ですが、実は類似した色の区別が難しいため、日常生活や学校生活の中で困ることがたくさんあったということでした。微妙な色を区別する必要があることは実は意外と多いようで、そのたびに区別できないことを悟られないよう、興味のない振りをしたり、席を立ったり、話題を無理やり変えたりと、涙ぐましい努力で乗り切ってきたということでした。

このように軽い色覚異常を持っている可能性がある人は、20~30人当たり1人はいる計算になりました。これには正直、驚きました。かなり高い割合だからです。

それ以降、私は教材を提示したり、説明資料を作成する時に、色だけで区別することをきっぱりやめました。例えば、下線や四角で囲う時に、色で意味分けをすることはせず、色と同時に線の太さ、点線や二重線を用いるなど、形も区別するようになりました。

私たちは、自分に出来ることは他の人にも出来る、誰もが自分と同じように物事を認知する、と思いがちです。実は、指紋が異なるように、人間の認知能力というのは一人ひとり全員が異なります。

自分の認知の特徴をきちんと相手に伝え、周りの人もそれを尊重できるような社会に出来たらいいと思いますね。

こちらで色覚異常について詳しく説明があります。
興味のある方はどうぞ。
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色覚異常について

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