アナログバイリンガル

今や機械学習の発達は目覚ましく、翻訳の分野においてもその能力を遺憾なく発揮しつつあった。

しかし、そんな機械翻訳にも欠点はあった。例えば、「バカ」という言葉が罵倒表現なのか、または女性の甘い囁きなのかを理解できないのである。

この問題に対して、数億ドルの資金と最先端の機械学習の知見によって、これを解決するシステム、アナログバイリンガルが開発された。

アナログバイリンガルは高度な学習機能と推論機能、感情機能を搭載しているため、例えば「てめえ顔貸しな」を「あなたをボコボコに痛めつけます」といった具合に正確に翻訳することが可能になった。

しかし、このアナログバイリンガルは困った事態を引き起こした。様々な会話を解析し学習した結果、会話の奥の本音を完全に理解してしまったのである。そのため、人は本音の暴露を恐れて会話を避けるようになった。

こうして、アナログバイリンガルは放棄されてしまった。

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