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魂を癒すハイヤーセルフとの旅(9) ~由美子の心残りを昇華~

セラピスト:奈美さん

奈美さんは、セラピストとしては新米のようでしたが、温和でやさしそうな性格がじわじわと伝わってくる人でした。私は、奈美さんに包み込まれるような感覚になり、すぐに打ち解けました。やがて奈美さんは私を催眠状態へと誘い、ほどなく、私はトランス状態に入っていきました。

潜在意識がゆっくりと現れ、どんどん優勢になっていきました。私の意識(顕在意識)は働いてはいますが、じっと静かにしています。潜在意識を前に、抵抗することをしません。私は奈美さんの言葉に従い、どんどん深い、深い潜在意識の中に入っていきました。

(奈美):あなたはもう、あなたが今知るべき前世の中に入っています。    何が見えますか?
(りんた):んん・・、家の中。窓から見える眺めがいい。住宅街に立つ建物の高層階だな。庶民的な家具・・、マンションというよりは団地かな。 そう遠くない昔の日本。昭和時代だ。                (奈美):足元の感触を確かめて。そしてあなたの足を見てみて下さい。
(りんた):床はフローリングで、足は素足だけど・・、えっ・・、白くて細い脚。女の子か? ああ、椅子に掛けている手も、ほっそりとしている。
(奈美):近くにある鏡で自分の姿を映してみて下さい。
(りんた):え、ええーっ。制服を着た女子中学生。14~15歳位かな。
(奈美):そっと肌を触ってみて。どんな感触ですか?
(りんた):すべすべしている。透明な感じ。姿はスラっとしていて、清楚という言葉がぴったりの子です。

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今まで私が体験した前世は、全て男性でしたが、今回は女性だったということに戸惑いを感じました。しかし、意識を落ち着かせ、奈美さんの言われるまま、その前世の心体と一体化するよう努め、ほどなく一体化しました。

夕飯となり、家族がそろいました。といっても両親と自分の3人。前世の名前は「由美子」ということもわかりました。善良な両親と素直な娘。    これも、1つの幸せのかたちだと思いました。が、同時に不思議な感覚がありました。由美子は、何というか、とにかく、“いい子ちゃん”で、やんちゃな所がない。けして問題を起こすことはないが、自己主張もしない子だと。

奈美さんは、この由美子の人生で、最も重要な場面に私を誘いました。
由美子が18歳の時。高校を卒業し、就職を控えているある日の夕方。   場所は海辺です。
由美子には好きな人がいました。たかひろ君という好青年です。たかひろ君も、卒業後は就職することになっています。二人は互いに大切に思っているようでしたが、その関係は、プラトニックなものでした。
その日、二人は海辺にいました。これが最後の日になるかもしれない、大事な場面です。二人は言葉少なでしたが、とても自然に話しているのが微笑ましかったです。しかし、たかひろ君が、大切な告白をしないことはすぐにわかりました。まだ幼さが残っていましたから。だから私は、由美子の言葉に期待しました。息をするのも忘れるほど、由美子の言葉を待ちました。
髪をそっとかき上げる由美子の横顔を見た時、私は以前感じたことのある、何ともやるせない気持ちが蘇りました。案の定、由美子は自分の気持ちをぶつけることはありませんでした。そして実際、その日が二人にとって最後の日となりました。

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私はしばらく言葉が出ませんでした。でも奈美さんは、由美子の臨終の場面に私を誘いました。
由美子は、社会人になってから知り合った男性と結婚し、2人の子供を生み、育てあげました。そして今、家族に見守られて臨終の床にあります。

(奈美):由美子さん、今どんな気持ちですか?
(由美子):私の人生は、“感情に蓋をした人生”と思っているのでしょう? でも、平凡な人生であろうと、善良な家族がいて、波風を立てない、何も問題をおこさない、そういう人生があってもいいと思います。でも・・、この期に及んで、人生というのはこんなものなのかなって、思う自分がいることも確かです。あの時、自分の気持ちを素直にぶつけていたら、どうなっていたかなって・・。
そうです。あの時私は、心を置き去りにしました。そして感情のない人柱になったのです。それが私の人生なのです。
(奈美):そうですか・・。お話ししてくれて有難うございます。      由美子さんは、今まで本当によく頑張りました。もう休みましょうね。

私(りんたろう)は、今世の自分、今まで体験した前世と比べ、あまりにも違う由美子さん(=別の自己)の人生に、そして由美子さんの力強い言葉に、ただただ圧倒されていました。

しばらくして、由美子は肉体から離れていき、中間世にたどり着きました。そこで私は、ハイヤーセルフからのメッセージを聞きました。        それは冷厳なものでした。

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人間の歴史というのは、“リレー”のような一面がある。バトンを受け取り、バトンを渡す。その為には、平凡であろうと、己の感情を押さえようと、残虐であろうと、確実に命をつないでいく必要がある。由美子の言葉を聞いてくれた。由美子の無念はこれで消えただろう。

私には、由美子は、単なる“いい子ちゃん”ではなく、鉄のような芯の強い女性に見えました。同時に、由美子のような人が、この世にたくさんいるかもしれないと思いました。
(つづく)

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