しわ寄せ

私の部屋には、部屋のサイズよりも小さいカーペットをひいている。
そして、カーペットの上に、コロコロ転がる椅子を置いているから、
そのうち、だんだんしわが寄る。

足元にしわがあるとなんだか足の居心地が悪いから、
しわをむこう側へむこう側へと寄せていく。

すると、今度はむこう側にしわがよっていく。
そのうち、カーペットがずれてしまう。

カーペットの位置を直すのは、とても面倒くさい。
カーペットの上にある机を持ち上げなければならない。


どうすればよかったのか。


答えはいたって簡単だ。
椅子に座るときに、一度椅子を持ち上げ、しわを伸ばしてから座ればよい。
ちゃんとしわを伸ばしているから、足心地もよいし、
椅子がコロコロうごいてもしわが寄りにくい。
しわは、ほんのひと手間を惜しむとできてしまう。


ところで、脳みそにもたくさんのしわが寄っている。
繋がった神経同士が引っ張り合ってしわができるのだろうか。
しわの寄り方は、人の共通する部分と、そうでない部分があるだろう。
人という制約は、体験を縛る。
もし、人が鳥のように空が飛べたならば、
しわの寄り方は変わってくるだろう。
そして、共通しない部分は、異なる体験から生じることだろう。
惜しんだ手間と、かけた手間、何をどこに費やしたかで、
いろんな考え方、いろんな感じ方の人がでてくる。
でも、そこに哲学的な意味はなく、ただの物理現象に過ぎない。


今日も足元のカーペットにはしわが寄っている。
そして、そのしわをむこう側へむこう側への追いやっている。
でも、そんなことには何の意味もないし、
その無意味さに、どんな意味を付与することも私の自由だ。


お読み頂いありがとうございます。記事が役に立てばうれしいです。このエリアまで読んで頂いた方が、これまでもこれからも幸せでありますように。