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『市子』この残酷な現実のなか、彼女は本当にやり直せるのか?

 2015年8月。大阪で恋人の長谷川と慎ましくも幸せな日々を送る市子はプロポーズを受けた翌日突如失踪する。訪れた警察は市子という女性は存在しないという。長谷川が市子の行方を追う最中、市子の旧友や知人らから市子の壮絶な半生が明かされていく。
 私は過去において過ちを犯し、やり直そうとしている。ただ「本当にやり直していいのだろうか?」とも思う。だが、この先を進もうとするには、現実を受け入れてやり直すしかないのだ。市子のような残酷な半生ではなかったから。彼女はもうやり直せなくなってしまった。
 杉咲花はその可憐さを置いてこずに、内に闇を宿して市子を生きている。この闇を演じ切るのは、精神をすり減らす時間だっただろう。
 救いなどなく、そのときある小さな幸せを市子は捨てなくてはならなかった。いくら捨てても、過去は追いかけてくるのに。
 画面に釘付けになるとの評判を聞いたが、画面から目を背けたくてたまらなかった。それでも凝視して、この闇を見た先には、市子のどこかこわばった笑顔があった。
 観終えた後、前向きになったのは、今横にいる娘のおかげか?私はもう手放さない。すべては今あるべきところにある。子どもたちとこの先一緒に生きていく。
 マイナスなことがいくらあっても、今まで作ってきたリレーションシップがあるから、私はゼロではない。これから幸せを噛み締めていこうね。

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