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「ゆるい繋がりの強さ」 -趣味友と繋がるアプリの開発-

六本木ヒルズライブラリーのオフィスメンバーの鈴木一郎さんは、「趣味友が見つかるフレンドアプリ『つなげーと』」を運営されています。
この度は、現在のサービスに至った経緯や鈴木さんのキャリアなどについてお話を伺いました。


「ゆるい繋がり」の大切さ

私が初めて「つなげーと」へアクセスしたときに、強い衝撃を受けました。
気軽!!!
・花見と散歩を楽しみましょう/ 謎解き街歩き
・30歳代限定、同年代で朝活しましょう
・ボードゲームを楽しもう
・気軽に英会話、国際交流しましょう
など…
そこで展開されているのは、ディープに繋がるのではなく、気軽に繋がる「ゆるい繋がり」です。
米国の社会学者のマーク・グラノヴェッター教授の"The strength of weak ties"(「弱い紐帯の強さ」1973年)という有名な論文があります。
「ちょっとした知り合い」や「知人の知人」のような弱いネットワークが価値ある情報の伝達やイノベーションの伝播において重要な役割を果たすというものです。
私が思うに、「強い繋がり」よりも「弱い(ゆるい)繋がり」を作ることの方が難しいと感じています。
特に社会人なると、新しい友人と知り合う機会が減ってしまい、仕事仲間と強い繋がりだけになってしまうことが多いと思います。
そのようなことで、「つなげーと」のゆるい繋がりに衝撃を受けました。

「趣味友」という言葉にいたるまで…

そのため、最初に今のサービスを思いついた経緯を鈴木さんへ伺いました。
「今のサービスに至るまでには紆余曲折がありました」というのが鈴木さんの第一声です。
コミュニティというバズワードに惑わされたそうです。
「人と繋がりたい欲求」があるはずだから、コミュニティ・サークルを紹介するサービスを考えたとのこと。
しかし上手く展開できず困っていたところ、2020年のコロナ禍に突入し、立ち止まり、リセットしてゼロから考え直したそうです。

最初に「人は人と繋がりたいが、いきなりコミュニティではハードルが高すぎる」ことに気が付き、「コミュニティの前に、知り合う(友達になる)というステップがある」ことに着目したそうです。
そこで「趣味で繋がる友達:趣味友」というキーワードに至ったということです。

「未来へ繋げる」という発想

「趣味友」に至るには、鈴木さんの原体験があります。
鈴木さんは中学校から大学まで吹奏楽に打ち込み、その経験が鈴木さんの心の財産になっているそうです。
大学の専攻は工学でしたが音楽への道をあきらめきれず、東京藝術大学の作曲科を目指して大学教授に学び、勉強をしたそうです。

そんなときに転機が訪れます。2001年の「9.11」です。
「この出来事で社会の価値観が大きく変わる。音楽も大切だが、衣食住のような生活の基本を大切にすべきではないか」と思いに至り、何度かチャレンジしていた東京藝大をあきらめて、第2新卒で出版関連の企業に就職されました。
ところが実際に仕事をしてみると、それまで打ち込んできた音楽との繋がりが全くなくなったことに寂しさを感じたそうです。
今まで頑張ってきたので、それを活かした事がしたいという思いが強くなりした。

次の転機は2011年の「3.11」です。
2011年を表す漢字として「絆」が選ばれましたが、「人と人との繋がりをより大切にする時代が来る」と思い「つなげーと」の原型サービスを作ったそうです。
鈴木さんが大切に思っている3つのこと
①大人になっても部活・サークル活動が好き
②打ち込んだこと(今までの経験)が活かされる場
③人と人とが繋がる場

が重なる部分を考えたところ、「社会人が趣味で繋がる場」だったそうです。
それを具体化させて、「趣味で人が集まる場=コミュニティ・サークル」を増やすサービスに結びつけました。

一方で、サービス化をするためにはプログラミングのスキルが必要です。プロのプログラマーを採用するには資金がないため、鈴木さんは「自らプログラミングを学ぶ」という道を選び、個人で学びつつ2013年にはプログラマーとして独立して外部からの受注を受けながら、「つなげーと」の開発も同時に進めたそうです。
そして、2018年に3,000万円の資金調達に成功して、2019年には「つなげーと」を専業で取り組むようになりました。しかし、ビジネスとして成立させることに苦戦をして、悩んでいた矢先のコロナ禍でした。
そこで、「自分達のサービスは何か?」と改めて考えぬいた結果、「趣味友を作る場」というキーワードに至ったそうです。

鈴木さんの話を聞いていると、全ての事が連続している印象です。自分の経験や社会で起きた出来事を含みつつ次に展開していると思います。「起こったこと(過去)を未来へ繋げる」という感じでしょうか。

「ゆるい繋がり」が資金調達の道を開く

ところで、2018年の3,000万円の資金調達についてお話を伺いました。東京藝術大学を目指していたときの仲間に久しぶりに連絡をいれたところ、その人が弁護士になっておりベンチャーキャピタリストを紹介してくれたことがきっかけでした。そして最終的に3,000万円の資金調達ができたそうです。
正に「ゆるい繋がりの強さ」の1つの例ですね。

ネットとリアルを繋ぐアプリへ

最後に、これからの目標を鈴木さんへお聞きしました。
「会社としては、スタートアップでまだまだ成長しなければならない段階です。
そして、今のSNSはネットの世界で完結するものが大半です。自宅でソファに寝転んでスマホを触ってるだけで完結します。
しかし『つなげーと』は、ネットとリアルを繋ぐアプリです。本当に浸透させるにはハードルが高いと思っていますが、その分、やりがいもあります。
『リアルに人と人とが気軽に集まれる』本格的なアプリサービスはまだありません。それを実現させたいと思っています」という目標でした。

「人と人を繋げる」「過去と未来を繋げる」をしてきた鈴木さんの次の目標は、「ネットとリアルを繋げる」ことなのですね。
これからの「つなげーと」の動向に注目したいと思います!


この度インタビューにこたえてくださった鈴木一郎さん


アカデミーヒルズ 熊田ふみ子


#アカデミーヒルズ #オフィスメンバー #つなげーと #コミュニティ
#趣味友 #ゆるい繋がり #弱い紐帯の強さ #マーク・グラノヴェッター







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