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6 星なんかじゃない


哨戒機と通信したわ。外はまだ静かですわよ!

「では、もう一言」
「!」
「会見のお礼を言ってなかった」
「そんな……」
「貴艦の勇気と寛大さに感謝する。ユニオンの英雄、天の星」
「な、何を言っている」
「決して空から落ちてはだめだよ? 被害甚大だ」

急な風にカーテンがめくれたら、手のひらサイズのソードフィッシュが旋回していた、その中心、じっと目を閉じた英雄の耳元で口許を隠して何事か、告げた言葉はボリューム最大でも拾えない。

エンジン音が止んで、カーテンがしずかに降りたら、いつもの良く通る中低音が言うの。

「誰も知らなくていい。貴女だけでいい」
「……うれしい……」

エンタープライズ君、そ、そんな!幼気な囁きかたを、どこで覚えましたの!? そいつの性癖に突き刺さるよ!

あぁ、ふにゃって笑った。カーテン越しにも明らかに"溶けた"わよ。

「そんな顔しないで。味方は私だけじゃないから」
「ありがとう……こっちの番ね」

カメラを止める用意、してたんだけどな。
手をつつむように握って、二呼吸、互いに忍び笑いしていたわ。

「私は、星なんかじゃない。キミと同じ、一空母だ」
「世界のな」

気の毒だけど、ここまでね。見張りチームから撤退の信号。
陽動の発煙筒と、爆竹を(どっから持ってきたのやら)反対側のブロックで、盛大にばらまき始めてる。

「なんだ、あの音」
「味方さ。彼女らに知恵を借りて、声明を考えて来る。それまでノーコメントで通してほしい」
「また来るのか?そんな危険を」
「大丈夫。まあ、心配なら駆逐艦たちは避難させておいてくれてもいいぞ?」
「……全く、なんてやつだ」

先生も、いっちょ、やりますか。閃光弾(みためはなんちゃってレモン)よ。炸裂まで4秒。

「貴女の名誉は全力で守る。信じて待ってて、エン姉さん」
「もちろんだ。秘密は守るよ、アー君。気をつけて」

そこで、エンタープライズ君と、先生、ばっちり目があっちゃいました……

閃光弾が仕事したから無事に撤退できたけど。捕まったら何されてたか、わかったもんじゃない。


つづく

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