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見渡せばツルばかり|油山福岡植物ブログ⑧

皆さん、こんにちは。
ここ最近の森の中。緑が茂る園内をパトロール中、右を見てみるとツル発見!左も見てみると…またもやツル!
改めて森の中を見渡してみると、彦摩呂さんならきっとこう言うでしょう。
これは…これはまるで
「つる植物の宝石箱や~」

もとい、
植物の進化の歴史を紐解くと、陸上に進出した植物たちの中心は木本、いわゆる樹木たち。そこから樹木が繁栄できない環境を狙って草本が進化したといわれています。
そんな彼らが光を求めしのぎを削っているその隙間をぬってさらに進化してきたのが「つる植物」です。

水の森のフジヅル。宿主となった木は逃げられない。

つる植物はご存じの通り自らの茎を固くはせず、他の直立した植物等に絡みついてよじ登っていきます。

自らを直立させることはとてもエネルギーのいること。それがどれくらいかというと「背の高い樹木では光合成で生産した炭水化物のうち、50%以上を茎の肥大成長に投資している(Givnish 1995)」とのこと。
つる植物はその部分を大幅カットする代わりに、早いスピードで成長することに重きを置き、光を獲得すべく宿主を利用してぐんぐんよじ登っていきます。

つり橋に行くと複数の宿主を渡り歩き、登りつめたつる達が、さらに伸びようと枝を伸ばしています。

ちなみに、ひと言で「よじ登る」と言ってもその方法も様々。
今回はそんな多様なよじ登り方と共につる植物たちをご紹介したいと思います。

タイプ①「巻きつき型」:ヘクソカズラ、アサガオ、アケビなど

自らをぐるぐる巻きつけて登っていくタイプです。身近な例にアサガオがあるので、イメージがつきやすいと思います。ぐるぐるのぼり~。写真はヘクソカズラです。

タイプ②「巻きひげ型」:カラスウリ、ヤブガラシ、キュウリなど

これはサクラに登っていくカラスウリ。よーく見てみるとサクラの樹皮のがさついた所に巻きひげをからませて支えにしています。本体自体はぐるぐるしないタイプです。

タイプ③「トゲでひっかけ型」:ノイバラ、カナムグラ、サルトリイバラなど

写真のサルトリイバラは巻きひげで他の植物に絡みつきつつ、トゲもひっかける両刀使いです。
トゲのある植物は他にもいろいろありますが、被食防止のトゲとは違って、ひっかける用なので引っかかりやすいよう下向きのトゲを付けています。

タイプ④「吸盤型」

よく見るツタですが、じっくり見ると枝の先から吸盤を出してくっついています。結構かわいらしいのでぜひご覧ください♪ツタはさらに付着根でもしっかりくっついて壁などもよじ登っていきます。

タイプ⑤「付着根型」

写真はキヅタという植物です。よく岩の上に定着している姿を見かけます。これまたじっくり見てみると、付着根をしっかり出して岩に張り付いています。

いかがだったでしょうか。よじ登る仕組みもこのようにそれぞれ個性があります。ぜひ次回の森さんぽの際に観察してみてください。


最後に、これからちょうどお花を咲かせるつる植物たちをざざっとご紹介しますね。

ツルリンドウ
コバノボタンヅル
センニンソウ
ノササゲ

今日、コバノボタンヅルが一輪咲いているのを確認しました。
9月に咲くつる植物もきれいなお花が多いです。ぜひお楽しみに♪


引用・参考:
「のびる、つかまる、つながる -つる植物の多様な生態と多様な研究-」種子田春彦氏、鈴木牧氏、井上みずき氏、森英樹氏(日本生態学会誌 69)
「植物Q&A つる植物の進化について」一般社団法人日本植物生理学会HP


ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター

福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。

開館時間 9:00~16:30
休館日  毎週水曜日(祝日の場合翌平日)

「自然観察センター」森のひろばから徒歩約3分の場所にひっそりとあります。
昆虫標本や動物の剥製を展示しています。
季節で変わる企画展示も随時行っています。








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