アリを排除するもの、アリを呼びよせるもの|油山福岡*植物ブログ⑩
皆さん、こんにちは。なかなか気温が下がらないまま10月後半に突入しましたね。
秋のお花たちもいつも通り咲くものもあれば、ヒガンバナやキンモクセイのように2週間遅れて咲いたものもあり、ツルボに至っては今季開花したものを確認できませんでした。
他にもなかなか咲かないと心待ちにしていた花があったのですが、先日ようやく開花を確認しました。ツルニンジンというお花です。
「ツルニンジン」という名もインパクト大ですが、なんといってもお花が超個性的!普段は下向きに咲いているので分かりづらいですが、のぞいてみると…
花をつける植物の多くは、昆虫に花粉を運んでもらっています。ツルニンジンは主にキイロスズメバチを中心としたスズメバチ科のハチたちが送粉者といわれています。
でも他の昆虫にとってもツルニンジンの蜜は魅力的。時には花粉は運ばず蜜だけ持っていく昆虫もやってきます。同じハチ目のアリたちです。
そんなアリたちを排除するべく、ツルニンジンが取った策はズバリ「花びらツルツル大作戦」!!!そんな論文が2021年京都大学から発表されました。
この論文を拝読すると、ツルニンジンにとって、アリは盗蜜したり花に訪れた送粉者である昆虫を攻撃したりする厄介な存在だそうで、ワックス結晶によって花びらを滑りやすくし、アリの花への侵入を妨げているそうなんです。
アリさんがツルっとしている映像もあります。
↑クリックすると映像に飛びます。
あの独特な模様の花びらにそんな秘密が隠されているなんて!
しかも送粉者であるハチたちには、吸蜜しやすいよう一部滑らない場所を用意しているとのこと。よく考えられているなぁと感心するばかりです。
ちなみにアリを排除したい植物は他にもいます。
例えばアザミ類。春や秋にお花を咲かせる彼らの作戦はなんと「ベトベト大大作戦」!!
アザミはチョウやハナバチに大人気のお花です。そして、やっぱりアリからもマークされる存在。そこでアザミは地上から花への侵入経路である花茎や苞をベタベタにすることでアリの侵入を阻んでいます。
こうしてみると、植物にとってアリは邪魔者にしか見えませんね。
でも!逆にアリと密接な共生関係を育んでいる植物もいます。
そのひとつが「コニシキソウ」です。
コニシキソウはアリに花粉を運んでもらうだけではなく、種子も運んでもらいます。(もっと詳しく書きたいところですが、今日はさらっと紹介だけ!)
種子散布をアリに委ねる植物は他にもたくさんいます。有名なのは春に咲くスミレ類ですね。
他にもアリを自らのボディガードにする植物もいます。
アカメガシワはなんと!葉っぱのつけねに、本来花の中にあるはずの「蜜線」があります。この蜜線から出てくる蜜をいただくためにアリたちは葉っぱに集結。葉に常駐することでアカメガシワの葉を食べる昆虫を寄せ付けない役割を担っているといわれています。
これはイタドリやサクラ、ホウセンカなどでも見られるそうです。
植物にとってアリはどんな存在か?と聞かれると、とてもひとことで言い表せられない多様な関係が種ごとに存在するようです。
冒頭にご紹介したツルニンジンは今見ごろ。
ぜひ観察してみたい!という方は自然観察センターにお立ち寄りください。
おススメの場所をお伝えしますよ♪
参考:武田和也氏他(京都大学)
「滑る花びらがアリの花への侵入を妨げることを発見 ―新たな花の防衛機構の存在を実証―」
日本植物生理学会HP 「植物のねばり」
写真:岩間杏美、土屋志乃
文:土屋志乃
(ABURAYAMA FUKUOKA自然観察センター)
ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター
福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。
開館時間 9:00~16:30
休館日 毎週水曜日(祝日の場合翌平日)
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