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ナラタケモドキ(楢茸擬)Armillaria tabescens


時期

夏~秋(福岡県では7月~9月に観察されています。)

発生環境

広葉樹や針葉樹の根元付近に発生します。また、地中に埋もれた木からも発生することがあります。樹木が植えられている公園や街路樹などで見ることができる身近なきのこなのです。

車道脇の切り株からたくさんナラタケモドキが発生していました。

特徴

幼菌のころ。木からまとまって生えてきます。
成長するとだんだんときのこの形になっていきます。
発生場所によっては、傘の表面が毛でざらざらになっています。
ひだは白色からクリーム色。古くなると黒っぽくなります。場所によっては半年たっても残骸が残っていることがあります。
胞子紋は白色。

「ナラタケ」にそっくりだから「ナラタケモドキ」なのです

「ナラタケモドキ」は「ナラタケ」というきのこにそっくりなのでこの名前がついています。では「ナラタケ」と「ナラタケモドキ」の違いは一体何なのでしょうか?

晩秋に発生するナラタケ(キヒダナラタケ)の幼菌。今回、本種はトキワサンザシの枯れた部分から発生していましたが、その他にもサクラ・コナラなどの樹木にも発生します。

「ナラタケ」「ナラタケモドキ」ともにハラタケ目タマバリタケ科のきのこなので見た目はよく似ています。しかし、子実体の柄の部分にツバがあるかないかで判断することができます。

「ナラタケモドキ」「ナラタケ」は嫌われ者…

公園を歩いてるとひときわ目立つ「ナラタケモドキ」。見た目はシメジのような形をしていて、その場所にたたずむ姿はなかなか写真映えします。

一方で、ナラタケモドキは様々な樹木に「ならたけもどき病」を起こしてしまう困ったきのことしても知られています。ならたけもどき病はナラタケモドキが樹木に侵入すると、樹木の成長速度の低下や葉の変色、時間の経過とともに葉が少なくなり、最終的に枯死してしまう根株腐朽病害菌です。
発生樹木としてサクラ・モモ・コナラ・スギ・マツなどが知られていて、広葉樹・針葉樹ともに生息しています。ただし、ほとんどは広葉樹の枯れ木で見られ、針葉樹はごく稀に見られるくらいです。

「ならたけもどき病」、「ならたけ病」ともに胞子が飛ぶことで新たな樹木へと侵入する一方、土壌中に菌糸を伸ばして周囲の樹木に伝播していきます。ちなみに、油山ではならたけもどき病とよく似ている「ならたけ病」を観察できる機会があったので様子を見てみることにしました。

[ナラタケとクスノキの経過観察]
・2020年11月19日クスノキ根本から発生した「ナラタケ(キヒダナラタケ)」を確認。この時にはクスノキの葉はたくさんついていて、周囲のクスノキとは何の変化も感じられませんでした。それからもナラタケの発生は毎年見られ、感染木の周囲からもナラタケの姿を見るようになりました。

2023年4月27日、まだ葉は残っていますが新芽は出てきませんでした。

・2023年11月9日いつものクスノキにナラタケが発生していました。しかし、クスノキは葉を残すことなく枯死してしまいました。今現在(2024年6月28日)では梅雨の大雨でクスノキの上部の枯れ枝がぽきぽきと折れてきています。

こちらはならたけ病(キヒダナラタケ)の感染樹木(クスノキ)の写真ですが、ならたけもどき病も似たような枯れ方をします。

このように、子実体を確認してから3年の間で感染樹木は枯れてしまいました。ナラタケは根状菌糸束を形成し、土壌中を広がり木の根などに行きつくと侵入します。根状菌糸束は数年間生存することが知られているので、表舞台に出る頃になるとほとんど食べつくしているのかもしれないですね。

文・写真:ABURAYAMA FUKUOKA自然観察センター 岩間杏美

【書籍】
山渓カラー名鑑 増補改訂新版日本のきのこ(山と渓谷社)
しっかり見分け観察を楽しむきのこ図鑑(ナツメ社)
【文献】
ならたけもどき病により枯死したソメイヨシノ枯死木の根株内および周辺土壌中におけるナラタケモドキの分布



ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター

福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。

開館時間 9:00~16:30
休館日  毎週水曜日(祝日の場合翌平日)

「自然観察センター」森のひろばから徒歩約3分の場所にひっそりとあります。
昆虫標本や動物の剥製を展示しています。
季節で変わる企画展示も随時行っています。


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