渡り鳥のじょびお君はどうやって戻ってきたの?|油山福岡*野鳥ブログ③
皆さんこんにちは。
今日はどんな鳥さんを見かけましたか?
私は今朝玄関を出て最初に見たのはヒヨドリでした。
以前のブログでは油山で暮らす鳥たちの種数をご紹介しました。
※その時のブログはこちら
でもみんながみんな1年中油山で暮らしているわけではありません。
「渡り鳥」
という言葉を皆さんご存じだと思います。
渡り鳥は時期によって南北に移動しながら生活しています。
南方から春に渡ってきて繁殖期を過ごし、秋に再び南方へ去っていくのが「夏鳥(なつどり)」
北方から秋に渡ってきて越冬し、春先に北方へ去っていくのが「冬鳥(ふゆどり)」です。
今の時期、油山では「冬鳥」と1年中油山で暮らす「留鳥(りゅうちょう)」を観察することができます。
去年、油山野鳥観察ボランティアの皆さんの間で大人気だった冬鳥がいます。牛舎裏の草地をなわばりとしたジョウビタキ(オス)です。
人が来ても物おじしない堂々とした立ち居振る舞い。そして何よりもアイリング(目のふち)に白いマークが右に4個、左に3個あるという個性的な顔立ちでみんなのアイドル的な存在でした。
それにしても、足環をつけていない野鳥の個体識別ができるなんて、最初に気づいたボランティアさん凄すぎですよね!!
お話しした通り、ジョウビタキは冬鳥です。
数か月の間「あのアイリングに印があるじょびお君」と呼ばれみんなに見守られていた個体も、春先の渡りの時期には当たり前のように姿を消したのでした。
そんな「じょびお君」がこの秋冬も、なんと同じ場所に帰ってきました!!
去年ほどずっと姿を見せてくれてはいませんが、見かけるのは去年と全く同じ牛舎裏の草地です。
ジョウビタキは近年国内での繁殖が確認され始めましたが、基本的に海外から渡ってくる冬鳥で、その繁殖地は一番遠くてチベットから中国東北部あるいはロシア南東部!!その渡りの距離は片道 2,000キロメートルに及ぶといわれます。想定外のスケールです。
そんなじょびお君たちはグーグルマップも使わない、地図も何にも持たない身体ひとつで一体どうやって1年前と全く同じ場所に辿り着けるのでしょうか。
実は「鳥の渡り」についてはまだ分からないことだらけだそうです。
ただ「渡る先をどうやって知るのか」についてはいくつか分かってきたこともあるとのこと。
例えば日中に渡る鳥なら太陽の位置を体内時計で補正しながら、夜間なら星座を利用しながら、他にも地磁気を方角を定める手がかりにしているといわれています。鳥によっては地形や季節風、日没の位置、においなども利用しているそうです。
一方、大まかな位置や距離の地図情報は遺伝的にプログラムされているとも言われています。
鳥類学者の樋口広芳先生は以下のようにおっしゃっています。
じょびお君が一体どこからやってきたのかは分かりませんが、小さな身体で海を越え、山を越え、住宅街を越え、このABURAYAMA FUKUOKAの牛舎裏の草地に再び戻ってきてくれたこと本当にうれしく思います。
そしてその能力や生き様に心から尊敬の念を抱かずにいられません。
もしかしたら他にも多くの鳥たちが毎年油山に帰ってきてるのかもしれませんね。3月に長旅へ旅立つその日まで、ここでゆっくり穏やかに過ごせることを祈るばかりです。
ちなみにジョウビタキは住宅街でもよく見かけます。
皆さんのお家の近くにいるジョウビタキも、もしかしたら皆さんのお家を目印にして毎年来ている子かもしれませんね。
■本日登場した鳥さん
ジョウビタキ <尉鶲>
スズメ目ヒタキ科
冬鳥 全長14cm(スズメより小さい)
今季の初認:2023年10月21日
鳴き声:「ヒッヒッ カカッ」
雌雄異色(写真左がオス、右がメス)
見晴らしの良い杭や枝にとまり、尾を細かく振る動作をする。
オスメス共に縄張り意識が非常に高い。
基本的に冬鳥だが、近年国内での繁殖が確認されていて留鳥化が進んでいるのではともいわれている。
引用・参考:
樋口広芳氏「鳥たちの旅ー渡り鳥の衛星追跡ー」←超オススメです!
BIRDER編集部「ジョウビタキ ルリビタキ オジロビタキ」
文一総合出版「日本の野鳥」
写真:永淵さん 酒井さん 日下さん 宮石さん
(油山野鳥観察ボランティア ヤマガラの会)
前山さん
文:ABURAYAMA FUKUOKA自然観察センター 土屋
ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター
福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。
開館時間 9:00~16:30
休館日 毎週水曜日(祝日の場合翌平日)
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