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あの花からどうやって?|油山福岡*植物ブログ⑨

皆さん、こんにちは。
ここ自然観察センターではいろんな自然に関する質問にお答えしたりしています。即答できるものもあれば、一緒に図鑑を引いて調べながら答えることも。
まだ猛暑だった8月。ひとつの質問を受けました。
「ネムノキのあの花からどうやってあの実はできるの?」
お恥ずかしながら全く答えることができず、「今度見ておきます」としか返せませんでした。

ネムノキとはマメ科の落葉高木で、初夏に淡紅色のブラシ状のお花をつけます。1個に見えますが実は10~20個のお花が集まって扇形が形成されています。そしてお花と言っても見えているのは花びらではなくたくさんの雄しべなんです!
さらに驚くことに、このひとつのかたまりの中にタイプが違う2種類の花が混在しています。大多数が側生花(そくせいか)といわれる蜜が出ない花ですが、中央部分にひとつだけ頂生花(ちょうせいか)という蜜が出る花があります。
唯一蜜が出る花を探し求めて、虫たちがうごめくうちに体に花粉がつくという作戦なのでしょうか。
この不思議な生態に加え青空に映える美しさも相まって、スタッフも大好きなお花です。

さわやかかわいい!お花です。

このお花の後、気が付くとこんな実がついているんです。
これはマメ科に共通する実の形「豆果」ですね。

このカタチになったものはいっつも見てるんですよ!
でもこのカタチに「なるまで」をちゃんと見たことなかったんです!

手始めにネットで探してみたけれど、上記のようなビフォー(花)アフター(実)はあれど、その途中過程はなかなか見つからず・・・。
自分の眼でも確認しようと同時並行で、最寄りのネムノキのもとへ何度か通いました。

ただネムノキは樹高が6mから10mになる高木。花がついている所を間近で見られません。双眼鏡片手に見上げども見上げども、結局今日までに膨らみ始める様子を見つけることはできませんでした。

ちなみに他のマメ科の植物はこんな感じ。例えばナツフジ。

エンドウ豆などマメ野菜を育ててる方はなじみのある景色かもしれません。

ナツフジのお花のような形を蝶形花(ちょうけいか)といいます。
じゃあ10~20個の花が寄せ集まったブラシ型のネムノキは、どこがどんな風に膨らんで、さやができてくるの?

できれば観察結果をこのブログに書き記したかったのですが、間に合わず。
すみません💦。ただ私はまだあきらめていません。ネムノキは二度咲きすることもあります。もうほぼほ実の状態ですが、一部これから実ができるものもきっとあるはず!

皆さまももしネムノキの「実になり始め」を見つけた方はぜひ自然観察センタースタッフまでご一報くださいませ!
ネムノキに関わず、いろんな植物の花後を観察してみるのも面白いと思います。♪

最後に、2023年に福島大学から出された「ネムノキ(マメ科)の開花から結果までの過程」という論文をご紹介します。
私が見つけられなかった花後から実が出てくるまでの写真も一部掲載されています。ちょっと難しいことも書かれていますがご興味ある方はぜひご覧ください。

ちなみにこの論文内ではこのように書かれています。
「ネムノキは目立つ雄蕊や異形花という特徴的な花を持つにもかかわらず, 送粉以外の繁殖生態学的な研究はほとんど行われてこなかったため,開花のタイミングや咲き方,結果率などの基礎的な情報を欠いている。」
公園や森の中でよく見かける樹ですが、まだまだ分かってないことが多いネムノキ。これからも観察を続けたいと思います!




紹介した論文:
「ネムノキ(マメ科)の開花から結果までの過程」
黒沢高秀氏(福島大学)ほか
写真:写真AC、スタッフ写真
文:土屋志乃(ABURAYAMA FUKUOKA自然観察センター)


ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター

福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。

開館時間 9:00~16:30
休館日  毎週水曜日(祝日の場合翌平日)

「自然観察センター」森のひろばから徒歩約3分の場所にひっそりとあります。
昆虫標本や動物の剥製を展示しています。
季節で変わる企画展示も随時行っています。

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