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きのこちゃんの きのこ豆知識

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福岡市にあるABURAYAMA FUKUOKA自然観察センターのきのこちゃんがお届けするきのこブログです。
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きのこ豆知識 分類から見る「菌類」という生きもの

「きのこ」は動物?植物?それとも… はじめに、皆さんの食卓でも見ることができるであろうきのこたち。今パッと思い浮かんだのはシイタケ、エノキタケ、エリンギなどなど…。そんな食用のきのこたちは、いつも食料品の「野菜コーナー」で見られると思いますが、きのこは植物ではありません。そして、動物でもありません。 きのこは「菌類」なのです。 「菌類」という生きものは「動物」でも「植物」でもないきのこ・かび、酵母などを含んだ生物群です。菌類は陸上、水中あらゆる環境に生息しており他の生

ユウレイタケ(幽霊茸)Monotropastrum humile

時期 早春~初夏(福岡県では4~9月に観察されています) 発生環境 シイ・カシ・コナラなどが生える林内や、湿り気のある広葉樹林内、マツ類が生える針葉樹林内などで見られる菌従属栄養植物です。 特徴 植物体全体は真っ白で葉緑体はをもっていません。茎は高さ20㎝ほどで、葉の退化した鱗片葉がついています。葉は光にかざすとガラスのように透明でひとつひとつの細胞を観察することができます。 花冠の裂片は筒状で、3~5個。花被片の内側には細かい白毛が密生しています。(さわると

カンゾウタケ(肝臓茸)Fistulina hepatica

はじめに:このページをご覧のみなさま 今回のブログでは、きのこの管孔(穴が沢山集合しているような写真)をいくつか掲載しています。この記事をご覧になる前に、「集合体」が苦手な方はお控えになられた方がいいかもしれません…。 そのまま、ご覧になる方はこのままお進みくださいませ。 きのこちゃんより 時期 梅雨期と秋(福岡県では4月下旬から6月上旬、10月頃の2季節で観察することができます。) 発生環境 比較的大きなスダジイ・コジイなどのブナ科の根本や幹の隙間、うろの隙間など

ヒトクチタケ(一口茸)Cryptoporus volvatus

時期 春から夏にかけて(福岡県内では主に3月~6月に生え始め、場所によっては1年を通して(秋から冬のものは老菌)その姿を観察することができます) 発生環境 枯れて間もないマツ(主にクロマツ・アカマツ)に発生します。マツが枯れると一番はやく発生するきのことしても知られています。 特徴 幼菌の時は、丸い形をしていて弾力があり、全体的にニスを塗っているかのような光沢が見られます。成長すると下面の薄皮が破れていき、白くてなめらかな質感へと変化します。きのこは成熟すると、下

カワラタケ(瓦茸)Trametes versicolor

時期 一年をとおしてその姿を観察することができます。 発生環境 白色腐朽菌で、材を白く腐らせます。広葉樹・針葉樹・ベニヤ板など様々な場所で見ることができる身近なきのこのひとつです。全世界に分布しています。 特徴 傘は半円型、強靭な革質で多数重なり合って生えています。その姿が瓦屋根にそっくりなので「カワラタケ」と名前が付きました。ちなみに、種小名(しゅしょうめい)のversicolorは「さまざまな色の」という意味です。そのため、生育する環境によって色の違いを観察す

アミガサタケのなかまたち(網笠茸)Morchellaceae

アミガサタケは、様々な種類が知られており肉眼での判断は難しいため、このブログでは「黒色型アミガサタケ(ブラックモレル)」「褐色型アミガサタケ(イエローモレル)」として紹介していきます。 時期 春(福岡県では2月~5月にかけて観察することができるきのこです) ちなみに、福岡県では黒色型アミガサタケは2月~5月まで、褐色型アミガサタケは4月~5月に見られることが多いです。 発生環境 サクラの木の下に生えていたり、スギの林に生えていたり、広葉樹林内に発生したり…発生環境は様

オオセミタケ(大蝉茸)Paraisaria heteropoda

時期 春に見られるきのこで、セミの幼虫から生えています。(福岡県では3~5月頃見られます) 発生環境 本種は寄生菌。広葉樹林や針葉樹林の地上で見られます。比較的多湿で一年を通して肌感がひんやりするところに発生していることが多いです。 特徴 【宿主】「アブラゼミ」「ヒグラシ」「エゾハルゼミ」などの幼虫 ちなみに…地中に住んでいるセミの幼虫は目の色が白色ですが、羽化直前の終齢幼虫は目が黒色になっています。感染したセミ幼虫の形から推測すると、子実体が出てくるときは羽化直

ヒラタケ(平茸)Pleurotus ostreatus

時期 冬から春にかけて (福岡では11月~3月まで観察することができます) 発生環境 白色腐朽菌で、広葉樹(まれに針葉樹)の切り株、倒木などに重なり合って発生します。 特徴 【傘】傘の大きさは3㎝から15㎝ほどで、まんじゅう型から半円型、ときにじょうご型になります。表面はなめらかで、幼菌時黒っぽい色をしていて、成長すると鼠色、褐色、淡褐色、老菌は白っぽい色になります。 【ヒダ】ヒダは密。初め白色をしていますが、成長するとともに淡黄土色のような色へと変化していきま

ツバキキンカクチャワンタケ(椿菌核茶碗茸)Ciborinia camelliae

時期 初冬から早春にかけて、「ツバキ」や「サザンカ」が咲くころに出現します。(福岡県では12月~4月まで観察することができます) 発生環境 本種は名前の通り、「ツバキ」や「サザンカ」の樹下に出現します。 菌核化した前年の花や蕾から発生するきのこで、「ツバキ菌核病」という植物病害菌としても知られています。 特徴 【形】はじめお茶碗型で、成長すると皿型に開きます。きのこ自体は柔らかく、乾燥すると小さく縮みます。幼菌の時は全体的に褐色ですが、老菌になると黒っぽくなり見つ

ニセマツカサシメジ(偽松笠(毬)占地)Baeopora myosura

時期 秋から冬にかけて (福岡県では10月~12月頃に観察することができます) 発生環境 アカマツ・クロマツ林内に落ちている松ぼっくりから生えてきますが、本種は地中に埋もれた松ぼっくりに多く見られるようです。 特徴 【傘】傘の大きさは0.8~2.3㎝ほどで、ほぼ平らに開き、表面は淡黄褐色~褐色。 【ヒダ】ヒダは密。はじめ白色ですが、乾燥していたり古くなったりすると褐色に変化します。(傘のふちから色が変わります) 【柄】柄は長さ2.5~5㎝ほどで、表面は白粉に覆

マツカサキノコモドキ(松笠(毬)茸擬)Strobilurus stephanocystis

時期 秋から冬(福岡県では10月~3月にかけて観察することができます。) 発生環境 アカマツ・クロマツ林内に落ちている松ぼっくりから生えてきますが、本種は地中に埋もれた松ぼっくりに多く見られるようです。 特徴 【傘】 傘の大きさは、1.5~3㎝ほどの小さなきのこです。 幼菌の時や、子実体が落ち葉に隠れている時などは傘の色は白色になっています。地表に顔を出してくるとだんだんと色味が濃くなり、黒褐色になっていきます。 【ヒダ】ヒダは白色で密についています。 【柄】

マツカサタケ(松毬茸)Auriscalpium orientale

時期 秋から冬にかけて (福岡県では10月~3月頃、6月頃に観察することができます) 発生環境 アカマツやクロマツなどのマツ林地上で姿を見ることができます。古い松ぼっくりから栄養を摂って成長する腐生菌です。 特徴 【傘】傘は幼菌のときは肌色をしていますが、成長すると茶褐色になり次第に黒っぽく変化していきます。表面はビロード状で、半円形の模様ができることもあります。 【ハリ状のヒダ】ヒダはハリ状でトゲトゲしていますが、さわってもやわらかいので痛くありません。幼菌の

オウギタケ(扇茸)Gomphidius roseus

時期 夏から秋(福岡県では5月~6月頃、10月~11月頃の二度観察することができます。) 発生環境 アカマツやクロマツなどのマツ林地上に発生します。 特徴 【傘】 明るい赤褐色でややまんじゅう型をしています。幼菌の頃は紅色が鮮やかですが、傘が開き、時間が経つと色は褪せてしまいます。傘の表面は湿気がある時はぬめりがあり、乾燥するとややツヤがあります。 【ヒダ】 やや垂生しやや疎。はじめは白色ですが、古くなると黒っぽくなります。 【ツバ】 不明瞭で消失しやすい。成

きのこ豆知識 きのこの役割

自然界での役割きのこを含む菌類には、さまざまな生活型が知られています。 動植物の死がいを食べて育つ腐生菌のグループは「分解者(お掃除屋さん)」として知られています。また、生きた植物と「共生関係」にある菌類もいますし、生きた動植物から一方的に栄養を奪って生きている「寄生菌」と呼ばれる菌類もいます。 もし「分解者」である菌類がこの世界にいなかったら、本来土にかえるはずだった動植物の遺体は形を残しそのまま森の中に置き去りにされ、悪臭を放ちながらどんどん増えていたのかもしれません。