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「タイムリープまたはタイムワープの懸念」
説明:電車と新人時代に関連して、ひとつ。
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「タイムリープまたはタイムワープの懸念」
私は毎朝、渋谷か、または新宿から山手線に乗り、五反田駅で降りて会社まで歩いて通っていました。
その日もいつものように、五反田駅の少し手前で席を立ち、出口側のドアの前で、ドアが開くのを待っていました。
駅に着いてドアが開き、ホームに下りたら、そこは「大崎駅」でした。
「いゃ、……え?」
私はまわりを見回しました。
柱にも、梁にも、きちんと「大崎」「おおさき」と書いてあります。
私は、ホーム上で軽くパニックになっていたように思います。
五反田駅はどこに行ってしまったのでしょう?
私は、キツネにつままれたような心地でした。
大崎から会社への行き方は、わかりませんでした。
とりあえず、五反田まで引き返すか、品川まで行くか、ということになり、私はそのまま次の電車で品川駅に行きました。
五反田駅よりは少し遠いのですが、品川駅からも会社までは歩けたので、駅を出て、私は歩いて会社に行きました。
その日、私は少し遅刻をしました。
遅刻理由を上司に報告しなければなりません。
私は正直に、その朝起きたことを報告しました。
上司は
「はぁ___ 」
とため息をつき、眉間に寄ったシワをもみほぐしました。
「タイムリープか、タイムワープしたのではないかと思います」
私は、自分の考えを話しました。別に、だから情状酌量してほしいとか、下心があったわけではありません。
単に、客観的事実に基づく仮説として話したのです。
上司はしばらく黙って、遠くを見ていました。やがて、
「……わかった。もういい」
と言って、私を解放しました。
自分の席に戻ると、様子を伺っていた先輩たちが、すぐさま寄ってきました。
「それは、お前、立ったまま寝たんだよ」
クスクス肩を揺らしながら、ひとりの先輩が言いました。
「いくら私でも、立ったままいきなり寝落ちして、そのまま駅をやり過ごし、そして大崎駅の直前でフイに目覚める、なんてことが起きると思えません」
私は反論しました。
「ふつうはな……」
別の先輩が言いました。
「でも、お前の場合は、あり得る」
解せません。
「私は確率の話をしているんです」
私はなおも食い下がりましたが、私以外の全員が「寝落ち説」を採用しました。
私は、不本意ながら「電車内で立ったまま寝落ちして遅刻」という不名誉な理由となりました。
私は今でも、あれは私の守護霊さまとかが、何らかの理由で、例えば何かの事件や事故を回避するために、強制的にリープさせたのではないかという疑いを捨てきれていません。
ですが、その日は特に事件も事故もなく、残念ながらあのような事は、その後私の身に起きることはありませんでした。
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