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魂をぬかるつ

とっておきの晴着を纏う一家をまえに
「魂をぬかるつ」と男は激情をあげた。
もはや、当て布を着ているその様相は
とまどう写真屋の指さきに_とどかない。

一家の主は迷惑を
母は子らに安心を、
黒黒とレンズにぬかれ
いならぶ顔端に浮かんだ恥入る口を
キャメラは仔細を捕らえたむ
――男の、怒りを燈した瞳のうちの
手もと一点に朽ちゆ母の背中さへ

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