在宅勤務になってから、母が部屋でエアロバイクを漕ぐようになった。 お昼休憩になったら意気揚々とやってきて「とりあえず10分漕ぐぞ!」と大きな声で宣言。 気合十分にバイクにまたがり、体力に自信がないのにもかかわらず、いきなり立ち漕ぎから始めてしまった。初っ端からエンジン全開である。 そんな調子で10分ももつのかしらとチラチラ様子を窺っていたら、徐々にスピードが落ちていき、最終的には「立ち漕ぎなんてしていませんでしたよ?」とでも言いたげな顔でしれっとサドルに腰を下ろしていた
以前、タイトルと表紙に魅せられて衝動買いをしてしまった本がある。『美しい日本語の辞典』(小学館)である。 直感で買ってしまった本だったので、実用的かどうかは全く考えていなかった。故にしばらく本棚を彩ってもらっていたのだが、最近になってこの本を使うようになったのである。クイズ出し合いっこのためだ。 それは単純に、意味からなんの言葉を指しているか当てるだけのことなのだが、これがなかなか面白い。私はこのクイズを空いた時間に母と出し合うようになった。 ある日のクイズ出し合いっこ
私はミドルネームを持っている。とは言っても正式なものではない。 ティッシュを大量に消費するから「ティッシュ」というミドルネームを個人的につけているだけなのだ。 名前の中に「ティッシュ」という言葉があるのはなんとも気が抜けてしまうが、ミドルネームというだけで少しかっこよく思えてくる。 そのミドルネームが最近新たに追加された。 私は「アラビアータ」と言おうとすると、どうしても「マルゲリータ」と言ってしまう。 たったそれだけのことで「マルゲリータ」は私のミドルネームになっ
親子で川の字になって寝ていたのはずいぶん昔のことなのだが、その頃の写真を見返すと、私と父の寝相がほぼ一致しているものが多い。 そこを狙って撮っていたのだろうが、それにしてもよく似ている。その写真を見ていると、相似の図形を見たときの、あの不思議な感覚になる。 今はもう寝室が別になっているので、寝相が同じかどうかはわからないが、父とは謎の何かでつながっているのではないかということが時々起こる。それも私にとって不都合な時に。 私は祖母からもらったおかしを(気持ちは)こっそりと
私の祖母は料理が苦手だ。 おばあちゃんというものは皆、料理が得意なものだと思っていたのだが、案外そうでもないらしい。 壊滅的に料理が下手なわけではない。ただあまりおいしくないというだけ。 子どもの頃に作ってもらったごはんが、なんと呼べばいいのかわからない、緑色の何かだったことだけは覚えている。 そんな祖母の最近のお気に入りが焼きそばである。 お昼の時間になると棚から取り出して作り始めるのだが、できあがったものがちょっとあれなのだ。 見た目は汁を吸い切ったカップラー