【レインコード】死に神ちゃんが好きになる物語【ネタバレ注意】

 表題の通り、死に神ちゃんが大好きになりました。

 およそ二か月ほどゆっくりとプレイしていた「超探偵事件簿 レインコード」を先日クリアしましたので、その感想を残したいなと思います。
 このゲームをプレイしたきっかけは、やはりダンガンロンパ制作陣の最新作という点に惹かれてでしたね。あと、謎解きや探偵要素が好きというのもありました。
 といっても、ダンガンロンパシリーズについては1と2を遊んだ程度で全シリーズプレイ済! というほど精通してはいないので、関連作品のネタについては自分が分かった範囲で触れる程度に、あくまでも本編を通しての感想を綴っていければなと思います。
 それと、プレイ済感想なためネタバレはガンガンにしていきます。おそらく、ダンガンロンパの1と2についても同様です。核心部分などにも触れていきますので、あらかじめご承知おきを。




第0章(+プロローグ)

 まず初めに、めっっっっっっっちゃ長かった!!
 お前本当にプロローグとなる章か? 全然一章分のボリュームがあっただろ!

 本章では、レインコードの主人公となるユーマが記憶喪失になっている状態から始まります。手元に残されていた手紙を読んで超探偵の存在を知り、アマテラス急行に乗って他の超探偵と出会う。このあたりは記憶喪失のユーマと何も知らないプレイヤーとの間で感覚にリンクが取れており、他の超探偵達に説明をしてもらった際も「ほうほう……」とユーマと一緒に設定を把握していく流れがあり、導入としてわかりやすかったかなと思います。
 超探偵に、探偵特殊能力……なるほど、これらの説明がプロローグで行われて、一章で事件が発生するのかな。
 と思っていましたが、全然甘かったですね。
 死に神ちゃんとの出会い、超探偵が全員死亡、そして始まる謎迷宮での謎解き。プロローグとか銘打っておきながら、レインコードというゲーム全体のチュートリアルとして事件の解決までを――それも、超探偵が全員焼死体で発見されるというとんでもない事件を叩き込んできたのですから、初っ端から盛り上げてくれるぜと、要素の重さに驚きつつもワクワクが止まりませんでした。
 パッケージに乗ってるキャラクターの半分くらいがここで消えましたからね。

 本章で印象に残った点は超探偵の全滅ももちろんですが、やはり死に神ちゃんというキャラクターの個性でしょうか。顔の作り、特徴的な笑い顔、人魂状態での表情豊かさと、ダンガンロンパを知っている人間ならまずモノクマや江ノ島盾子の存在を彷彿とさせられ、警戒心が高めたかと思います。
 個人的に見た目が好みでかわいいのだけど、言動は奇天烈だし、死に神ちゃんという名前や謎迷宮の本質――指摘された犯人は死ぬという条件を知ると、何か裏があるんじゃないかとより一層怪しさが増していきました。
 ただ、最後までプレイしてみると、ここで既存シリーズの先入観を利用するような形で培われた不信感がストーリー全体を通して解消されていったからこそ、冒頭で述べた死に神ちゃんへの好意につながったのかなとも思いました。そのあたりの感想は最終章で。

 それと、本章のトリックについてもかなり印象に残りましたね。全員焼き殺したり、車両を切り離したりと、やっていることの大掛かりさや仕掛けの特殊さはダンガンロンパシリーズだなーと思ったのですが、その仕掛けを紐解く上での情報がちゃんと全て提示されていたことが印象的でした。
 本作は既存シリーズにあった学級裁判とは違い、謎迷宮をユーマ一人で解く都合上、議論や証人といった第三者が関与する要素がないため、途中で情報が足されることはありません。死に神ちゃんは推理面ではポンコツだし、後の章で登場する探偵達も例外を除いて事件の記憶をすべて奪われているので、未知の情報を話してはくれません。まあ、謎迷宮の中で頭をぶん殴られて新しい解鍵を得ることもありましたが、あれもプレイヤーとしては既に見ていた景色であるため、謎解きに必要な情報は謎迷宮突入時に全て提示されていたことになります。
 そして、これは自分の好みなのですが、解決編突入時に謎を解くための情報がすべて出揃っているタイプの謎解きゲームで、答えを提示されるよりも前に自分で推理するのが大好きなものでして。プロローグで情報の後出しがないことをしっかり明示してくれたおかげで、その後の謎解きでも安心して推理を楽しめました。ここ、レインコード全体を通してもかなり好印象だった点でしたね。

 チュートリアルを終え、ヤコウ所長に助けられ、そして物語はようやく一章――カナイ区での話に進みます。


第1章

 ハララさんの背中がでかすぎる章。

 この章ではカナイ区の現状や超探偵が集められた理由といった、レインコードというゲーム全体の設定や要素がいろいろと語られます。そして、自分が記憶喪失の見習い探偵というあやふやな立場であることに悩むユーマが、事件を通してこの街での自分の在り方を決定していくのですが、その悩むユーマの背中を押すうえでハララさんの存在はとても大きかったです。
 謎迷宮突入前、名前を叫んで駆けつけてくれたシーンのハララさんはマジでかっこよかった……! 無敵すぎるだろあの人。

 探偵としての自負があり、それに見合っただけの能力もある。常に冷静で判断力にも優れ、人間を信頼していないある種の気高さもあり、謎迷宮に入ってもまるで取り乱さなかったハララさんは、本章時点でのユーマにとって理想的な探偵だったと思います。
 そんな理想的な探偵と共に謎を解き、忘れてしまうとはいえ謎迷宮の最後に認めてもらえた経験は、この先のユーマが謎を解く上での自信に繋がっていったのではないでしょうか。

 それと、理性的で疑り深いハララさんとは対照的に、常に感情的で自分に正直な死に神ちゃんのキャラクター性が垣間見えた章でもありましたね。連続殺人事件に舞い上がったり、ハララさんを悪魔ちゃんと名付けて恐れたり。
 このあたりから「ん? もしかしてこの子、スリルと死体が好きなだけで特に企みとかないんじゃないか?」と、裏表のない性格を察し始めるのですが、そうやって油断させられたどんでん返しを食らってきた経験が数多とあるので、ここではまだ手のひらを伏せたままにオレ様ちゃんのかわいさを愛でていました。

 トリックについては、ハララさんの過去視が犯人を除く第一発見時の状況を視る性質を利用し、ペンキ缶の倒れた順序から犯人を特定する流れは「なるほどなー」と唸らされました。
 ダンガンロンパの死体発見アナウンスもそうでしたが、システム的な状況証拠から推理する点は何度体験しても面白いなーと感心させられますね。


第2章

 やはり学園もの……学園ものは最高だ……!

 個人的にイチオシの章です。章全体の完成度が抜群に高く、なにより舞台が女学園で女の子がかわいい! ちなみに、私の推しはヨシコです。完全にビジュアルで惚れた質です。最初は裏に毒がある性格の子だと思っていました、ごめんなさい。
 謎迷宮を作った犯人にバックボーンがあり、殺すのを躊躇われる事件。謎迷宮の仕組みを説明された時から、いつかは殺すことへの葛藤を描く章が出てくるのだろうと思ってはいましたが、思ったよりも早く――そして、かなり救いのない状況で出されましたね。
 誰が悪いといえば、カナイ区の秩序が悪かったとしかいえない。真実が握りつぶされ、大人にも相談出来ない状況が演劇部の彼女たちを追い込み、凶行を起こさせてしまったというお話でした。

 本章では実体のあるヒロインとして最後までお世話になるクルミちゃんが登場します。とはいえ、二章では超探偵に憧れる依頼人としての側面が強く、ユーマを支えてくれるヒロインの側面が強まるのはこれ以降の章だったかなと思います。
 ちなみに実体のないヒロインは死に神ちゃんです。ダブルヒロインとして嫉妬と対抗心を燃やしまくった結果、中学生みたいな語彙で必死に罵倒したり、ユーマなんか知らないと不貞腐れる死に神ちゃんはなかなかに愉快でした。ただ、不貞腐れながらも調査が必要なところにユーマを連れて行ったり、なんだかんだ頼られたら助けてくれるあたりユーマのことが好きなのは本当なんだなと優しい気持ちになりましたね。

 また、各章でユーマのパートナーを務める超探偵として、今回はデスヒコが参戦しました。
 最初は女性にばかり聞き込みをしたり欲望がだだ漏れだったりと女の子好きのバカな男って印象だったのですが、ユーマとクルミちゃんの恋を応援してくれたり、スワロに追い詰められたときは逃げろと言って身を挺してくれたりと、交流していくうちに彼との友情が育まれていき、最後には「マイメン……!!」と、心の中でがっしりハグするような関係性にまで進展していました。まあ、女好きのバカな男である点は徹頭徹尾変わらなかったですが……愛すべきバカな親友でした。

 謎解きについては、トリック部分よりも調査パートが印象に残った章でしたね。デスヒコの変装で主要人物三人に成り代わっての聞き込み、そして最後にはスワロに成り代わって聞き込みという視点を変えて証言を集うやり方は探偵特殊能力という設定をうまく活かしており、ゲームとしても特に面白いと感じたパートでした。
 また、この変装中に他の演劇部二人と話した際のやり取りが秀逸でして。真相を知る前だと、会話もしたくないくらいに不仲なのかなと感じた部分も、真相を知った後では演技だとバレぬよう必死に不仲な演技をしながら、殺人に動揺する相手を諭そうとしているのがわかって、彼女たちがこの計画のため犠牲にしてきた感情や人間関係を察することが出来る良いシーンだったなと振り返って思いました。
 そして、迎えた謎迷宮。豪華に女子生徒四人分の謎怪人モデルが用意されていたり、行き止まりだと思っていた三人分の迷路が一本の道で繋がっていたり。構造的にも新しく楽しい部分も多かった謎解きでしたが、最後の三人で手を取ってさながらカーテンコールのように礼をするシーンは心に来るものがありましたね。
 救われてほしかった……けど、その後の末路がね……。


第3章

 たぶん最も被害規模がでかかった章。

 そのくせ、動機が小物だった点も含めて、全体的にギャク回だった章でした。
 正直、ストーリー的にも箸休めな立ち位置だったのかなと思います。事務所を爆破されてみんなと離れ離れになったり、マコトと出会いヨミーとの関係性が描かれたりと、章の最初と最後にストーリーとして重要なシーンが入ってはいましたが、レジスタンス関係の話については本編とはそこまで関連のない話ではありましたね。
 ただその分、クルミちゃんとフブキさん、そして死に神ちゃんの掘り下げが見られた章だったかなと思います。特にフブキさんと死に神ちゃんの関係性で印象的だった、謎迷宮でのラストシーン。天然な(というには過剰なほどに抜けている)フブキさんの勘違いで暗黒神となりすれ違いコントをした末、勘違いが正され友達になりましょうと言われた時の照れた反応は、これまで抱いていた死に神ちゃんへの疑いを晴らすには十分すぎるイベントでした。
 こやつ絶対裏切るやろ! とか思っててごめんね、死に神ちゃん……。

 フブキさんについては、もう天然という言葉で言い表せないほどのぶっ飛んだ世間知らずに、時戻しという他の超探偵と比べてもぶっ飛んだ探偵特殊能力を持っていたりと、いろんな意味で理解の外側にいるお嬢様だったなと思います。
 ただ、無知ゆえの真実に対する無垢な真っ直ぐさであったり、時を戻せるが故に人の死へ必要以上に責任を感じていたりと、本作に登場するキャラクターの中で一番素直な性格をした女性でしたね。探偵達との語らいでも、その素直さゆえに唯一直球でユーマに告白していましたし……ユーマ、そこで勘違いだと言い訳するのは無理があるだろ。
 それと、時間を戻す演出がめっちゃかっこよくて好きでした。首のアクセサリーがふわっと浮かび上がって針が逆に回るのは、初めて見たとき「かっけー!!」とテンションが爆上がりしましたね。

 そして、本章でキャラクターを発揮してきたもう一人の人物であるクルミちゃん。フブキさんと手を繋いでいることを指摘したり、この章から露骨にユーマへの矢印を露わにしてきましたね。
 もしかしてこの子、ユーマのことが好きなんじゃないか? カプ厨の私は訝しみました。
 いつのまにかユーマくん呼びに変わっていたり、デスヒコやヤコウ所長から愛する人認定されていたり、この章を通してだんだんとこの子がヒロインなんだな~とプレイヤーも認識していったと思います。
 そして同時に、いつか死ぬんじゃないか……? というハラハラも植え付けられましたね。ダンロンじゃヒロインは死ぬから……うん……。

 謎解きについては一点だけ、屋上からあの小さい穴に飛び込むのはスイマーとか関係なくヤバすぎるだろ!!!!


第4章

 所長……どうして……。

 ユーマと一緒に、あるいはユーマよりも先に真相を推理しようとするプレイヤーの方は、本章の犯人についてどの時点で気付いたでしょうか。
 自分は、アマたんの頭についていた足跡とエアロック室に入った時の画面の乱れから、アマたんの上に乗って移動したことが分かった瞬間に全てを察しました。
 勘のいい方ならフブキさんの時戻しが解鍵となったタイミングで察したのかもしれませんが、自分はその時点では気づけませんでしたね……まあそれ故に謎迷宮の中で真相に気付いて、ユーマと同じように取り返しのつかない現状への絶望を体験出来たのもありましたが。
 ただ、ヤコウ所長が死んでしまうのでは? と疑いたくなる伏線は結構見えてはいたんですよね。特に、死に神ちゃんがもじゃもじゃ頭を見直したりしたところで「あっ……キャラの評価が変わる瞬間って……」と、死亡フラグがガンガンに建てられていくのを肌で感じました。

 本章ではカナイ区最大の秘密やマコト、ヨミー関連の話にも大きな進展がありましたが、それ以上にもう絶大なインパクトを残したのがヤコウ所長の死と事件の真相でした。
 ごめん所長、アマたん捜査中の探偵たちの反応が面白くて、効果音とかめっちゃ鳴らして遊んじゃったよ……。
 もう、言いたいことは作中で死に神ちゃんが言ってくれましたが、あれだけ慕ってくれていた超探偵の能力を殺人に利用したことに対する裏切られた気持ちと、それほどまでに一途な愛と復讐心が強かったのかというやるせない気持ちが合わさり、本当にどうして……! と、言葉を失ってしまう結末でした。
 どこかの掲示板で見かけたのですが、ヤコウ=フーリオのフーリオは日本語で激怒を意味する言葉なのだとか。ユーマを助けてくれた出会いから超探偵達と過ごす日々の中で、ヤコウ所長はどれだけの激情を抱えながら笑っていたのでしょうね……。
 せめて終わりの瞬間――死に神ちゃんに抱きしめられながら送られたあの時は、安らかな気持ちであってくれたらと思います。

 話に出たのでそのまま死に神ちゃんについて。
 この章での死に神ちゃんは、感情的な彼女らしい真っ直ぐな言葉でユーマや超探偵たちの気持ちを語ってくれていました。
 上記の超探偵の能力を利用されたことには激しく憤ってくれて、けど彼女自身もまたもじゃもじゃ頭と言ってヤコウ所長を慕っていた一人だったから、最後にはいつもと違う演出で彼を抱きしめて送ってくれた。
 ちょっと倫理観が死に寄っているだけで、彼女もまた共に謎を解いてきた探偵の一人だったんだなって、ここで改めて気づかされました。
 また、謎迷宮を脱出した後のヨミーに追い詰められるシーンで、オレ様ちゃんのご主人サマに近寄るなー! と、人魂を震わせながらもユーマを守ろうとしてくれたのは、その前のヤコウ所長の件もあって一気に好きが増しましたね。
 ユーマが幽体離脱したときに触れられることを喜んだり、要所要所でユーマへの愛を見せてくれるんですよね。根っこの部分はいたずら好きな幼女なんだと思います。かわいいね!

 また、本章を語るうえで外せない人物がもう一人、ヴィヴィア=トワイライト。死に神ちゃんが見えているような描写があったり、死に神ちゃんからも怖がられていたりと、この男は他の超探偵とは違う何かがあるのではと匂わされていましたが、そういった前振りが思わぬ形で発揮されましたね。
 幽体離脱の能力については、これまでの章の発言から予測がついていましたが、その副産物が死に神ちゃんと相性抜群すぎました。特に謎迷宮に記憶を持ち込めるのは反則でしょう。まあだからこそ、後半の展開が光ったのですが。
 平穏を何よりも望んでいるが故に、現状を変えるような行為――真実を明らかにする行為を否定する。ヴィヴィア自身も後に後悔していましたが、彼ほどの才覚があれば、きっとヤコウ所長の犯行も事前に予期出来たのではないかと思います。
 しかし、彼は全体を俯瞰したうえで、何もしないことで維持される今を選んだ。その選択を悔やんだからこそ、最後にヤコウ所長を解刀で切る際はユーマに力を貸してくれたのだと感じました。
 謎迷宮の最終局面でヤコウ所長側に立って敵対してきた場面では、彼がどれだけヤコウ所長を信頼していたのかがよくよく伝わってきました。出来ればここに至るまでに、ヴィヴィアとヤコウ所長が親しくしているシーンなんかも見せてくれたらよかったなとも思いましたが、ヴィヴィアがプレイヤーの想像していたよりも夜行探偵事務所での生活を悪くないと感じていたことはよくわかるシナリオだったかなと思いました。

 謎解きについては、第二章が最も探偵特殊能力を活かした調査であったなら、今回は最も探偵特殊能力が活かされたトリックでしたね。まあだからこそ、探偵特殊能力をトリックに組み込める人物が犯人だとわかったわけですが。
 超探偵達なら、きっと自分を仇敵の元まで連れて行ってくれる。そんな超探偵への信頼と、その信頼に応えた結果殺人が成立してしまったというのは、なんとも皮肉なものです。
 現場向きで推理力の高いハララさんとヴィヴィアを犯行現場から遠ざけ、能力として必要なフブキさんとデスヒコを現場に連れていく。どこまでも超探偵達を理解していたヤコウ所長だからこそ起こせてしまった事件でした。

 そして、ヤコウ所長を失いながらも、ヨミーを保安部から排しアマテラス社から脱出したユーマは、最後にして最大の謎へと挑みます。


最終章(第5章+エピローグ)

 死に神ちゃんが好きになる物語でした。

 ここまでの章をプレイしてきたプレイヤーなら、最終章の序盤でゾンビが出てきた瞬間、カナイ区最大の秘密について察しがついたことかと思われます。だから、ゾンビ村から逃げ回ったり人肉工場を回っている場面なんかは、ある種答えを知っている物語をなぞるような、一周目なのに二周目みたいな感覚でプレイしていたのですが、その察しを想定されたシナリオだったからか、公衆浴場で雨雲発生装置を見た時の答え合わせ。そして、雨の降る街から雲が晴れた瞬間の――クルミちゃんが倒れた瞬間のすべてが繋がった感は、背筋にぞくっと走るものがありました。
 ゾンビ村、人肉工場と冒険していく中で行動を共にしていたクルミちゃん。最初、なぜクルミちゃんだけ近くに倒れていたのかと疑問に思いましたが、すべてを知った後だと、手近なホムンクルスの例としてマコトに行動を共にするよう仕組まれていたのだなと納得させられました。同時にマコトの周到さにも唸らされましたね。
 あと印象的だったシーンとしては、やはりヤコウ所長からディスクを受け取った場面でしょうか。あの瞬間、ゾンビ化したヤコウ所長にどれだけの意識が残っていたのかはわかりませんが、償いや探偵としての矜持など、様々な感情を抱かされる背中にユーマが「本当にありがとうございました」と声をかけた場面は、ヤコウ所長とユーマの関係の終わりとしてすごく綺麗な形だったのではないかと思います。
 そして、公衆浴場にて満を持して登場するマコト=カグツチ。後に彼がナンバー1のホムンクルスだとわかるのですが、自分はマコトの正体がホムンクルスだということまでわかっていても、それがナンバー1のものだとは最後まで気付けませんでした。というか、ユーマがナンバー1だと気付いたのも謎迷宮でマコトと斬り合っている時でしたし。公衆浴場で手を繋いだシーンも、マコトが能力共有を持っているとまで発想が追い付かず、ユーマ側の能力共有を利用して謎迷宮に潜り込もうとしているのかなと想像していましたので、いい意味で展開に裏切られました。
 大事なところは察しが悪かったのが、逆にゲーム体験としてはよかったかなとも思いました。実際、めっちゃびっくりしましたよ。

 今回は先に謎解きについてを。
 といっても、謎解きというよりはホムンクルスがいかにして生まれたのかの答え合わせをしていく流れでしたね。
 血の色については、完全にしてやられた側の人間でした。ダンガンロンパシリーズからの先入観で、死体の血の色=ピンクだと刷り込まれていましたね。思えば第0章の指を切った際や、そもそも謎迷宮におけるユーマの血の色はがっつり赤色だったのに、何も疑うことなくピンク色を受け入れていたので「やられた~~~~!!」と舌を巻かされました。

 さて、それでは表題にも挙げた死に神ちゃんについてを。
 この物語はカナイ区最大の秘密であったり様々な探偵達との出会いと別れであったりと、たくさんの要素を含んだ物語だったと思います。が、あえてメインの題目を一つに絞るなら、このレインコードというゲームは死に神ちゃんが好きになる物語だったと言えるでしょう。
 1章~4章まで、それぞれ能力共有をした超探偵をゲストに添えて謎迷宮を攻略してきたので、ここにきて第0章と同じように二人で攻略に挑むのは、わかりやすいですが高ぶるものがありました。
 特に、死に神ちゃんと二人で並んで一緒に謎迷宮へ突入する瞬間は、それはそれはもう胸がキュンキュンしましたよ。キュンキュンって今時言わないですかね?
 カナイ区最大の秘密を知って心が折れたユーマを奮い立たせ、もう一度立ち上がるだけの勇気を与える。ダンガンロンパシリーズではある種恒例のラスボス前覚醒シーンですが、その役割を担った時点で彼女がヒロインであり教育係であり、心からユーマを思ってくれている存在なんだって認識させられました。プロフィールにある「好きなもの:ユーマ」には何一つ偽りがなかったのですね。これはもう純愛でしょう。
 それだけに、死に神ちゃんと別れなければならないシーンでは、本気で忘れたくないと思わされました。「ベストではないにしてもそれなりにいいコンビだったじゃん」なんて、酸いも甘いも謎解きも、思い出を噛み締めたうえで吐き出された全てを肯定する総括の言葉、本気でユーマを想っていなければ出てこないですよ。
 そして別れ際のほっぺにキスと、少し悲しそうな笑顔。それでも、ユーマが交わしてくれた契約を信じて見送ってくれる死に神ちゃんに、しっかりと惚れさせられました。
 元々、ビジュアルが好みだったのですが、彼女の内面を知っていくことでより一層惹かれていきました。それゆえに、前の相棒だったナンバー1に嫉妬する瞬間なんかもあったのですが、そのナンバー1もユーマだったことを知って爆発しかけた脳が回復しました。やはり純愛だ、デスヒコもきっと同意してくれる。

 エピローグではクルミちゃんに死神の書を預け、ユーマは死に神ちゃんに見せると契約したみんなが幸せになった世界を作るため、また新しい土地へと旅立っていきます。
 そして、その背中を追いかけるクルミちゃん。ホムンクルスが生存出来る手法も確立されたばかりだというのに、行動がアグレッシブすぎる。さすがは実体のあるヒロイン、彼女もまた立派なユーマに狂わされたヒロインです。
 続編があるかはわかりませんが、もしあるのならば記憶を取り戻したユーマとクルミちゃんが再開し――そして、死に神ちゃんとも再開した姿が見られたら嬉しいなと思います。

全体感想

 総括として、大満足の作品でした。
 自分は死に神ちゃんが好きになる物語と総評しましたが、死に神ちゃんだけでなくそれぞれのキャラクターも個性豊かで感情移入出来る部分が多く、一つ一つの章でキャラクターに入れ込み、一喜一憂しながら進めていくことができました。
 ロードの長さや単調になりがちな謎迷宮など、ゲーム的なつくりの部分で思うところがなかったと言えば嘘になりますが、ストーリーとしては本当に満足させてもらった作品でした。

おまけ

 真相を知った状態だと洒落にならんギャグ

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