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美しい棺 -タバサとリュカに関する考察-


はじめに

このnoteはFANZAGAMESの提供するブラウザゲーム「Deep One 虚無と夢幻のフラグメント」に登場するヒロインキャラのひとり、タバサ・トワイニングの魅力をお伝えするためのものである。
18禁のエロソシャゲなのでその点ご注意。(全年齢版がDMMGAMESからリリースされてるよ!)

この記事ではタバサがいつも持ち歩いている例の棺についてガチ考察する。

序章 -呪いの絆-

タバサ関連のストーリーを多少なりとも追ってるかたには周知の事実だが、この棺の中には「タバサの兄」が封じられているとされている。

兄の名はリュカ。魔術名門の家に生まれるが病弱のため魔術を扱う適性がなく、先祖代々の魔術を継承することを是とする一族の者からは忌み嫌われていた。
ベクトルは違うが同じ理由で鬼っ子だったタバサの理解者として幼い頃から妹を支えていたが、病にその身を蝕まれて夭折している。

タバサは彼の遺骸を棺のなかに封じ、「まだ生きている」ものとして日々親しげに接している。これはタバサの主観であって、他の者が「兄様」の声を聞いたり存在を感知する具体的な描写はない。

「客観的な事実」としては、タバサのRカードのストーリーテキストが簡潔にまとまっているので紹介する。

作中での扱いもおおむねこのような感じであり、タバサの一人芝居に周囲が合わせている、といった印象である。

また、タバサ自身も主人公や仲間と触れ合って孤独が瘉えるにつれ、「兄様」の言葉がどんどん遠ざかっていくことを不安に感じている。

ここから推測できるのは、タバサの用いる魔導書はリュカの遺骸を封じてはいるが、そのなかで「兄様」が生きているというのは最愛の兄を失い天涯孤独となったタバサが生み出した幻想にすぎないということである。

タバサ自身もそれをうっすら自覚しているからこそ、その「真実」と向き合うことを恐れ、先延ばしにしている……いつか、それを受け止める強さを身につけるときまで。

………………。

…………。

……。


──本当にそうだろうか・・・・・・・・・


破章 -心に念じる、見えない刃-

「兄様」の存在がタバサのなかだけの妄想にすぎないと仮定した場合、どうにも噛み合わない点がある。
いや、噛み合いすぎている・・・・・・・・・と言ったほうが正しい。

上では「タバサの一人芝居に周りが合わせている、といった印象」と書いたが、人前でイマジナリーブラザーと会話する電波女にきっちり合わせていくなんて、そんなことが可能なのだろうか?

このようになんの屈託もなく「タバサの兄がそこにいる」ように振る舞うよりも、なにかしらの歯切れの悪さや釈然としない心持ちが態度に滲み出るのが普通ではないのか?

ルルイエ女子は良くも悪くも精神的弱者に厳しいことに定評がある。
ウジウジしたり都合の悪いことから目を背けているものにはビシバシ詰めていくし、なんならタバサも詰める側である。
冷静に考えると、そんな彼女らが揃いも揃って腫れ物に触るようにタバサの妄想に付き合うなんてことはありえないだろう。

では、なぜそんな本来的には「ありえない」印象が形成されたのかを遡って探っていくと、タバサのこんな独白がある。

これまでのタバサは「兄様」の存在を誰にも信じてもらえず、徹底的に拒絶された体験があることがいちばん最初に読者へ提示されている。

この「『兄様』の存在は誰にも信じられていない」という先入観が、作中における実際のタバサの受け入れられかたに対して「単に合わせているだけ」という印象を与えているのである。

だが、(主人公は善意の塊なので素直にタバサを信じたが)いくら口先だけで合わせても聡いタバサがそれに気づかないわけがないのである。
しかし、タバサのほうでなにか動かぬ証拠を突きつけて信じさせたわけではない。そもそもそんな証明が可能ならタバサも苦労はなかっただろう。

そのズレを解決する鍵は、「信じなかった連中」の傾向にある。

  • 血の繋がった連中=タバサの才能を憎むクソ血族

  • 個々人の特異性を下に見る職業的凡骨

この通り「タバサの才能を認めない」という点で共通している。
魔導書に意識を移すなんてそんなことができるはずがない、という「常識」でタバサを測り、タバサへの無理解によって「妄想扱い」しているというわけである。

言い換えると、

  • タバサの才能の軽視

  • タバサの人格への蔑視

このふたつの視点の有無が「兄様」の存在を信じる/信じないの違いとして現れていると考えれば、それまでは(クソ家族やモブに)まったく信じられていなかったことが仲間たちには受け入れられていることの説明がつく。

つまり、タバサの人となりを知りタバサの操る魔術へのリスペクトがあれば「タバサならそんなこともできるかもしれない」と普通に信じることが可能だという解釈が成り立つのである。


急章  -そして夜の扉が開く-

もう少し考察を進めよう。

タバサの魔術のレベルの高さなら兄の意識を別の「器」に移すことも可能かもしれないが、タバサの編み出した魔術体系の独自性により具体的な構成を読み解くことはできないし、棺のなかにいるであろう「兄様」の声は(タバサの他には)誰にも聞こえない。
という建付けによって「タバサにしか声が聞こえない兄が棺型の魔導書のなかにいる」という認知がルルイエ女子の間で共有されている、とする。

では実際、これはどれだけ見込みのある話なのだろうか。
極論を言うとタバサの出鱈目を周囲が信じ込んでしまっているだけ、という状況も考えられる。
この場合、なまじタバサに才能があるため周りもろくに疑わず、タバサも「独自の魔術理論」に託けて自分の妄想を展開していることになる。マッドサイエンティストが誰にも理解できない独自理論によるタイムマシンの開発に成功したと嘯くように。

この疑問に対する答えは、意外というべきか案の定というべきか、タバサの登場時点においてすでに示されていた。

情報として曖昧だったために「なんかそれっぽいこと言ってる」くらいの手触りでスルーしていた箇所が、ここまで考察を進めたことによって急に意味を帯びてきたのである。

ここで改めてタバサの登場エピソード(タバサの仇敵にして親近たるノルンとの出会い)を振り返ってみよう。

魔術のエキスパートであるノルンによる棺評をまとめると、少なくとも接触当初は「タバサの偏愛が生み出したオモチャにすぎず確固たる心を持つとは思えない」という認識を持っている。

問題はここから先である。

唐突に鼠径部をさらけ出してタバサに襲いかかった後、

タバサの実力だけではなく魔導書のほうにも感嘆を示して「妹を思う妄念」と称し、最後には意味ありげな言い回しで「兄様」の存在を暗に認めるような含みを持たせている。
もちろん具体的に明言してるわけではないので確たる証拠にはなり得ないが、状況証拠としてはかなり強い意味を持つ。

  1. 人の心が宿るとは考えにくいという事前評価を下したノルンが

  2. なにかを探り見定めるために戦いを仕掛け

  3. 以降、「タバサを思う何者かの意思」について言及する

という流れから推測できるのは、「戦闘を通じてタバサの魔術と魔導書について分析を行い、なにかしらの意思ないし思念が実在する判断を下した」ということである。

考察の順番が逆になってしまったが、まずこのエピソーがあって他のイベントエピソードなどが展開されていることから、
スートーリー構成上としては「棺のなかにはタバサにしか声が聞こえない『兄様』がいるのは事実」という前提に基づいて、
そんなタバサを信じるか信じないか(タバサの才能を理解するかしないか)というテーマがたびたび語られていることになるのである。

終章 -愛と再生と……-

この構成を意識すると、色々なことについて違った景色が見えてくる。

例えば、上述における「『兄様』の声が遠ざかっていく不安」などは(誤誘導された)印象に基づけばタバサが妄想から覚めつつあることの段階に当たるわけだが、実際はタバサが楽しそうに友達と話しているから空気読んで黙っているだけである。

同じように、タバサが会話のなかで頻繁に「兄様」に横車を押されて発言を撤回する奇癖も、タバサ自身の内なる良心の発露とかではなく妹の人付き合いの悪さに気を揉むお兄ちゃんが口やかましく注意しまくっているのである。

あまつさえ、それじゃ過保護すぎると反省したのかたまには自分(棺)を置いて遊びに出るように勧めるという心配性が極まる保護者ムーブまで決めている。

その教育の甲斐あってか、当初は「『兄様』さえいれば他はどうでもいい」と外界を拒絶し「兄様」に完全に依存していたタバサも、今では保護者目線で他の年下キャラの面倒を見たり、同じく保護者目線のキャラに対して先輩保護者ヅラする逸材に仕上がっている。

タバサの口やかましい世話焼き気質・細心さと寛容さが同居するアンビバレンスな精神性は明らかに「兄様」の影響であると言える。

妹が光の指す道を歩けるように声なき声で導く先導者──それがタバサの持ち歩く棺、タバサの兄たるリュカである。


残る最後の謎は、「タバサの魔導書のなかにいる『兄様』は、本物のリュカ基準でどこまでの解像度を保っているか」である。

そっくりそのまま精神体を移し替えたのか、残留思念を定着させたのか、タバサの思い出のなかにあるリュカを魔術で再構成したのか……。

真相は藪の中である。


おわりに

ミステリアスなタバサの魅力をしゃぶり尽くした記事を書き終えてやっぱりタバサはミステリアスで素敵だなあと認識を新たにした筆者であったまる

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