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『金木犀好きなんだよね。』
1度もこっちを見向きしないで言った。
テレビで『香水、匂い』の話が出ていて
唐突に口を開いた。
もう少しで仕事に出ていくらしく慌ただしく髪のセットをしていた。
ほう。私も好き。
コロンを買ったくらいには。
彼の好きな物なんてもう知るよしもない。
金木犀の香りと紅茶花伝が好きっぽかった。
ぽかった。というところでお察し。
クソゲーにはまっており、めちゃくちゃ燃えていた。それを見るだけで楽しかった。
まあ、全くこっちを見ないけれど。
元々そういう人だったのかもしれない。
初日に一瞬目が合っただけで
それ以降1度も目が合わなかった。
私の脳裏に残る彼は
髪の毛と後ろ姿だけだった。
ああ、あと寝てるとこ。
寝てる時凄い身体痙攣するタイプでびっくりしたのを覚えている。
それだけ。
それでもかなり私には大打撃な情報だし
金木犀毎年咲くし。
彼にとっては何も無かったただの毎日なのだろう。
私にとってはこの時期に思い出してしまう人になったけれど。
彼も何をするにも仕事熱心で
いつも仕事の事を考えていた。
きっと今も彼なりに仕事をしているんだろうな。
と、半年経った今でも同じ場所にいる
私には到底想像もつかない事だけど。

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