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”福”産物ツアー@西淡路希望の家

”福”産物ツアーとは?
京都を拠点に活動する「副産物産店」のお二人とともに、障がいのある人が創作活動やものづくりをおこなっている福祉施設をめぐり、そこで生まれる「副産物 (日常や創作活動からこぼれ落ちたもの)」をリサーチ。福祉の現場でなにを「主産物」(そのもの自体が主体性をもって存在するもの)とし、なにを「副産物」とするのか、芸術や福祉の垣根をこえて、わたしたちが大切にしているものは何かを現場のスタッフのみなさんとめぐるツアーをしました。今回は近畿の3カ所の福祉施設を訪問しました。

副産物産店
山田毅と矢津吉隆によるプロジェクト。アーティストのアトリエから出る副産物に新たな価値をつけて提供する取り組みをしています。
オフィシャルウェブサイト

◇ ツアー一日目 「西淡路希望の家」訪問


西淡路希望の家 外観


ツアーのはじめに施設長の丸山泰典さんにより施設についてご説明いただいた後、施設館内をスタッフの金武啓子さんにご案内いただきました。※西淡路希望の家の訪問レポートはこちら

右が施設長の丸山さん、左がスタッフの金武さん


はじめに見せていただいたのは、作品制作時にパレットや絵の具の容器に残ったままの絵の具を乾かした「絵の具の欠片」です。
大きなものから細かくなったものまで、様々な形状や色のものがありました。

保存されていた絵の具の欠片

西淡路希望の家では、この他にも様々なものを捨てずに保管し、作品や雑貨の制作に活かす習慣が以前からあるそうです。

絵の具の欠片を使って創作された作品を観せていただきました。

絵の具の欠片が使われた作品

副産物産店のお二人(以下 副):実は僕たちも乾かした絵の具の欠片を使った創作をしているんです。それをキーホルダーにしたりもしています。
こちらとは初めてお会いしたのに、僕たちの活動と共通点があったんですね。

絵の具の欠片以外にも、施設では日常的に「ものを再活用する文化」が浸透しているそうです。
例えば、手織り作業で出る”短かすぎて使えなくなった糸”や”織り糸の紙芯”をアクセサリーなどの商品制作に活用したり、オンラインストアで販売された商品に同梱する「ありがとうカード」を、各班で季節ごとに作られる掲示物を再利用して作ったりしているそうです。

短くなった手織り糸で制作されるアクセサリー


一通り利用者さんたちの活動する部屋をご案内いただいた後、建物の4階にある制作室にもご案内いただきました。
こちらは、利用者さんの作ったものをスタッフがバッグやポーチ、アクセサリーなど様々な商品に仕立てる部屋です。

スタッフが商品などを制作する制作室

副:制作されるグッズのセンスがどれもとても素敵なのですが、どこからそのセンスの良さはきているんでしょうか?

金武:毎年作っているカレンダーだけは、外部の方に依頼して利用者さんの書く数字の魅力を伝えられるデザインをしていただいていますが、手作りできる布製品などは、主にスタッフが利用者さんの作るものの良さをどうすれば最大限活かせるか、考えながら作っています。

毎年利用者さんの数字のみでデザインされる人気のカレンダー

金武:例えば、「透明のシートで商品を作ると、作品の原画そのものがそのまま使えるな。」など、工夫して制作しています。

透明シートを使うことで作品原画がそのまま活かされた商品の説明をする金武さん

副:こちらでは以前から、施設の副産物を活用されているのですね。僕らと同じ思想の人がジャンルの違う「福祉施設」にいるのだとわかり、驚きました。

ミシンの試し縫いがされた布

金武:縫製チームが試し縫いする布があるのですが、そういったものもとっておいています。私たちにとってはとても愛おしいものなので、いつかそれを展示して色んな人に見ていただきたいです。これも「副産物」と言えそうですね。
ミシンの糸の残りも集めています。ゴミを集めるとそれが綺麗で捨てられなくて。

副:副産物の使い方として、それ自体をそのまま詰め合わせたり展示するといった「加工しない使い方」と、西淡路希望の家のポーチなどのように商品に「加工する使い方」があります。
副産物をアートとしてとらえる前者と、素材として活用する後者というように、違った活用の仕方があると感じています。

集められたミシン糸


作品の保管や制作をする部屋へもご案内いただきました。

そこでみせていただいたのは、洋服ブランドのカタログ。そのカタログは利用者さんが上から絵を重ねられ、もはや作品と言えるものに生まれ変わっていました。
もともとは商品紹介のための広報媒体として郵送されてきたカタログなのだそうですが、元来そのものにはなかった魅力が生まれていました。

洋服カタログと作品のコラボレーション

このように、施設以外のところからやって来た副産物もたくさん活かされていました。

利用者さんのご家族が施設の創作活動をみて「これも使えないか」とのご厚意で下さったかまぼこの板。これらも作品として生まれ変わっています。たくさん頂いたので他にももっと色んな活用方法がないか模索中なのだそうです。

かまぼこ板から作られた作品


創作意欲あふれる利用者さんから日々大量に生み出され続ける作品は、ご自身でリメイクした箱に収納・整理されていました。
収納されている作品も原画のまま商品に生まれ変わっているので、それぞれの循環と循環が重なり、作品だけにとどまらない収納箱も含んだ全体としての魅力が生まれていました。

リメイクされた箱と収納された原画
一同そろって箱のデザインや作品の魅力に惹きつけられている

他にも、絵の具を拭くための布、ガムテープの芯を使って描かれた作品、制作時に絵の具がはみ出てカラフルになった制作机など、西淡路希望の家では捨てたり消されず残ったものが愛情たっぷりに保存されていました。

道具についた絵の具をぬぐった布
ダンボールの芯を使った創作


◇ 振り返り

副:ツアー開始前までは、すでにここまで副産物を活用されているとは思っていませんでした。裏紙なども含め大小関わらず全部使っていた。
それほど副産物の再活用が幅広く日々の活動に浸透している施設に出会えたのはうれしいし、正直驚きました。

保管されている使用済みの絵の具の容器たち

金武:ここでは捨てるものはありませんね。他の人が見たらゴミにみえるものでも全部魅力に感じますし、そこから新たに生み出されたものも魅力的だと感じています。

事務局:今回金武さんに施設をご案内頂く中で、その活動の背景には、組織がスタッフである金武さんのアイデアや活動を尊重し、その環境があって成り立っている側面も大きいと感じました。

副:ツアーで発見した糸くず、乾いた絵の具、織り糸の芯などの副産物を僕たちの手で生まれ変わらせたものを、ぜひ金武さんに見てほしいです。


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アーティストの創作活動から副産物をひろいあげ、そのもの自体にスポットをあてて価値を再発見することから始まった副産物産店の取り組みと、副産物を加工し、新たなものを作り出すことで魅力を再構築する活動を長年続けていた西淡路希望の家。
それぞれのフィールドは違うものの、同じ視点で日常からこぼれ落ちたものに魅力を見出していた両者が出会うツアーとなりました。

副産物産店の矢津吉隆さん(左)、金武さん(中央)、副産物産店の山田毅さん(右)

写真:衣笠名津美
レポート:事務局 小松紀子

副産物産店やお二人個々の活動拠点についてはこちらのリンクをご覧ください。▼
副産物産店 https://byproducts.thebase.in/
只本屋(山田毅さん) https://tadahon-ya.com/
kumagusuku(矢津吉隆さん) https://kumagusuku.info/

エイブル・アートSDGsプロジェクト2022「リ・プレイ つくりなおし、あそびなおし」では、今回の西淡路希望の家の他に、Good Job!センター香芝(奈良)とやまなみ工房(滋賀)、計3施設を副産物産店のお二人と巡る「”福”産物ツアー」を行いました。
この他のプロジェクト活動として
▼2022年11月4日(金)特設Webページと期間限定オンラインストアの開設
▼2022年11月11日(金)「副産物産店」オンラインワークショップ
▼2022年11月20日(日)エイブル・アートSDGsセミナー/poRiffワークショップ
が行われます。
ぜひ特設Webページをご覧の上ご参加下さい(イベント等は要予約)。
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 ◎ 特設Webページ
https://booklorebooks.net/ableart2022/20221101/ 
 ◎ 期間限定オンラインストアhttps://goodjobstore.jp/pages/able_art_sdgs_project_2022


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