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西淡路希望の家 訪問レポート

京都で活動する副産物産店の矢津吉隆さん、山田毅さんのお二人と、エイブル・アートSDGsプロジェクト2022の事務局スタッフが西淡路希望の家(大阪)を訪問しました。
本記事は「”福”産物ツアー」とは別に、西淡路希望の家の活動についてレポートします。※”福”産物ツアーのレポートはこちら

◇ 訪問レポート

施設長の丸山泰典さん

施設に到着した私たちを施設長の丸山泰典さんと、スタッフの金武啓子さんが迎えてくださり、施設についてお話をうかがいました。

事務局:西淡路希望の家がアート活動に力をいれるようになったきっかけはあるんでしょうか?

丸山:西淡路希望の家の開設当初、アートはメインの活動ではなかったのですが、私の一代前の施設長からアート活動に力を入れ始めました。
現在のアート部活動を牽引している金武さんが入職してからはみんながサロンのような感覚で集まって活動をするようになり、そこから公募展に出すなど活動の幅が広がっていきました。

金武:私ははじめ、ボランティアでアートを教えることから始めました。そこで利用者のみなさんの作品をみて心を打たれ、今では職員として関わりを持ち続けています。

スタッフの金武啓子さん


施設についてお話を聞いた後は、金武さんに施設内をご案内いただきました。

館内の受付前に目を引く掲示物がありました。

販売数を屋台で表現している

西淡路希望の家では毎年利用者さんの作品をデザインしたTシャツが販売されているのですが、楽しみながら販売意欲をあげられるよう、年ごとに工夫をこらしたしかけを考えられるそうです。
今年は50枚売れるごとに、模造紙に書かれたお祭りの沿道に屋台を1つ追加できる掲示物によって、売上を可視化されていました。

受付の奥へ進むと、階段の壁一面に壁画が描かれていました。

階段の壁一面に描かれた圧巻の壁画

このように、館内はいたるところに利用者さんの作品や、季節ごとのイラスト、作業や売上の成果を楽しく表現したものなどがたくさん展示や掲示され、日常に創作の楽しさが現れていました。

利用者さんの活動する部屋もご案内いただきました。
みなさんは6つの班に分かれ、就労を目指した仕事をメインにしている班、自主製品を作る班、webshopで売れた商品の発送作業をする班など、様々な活動をしています。

主に織り糸を使った製品づくりを行うクリエイト班の室内
刺繍がしやすいよう刺繍台を導入するなど、制作環境が工夫されている
はばたき班では外注の仕事をメインに作業している

また、この日は夏のお祭りイベントとして、屋台の食べ物(たこ焼きやチョコバナナなど)を作って食べたり、盆踊りをする班もありました。

なごやか班では盆踊りの最中
盆踊り会場に置かれた神輿


みなさんの活動を見せていただいた後は建物4階へ行き、縫製スタッフがグッズを作る制作室にご案内いただきました。

ここでは、主に西淡路希望の家の人気商品「スーパー ハイパー スペイシー」シリーズを始めとしたバッグなどを制作しています。(一例:スーパー ハイパー スペイシーバッジ

ここで「スーパー ハイパー スペイシー」シリーズが生み出される
金武さんが持っているのは人気商品のエコバック

もともと西淡路希望の家では、裁縫などものづくりの上手なご家族が、綺麗で手のかかった商品を作り、主にご家族など含め施設関係者に販売していたそうです。

繊細な織りもの製品

金武:私が入職してからは、利用者さんやご家族が作られたこの綺麗な布を施設関係者だけでなくもっと外に出して若い人の手にも届けたいという思いがあり、クッションを作って雑貨屋に卸し始めました。そこから今の商品作りのかたちがスタートしました。
より作品を活かし魅力的な商品を作るために、町中にかわいいものを持っている人がいたらそれを写真に撮らせてもらって参考にすることもあります。

広告を使って作られたポーチ

西淡路希望の家の人気商品の数々は、web store でも購入でき、販売された商品の梱包や発送の作業はLINK!!班の利用者さんが行います。

◇ 最後に

福祉とアートについて、副産物産店のお二人と金武さんにうかがいました。

副:施設長の丸山さんから、施設としてノーマライゼーションを掲げた活動を続けているとツアーの始めにご説明いただいたのですが、「ノーマライゼーション」という言葉を検索して調べ、”弱者側に変化を求めるのではなく、社会のあり方や仕組みを変えることで、生きがいや役割を見いだせるように働きかける”というところは、僕たちの考えと重なると感じました。
アーティストは一般に、創作活動を続けることと生活を維持することの間で苦労する事がほとんどです。
どうしたら周りの友人やアーティストと一緒に創作しながら生活を成り立たせていけるか考えながら僕たちが活動している点は、ノーマライゼーションに重なっていると感じます。

それと、アーティストと福祉施設では、どちらも「何かを作り続けている」ことでも共通していると感じました。
ただ一方でアーティストと障がいのある人との違いについて、僕 (山田さん) が以前京大病院と一緒にてんかんのある人との展覧会をした際、彼らにとっての作品は「表現として」や「それをどうかしたい」という対象として描くというよりは、「家族が喜んでくれるから」などといった、コミュニケーションツールとして描かれている側面が強いと感じました。
そしてご家族も描いている様子をみて本人の体調を推し量るというように、アートとは違う文脈で作品をとらえられていました。
その点では、アーティストと違いますね。

金武:福祉とアートでいうと、私は福祉を専門に学んできた(アートになじみのなかった)職員と、美術を学んできた人がごちゃまぜに交わるといいなと思っています。
職員に、表現から生まれる「日常生活や仕事とは違う豊かさ」や「その人の魅力」を伝えたいと日々頑張っています。
私が西淡路希望の家に関わり始めた当初は「絵で食べていける人を一人でも多く生み出したい」と思っていましたが、今はお金につなげる事だけでなく、「私が今感動していることやその魅力を人にも伝えたい」と強く思うようになってきました。
これからも利用者さんの魅力を伝える活動を頑張ります。


写真:衣笠名津美
レポート:事務局 小松紀子

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社会福祉法人ノーマライゼーション協会 西淡路希望の家

社会福祉法人ノーマライゼーション協会 西淡路希望の家 は、1975年にご本人やご家族の声により立ち上げられた「障害児・者の生活と教育権を保障しよう淀川・東淀川区民の会」の結成を前身とし、1985年に18歳以上の人の「地域の共生の拠点」として開設。
地域の中で「働くこと」「社会参加」「自己実現」を中心に据え、軽作業、清掃、販売や創作活動等様々な活動を行っている。
現在、社会福祉法人ノーマライゼーション協会 西淡路希望の家では約60名の方々が活動中。

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