日替わり国替わり -母国の家庭料理がつくる異文化交流 TIFAカフェ・サパナ(大阪)
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日替わり国替わり -母国の家庭料理がつくる異文化交流 TIFAカフェ・サパナ(大阪)

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豊中市にあるTIFAカフェ・サパナは日替わりで様々な国の家庭料理を提供しています。国は、ネパール、インド、バングラデシュ、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、韓国、イラン、ルーマニア、メキシコなどいろいろ。そしてシェフを務めるのは日本に住む外国人のみなさん。母国で日々食べている家庭の味を再現して、日替わりランチとしてお店で提供しています。
こんな珍しいスタイルのTIFAカフェ・サパナは、身近な国際交流・外国人支援活動を行う、NPO法人国際交流の会とよなか(以下TIFA)が開設し、運営を支援しています。各国のおうちご飯を通じて普段着の異文化交流ができるTIFAカフェ・サパナの運営を担当する安本洋子さん、そして日替わりシェフを担当するタイ出身のジャンタニさんにお話を伺いました。

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▲TIFAカフェ・サパナ。ランチは20食限定 11:30〜14:00頃(大阪府豊中市)
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取材レポート

2012年のカフェ立ち上げ時から現在もサパナの店舗運営に携わっている安本さんは、そのマネジメントについて、「シェフ同様、店長も日替わりというスタイルなので複雑で大変」と語ります。それでもこの運営方法を変えなかったのは、この場所が「交流する」ためにあるからかもしれません。シフト表を見ながら、その週一週間の店長を紹介していただくと、
「月曜日はネパール人、火曜日は飯田さん(日本人)、水曜日はベトナム人、木曜日は韓国人で、金曜日はネパール人・・・」
最近では、店長を担える外国人が増えてきたこともあって、いつまでも日本人が表に立たず徐々に彼らに活躍の場を渡していきたいと、安本さんは語ります。その言葉の裏には、効率的に運営することが目的ではない「サパナがそこにある理由」が見えてきます。

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▲シェフと店長が連携してその日のランチを提供します。
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こういった、異なる国の人たちが隣同士で関わっている、文化的な距離を軽く飛び越えていろんな人と出会える横断的な雰囲気がサパナの魅力のように感じます。安本さん自身、「一人でも新たに外国人と出会ったら親しくなって、料理を作ってもらいたい」となるそうです。「母国の家庭料理」が、知らなかった国の文化に触れる、またそこから来た人と関わりあうきっかけになっていることがわかります。

とはいえ、人によっては日本語でのコミュニケーションが難しかったり、味覚、習慣の違いなど、あらゆる感覚のズレの調整は簡単ではありません。シェフを担当する外国人の方々とは、日々どのようなコミュニケーションを重ねているのでしょう。

サパナで働く外国人の方は、家族の仕事や学業の関係でやってきた、など来日の理由は様々。慣れない土地での生活には困りごとが付きものですが、TIFAの事務所(サパナの2階)に行けば誰でも相談にのってくれる、という環境があります。
外国人シェフにとっては、この場所が単なる仕事場ではなく、日々の小さな心配事について一緒に考えたり、自分の生活を気にかけてくれる人がいる拠り所にもなっているようです。お互いの些細な変化を気にかける関係は家族のようでもあり、コロナ禍の今、みなさん顔には出さないけれども、国内の移動制限や、さらには母国に帰れなくなったりと、安本さんの目から見て「辛いんだろうな」と外国人シェフを心配する場面もあったそうです。
なかには、サパナで料理の経験を積み、日本で自分のお店を出した方もいて、みなさんサパナと関わりを持つ理由は様々ですが、それぞれの人生や日々の暮らしを支える存在として、この場所があるような印象を受けます。

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▲TIFAは、ネパールの女性・子供自立支援活動なども行っており、カフェでは現地の様々な製品を販売しています。
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▲カフェの壁には今日のランチの国を示す地図
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また提供するランチメニューの作成に関しては、できる範囲で工夫することが求められます。例えば、食材。コストを考慮しながら、入手可能であるかどうか検討の上、変えられるものは変えるのですが、要の食材や調味料に関してはできる限り調達し、手に入らない場合はなんとかする努力をされています。安本さんは自身の純粋な興味もあって、シェフが挙げてくるもの以外にどんな調味料があるか調べてみる、とも話します。そこには絶対に必要なものを見極め、ほかの部分は柔軟に変更しながら、お互いにとってちょうどいい落とし所を見つけるコミュニケーションがあるように感じました。

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▲この日はタイのご飯。日本人に合わせた辛さに調節している。
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かつて青年海外協力隊を経験した安本さんは、子育てが一段落した頃にボランティア活動がしたいと国際交流センターを訪れた際、TIFAの存在を知りました。その後、TIFAがNPOになるタイミングで事務局の手伝いをするようになり、以後ずっとTIFAとつながりがあります。
安本さんはカフェの運営経験がない中、本当に手探りで試行錯誤を重ねながらなんとかここまでやってきた、と話します。お店で出すメニューを外国人シェフと調整することひとつとっても苦労があることは想像に容易く、回を重ねるごとに徐々にお金をとっても恥ずかしくないものを出せるようになったそうです。今でも、地域の方々にもっと来てもらえるよう、ランチの質の向上に努めておられます。

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▲TIFAカフェ・サパナの運営を担当する安本さん ※事務局撮影
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「とにかくやらなきゃいけない」という思いでサパナを運営してきた安本さんですが、誰もが関わりやすくなるよう、あえて何かに向かうということをしていないそうです。「気楽にこの場所に入ってきてもらわないと、本人もしんどいでしょう。大きな事故がない限り大概のことはなんとかなります。」という安本さんの言葉に見られる柔軟な考えがあるからこそ、誰でもウェルカムな場所でいられるのかもしれません。

「もう家族みたいな感じ」 -ジャンタニさん(タイ)に聞く

取材当日の日替わりシェフはタイ出身のジャンタニさん。ジャンタニさんの夫はタイで働いており、子供の教育のため、3人のお子さん(現在大学3年生、大学2年生、中学2年生)を連れて、2017年3月に日本へ来られました。

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▲タイ出身のジャンタニさん
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ジャンタニさんとサパナとの出会いは来日して間もなくの頃。
市役所で様々な手続きをする際、TIFAのことを教えてもらい、すぐに電話をかけたそうです。3月に来日し、4月、5月と何もしていない状態で寂しく、国へ帰りたくなるので、「そろそろ仕事をしなきゃ」と思っていた時にサパナに「シェフをやらない?」と声をかけてもらいました。フルタイムで別の仕事もやりつつ、月に数日サパナでシェフをしています。

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▲ジャンタニさんは、サパナのシェフとして5年ほど働いています。
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当初、日本語は耳ではわかるけども、読み書きが難しかったというジャンタニさん。日本語学校などには行かず、サパナでの普段のコミュニケーションの中で必要な言葉を教えてもらったそうです。また、役所への申請書類を揃える時にわからないことを教えてもらったりと、日常生活を送る上でサパナの存在が大きいことがよくわかります。

料理提供に関しては、スタッフの方やお客さんからも「辛すぎる」など厳しい意見があると言います。ただ、愛があっての厳しさに、ジャンタニさんも「もう家族みたいな感じです」と。そんなやりとりを重ね、味の調整をし、またコストや見た目を考慮し、材料を検討しながら、日本人に合わせたタイの家庭料理を工夫して作っておられます。
ジャンタニさんのランチをいただくと、味がマイルドになっていることに気づき、日本人に合わせて考えながら作っている気遣いや工夫を感じます。お子さんたちも好きなメニューだそうですが、家ではもっと辛くして食べているそうです。

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▲ジャンタニさんのランチ。とてもおいしくいただきました!

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各国の家庭料理が中心にあるサパナは、在日外国人が生き生きと日本で暮らすことを後押しすると同時に、私たち日本人が異文化に触れ、知らなかった何かに出会える場でもあります。
無理せず気楽に世界の人たちと関わっていく。サパナには、飾らない「いつものご飯」がつくる多文化共生の形があるような気がします。

写真:衣笠 名津美

《団体情報》NPO法人国際交流の会とよなか/TIFAカフェ・サパナ
事務局:筒井 百合子(つつい・ゆりこ)/安本 洋子(やすもと・ようこ)
所在地:大阪府豊中市
Tel:06-6840-1014
http://tifa-toyonaka.org/activities/616
2012年にオープンした、国際交流や在住外国人の支援活動を行う国際交流の会とよなかが運営するカフェ&交流スペース。「世界と出会う空間(ところ)」を合言葉に、様々な国の日替わりシェフが母国の家庭料理のランチを提供している。母国の家庭料理を提供することで、在日外国人の活躍の場をつくり、各国の文化を学び交流する場となっている。
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