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深夜から強風が吹いていた。
北風ということだった。彼女の家に上着を持ってきていなかった。たまらずユニクロでダウンを買う。僕の持ち物でいちばん暖かい服になった。
下北沢まで耐えがたい移動をして芝居を観に行く。天野天街が演出している『田園に死す』だった。満席でスズナリの前の道路で整理券待ちの人だかりができていた。120番で、寒い中ずっと立って待っている。小劇場を観る環境が過酷で、ないがしろな扱いを受けると、生き甲斐を感じる。根本がマッチョな文化だと思う。たまの知久寿焼が招待客として来ていて、ニヤニヤ透明に笑いながらスズナリの階段を登って行った。
僕が入る時には最前の砂被り席しか空いておらず、ど真ん中に座った。
オーソドックスな少年王者舘の芝居に、オーソドックスなメタ演劇だった。僕は高校の頃順当に寺山が好きで寺山を元に卒業公演を書いていて、そのときのことを思い出していた。寺山的なモチーフの勘所は、それが何も生み出さずカラッポであるということで、そういうものに熱をあげるのは大変結構なことだと思う。焚き付けられるようなことは特になく、自分だったらどうするかうっすら考えながら役者をみていた。昨日もそうだったが、帰るときには満員の電車で、僕らがかけがえのないひとりひとりだということを考えるのは大変難しい。

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