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土砂降りの雨だった。旅館にいるときは他人事で風情さえ感じた。たっぷりの朝ごはんをゆっくり食べて、チェックアウトギリギリまで風呂に入った。休憩所にあった、吉行淳之介の妻が書いた手記を読み終えた。庭に薔薇を植えて主人がそこを通ってきたら素敵だと思い、全財産叩いてバラを買って淳之介を待っていたところ、あれは薔薇じゃない、お前は騙されたんだと言われて、実際にそれは焼け棒杭だったというエピソードがあった。でも小説にしてモトを取るから大丈夫だと言われたそうだ。
チェックアウトして、旅館と目と鼻の先にある三津シーパラダイスに傘を借りていく。八景島シーパラダイスと運営元が同じで、同じような良心を感じる。展示は多くはないが体系だっていて、余計な演出もないため博物学的な知識欲が満たされるいい展示だった。海水と地続きになった自由展示場というのがあって、人口の浜辺が作られていて、イルカやトドやセイウチが展示というよりただ普通に暮らしている。イルカショーがあって、ショーの途中で山田トレーナーという筋骨隆々の男性が飛び込み、イルカの横で浮いたり足を出したり、なんの説明もなくイルカと戯れる時間があった。イルカと山田が並列に扱われているような印象も受け、とても笑った。聞いたことのない、Greeenのキセキのような音楽が流れ、1人と1匹地味に動いていた。仲の良さをアピールするショーであるということが、終わってから説明された。
水族館からの帰り際に駐車場で山田さんとすれ違い、笑顔で挨拶された。
バスで沼津駅まで向かった。途中で寝たらあっという間だった。昼を食っていなかった。色々調べたが雨がひどいので、目の前の観光客向けの割高な店で海鮮丼を食べた。意外に良心的で値段相応の出来だった。カニ汁にタカアシガニが使われていた。閉店ギリギリまでかかって食べ終わり、みかんとおみあげを買って、東海道本線の普通列車で帰った。途中で海だけの死にたくなるような駅を何度も見送って、1時間ほどで横浜に着いた。
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