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ならおかひろきに久しぶりに会う。
まずは僕のZARAで買った服をバカにされるところから始まる。
冷静に考えて、僕がZARAを好んで着ているのはおかしなことなので、甘んじて受けるしかないと思う。

新宿の「ボルガ」に行って、もつ焼きとおしんこ、冷奴を頼み、黒生ビールとラガーの大瓶を飲む。ここはタバコが吸える。僕もならおかも、JTのしょうもないアンケートに答えて、タバコを無料で一箱もらっていて、今日はどうせ相手の分を貰えると思って昨日までにちょいちょい吸っていたら、お互いに同じことを思っていたらしく、もう4本しか残っていなかった。
17:30から飲み始めたので、客は僕らしかおらず、そうなると白けた。
2軒目に行こうと思ったけれど、ボルガの料理は安くて多いので、腹が一杯になった。

ならおかは今年の3月に修士を出ているが、就活が終わっていない。
ならおかは、ゆったりと、おちょくってるみたいにしか喋ることができないので、それを就活でもやるからよく落ちる。根本的に世間を馬鹿にしているのも実際そうだ。
ある企業で、餓鬼道の話をして食いつかれたそうだが、最終面接で上役から「君みたいにゆっくり喋る人はウチに向いてないと思う」「東アジアの人は自意識が強いんだよな」「まず君、今日スーツで来てるけどさ、ウチの会社にスーツって似合うかな?」などと意味のわからないことを言われて落とされたらしい。
来週は私立高校の採用試験を受けに行くらしい。科目は倫理と英語と現代社会で、倫理と英語は院でやっているが、現社は未経験で、この前ブックオフで現社のテキストを立ち読みしたらしい。700円だから買わなかったという。

ボルガを出て、新宿中央公園を歩いて、ラーメン屋に行って帰ろうと思う。
5、6年くらい前に行って、美味しかった記憶のあるラーメン屋に向かう。
大久保に向かっていく細道はうまそうな割烹などがあった。
多分ここだと思う店に入ると、違った。
味噌しかないので、違うなと思ったが、食券を買って待つ。
出てきた時点で不味そうだと思ったが、スープを飲むと甘すぎて、甘すぎた。ならおかに目配せして「まずい」と口の形で言う。ならおかも啜って、笑うしかない。ミソキンくらい甘い。出汁はない。おもちゃみたいにツルツルの麺は馬鹿みたいに滑る。肉そぼろがスープの所々にダマになって、油染みのように浮いている。「これ、ゴンがベアハッグで締め殺したアルマジロ・キメラアントの肉?」と言って笑った。まずいラーメン屋の店員は、店に対する愛着がないのがすぐにわかる。どこか投げやりで、不味そうな反応をすると、向こうもなんか半笑いでいることが多い。僕は友達といるとオーバーにリアクションする。

トー横と、歌舞伎町タワーを見にいくことにする。
友達や彼女と遊ぶときは、あまり猥雑なところに行って疲れさせるのも悪いなと思うが、ならおかとなら、耐え難いところに行っても、別にどうでもいいか、と思う。
歌舞伎町タワー前で便意を催し、ジェンダーレストイレに入る。手洗い場で女の人が化粧を直している。その横で外国人観光客の男女と僕が、トイレの順番待ちをしている。警備員がずっと立っている。最近女性専用仕切りができたようだ。
屋内のフードコートというか、宮下パークの下みたいな税抜き599円の春巻きとかを出す店はネオンで彩られていて、DJブースではとても綺麗な顔の女性が、クソみたいなDJをしている。

上はどうなっているのだろうと思って、長いエスカレーターを上がっていくと、多くのフロアは踊り場しかなくて、9階に、ホテルみたいな匂いの映画館のロビーがあって、僕らの他にもこの施設が一体何なのかを見極めにきた人たちが溜まっていた。エレベーターで帰ろうとするもなかなか来ないので、長すぎるエスカレーターを下っていく。途中にゲームセンターで、首に「18歳未満は20:00以降入場できません」と書かれた札をかけた警備員が立っている。
全てが露骨になっていく世界の、一番露骨な部分がここだ。
長すぎて暇なので、YoutubeでAIが作ったピザ屋のcmを見る。
「ペパロニ・ハグ・スポット」という架空のピザ屋で、1秒も安定しない人物の顔貌とピザは、まさに夢の造形と同じだ。デビット・リンチなんかよりも、よっぽど直接的に、露骨に、夢の世界そのものだ。少なくとも「イレイザー・ヘッド」よりは「ペパロニ・ハグ・スポット」の方が面白い。このAIは人間性を踏み躙っている。このようなcmが溢れ、歌舞伎町タワーを埋め尽くしてほしい。




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