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海に行けそうなチャンスがあるなら、いくことにしている。
海でなくとも、初めていくところではGoogleマップで、水の領域が多いところを見つけて、そこを目指して散歩する。
富山は、富山駅と富山湾の間が、そんなにないように見えた。
調べると、歩いて1時間30分とある。
雨が本降りだったので、路面電車でいくことにする。

路面電車は、最初は車道の真ん中を走っていくが、駅を越えると普通の鉄道のように独立し始めて、大きなコメダ珈琲、洋服の青山があるような国道と、住宅地の間の、列を走っていく。
だから、大きなSEIMSの駐車場の裏手に路面電車の線路があるような感じだ。
走りながら、日記に何を書くのかを考えていた。

終点の岩瀬浜で降りる。路面電車が海に繋がるのはいいことだ。途中で競輪場も通過する。
岩瀬浜は海水浴場だが、今は当然、泳ぐことができない。波は高く日本海の春だ。この先にはウラジオトスクとかがある。テトラポットの区切りがなかったら死にたくなるような果てのない景色だっただろう。雨の中、傘を差さずに海の方へ歩いていく男の人が遠くの方に見えて、入水するかと思って心配になるが、波打ち際につくなりタバコの煙が上がったので安心した。

海の写真をスマホで何枚か撮るけれど、傘が邪魔で靴下も濡れ始め、踵も乾燥でひび割れて痛いので、慊りない気持ちになり、気怠い。
雨に濡れた砂浜の重い、だけどすぐにひび割れてズレるのが、厄介にリュックの重みの左右差と踵を庇う重心をブレさして、腰が痛む。
砂浜と駐車場の間には木が大量に植えてあって、防風林のようになっている。遠くの工場では煙が上がっている。スマホで写真を撮ると、画面に雨の滴が線状についている。両手でスマホを持つと傘が肩からズレて後ろの方に倒れる。
杉林の間を抜けて駐車場から道路に戻っていくと、歩道の端には毛虫みたいな雄花が大量に落ちていて濡れていた。雄花と歩道の窪みに溜まった水溜まりを避けて踏むと踵が痛い。雨は勢いを増していた。

10分ほど歩いた先に展望台があって、それは高さ25メートルほどしかない小さな展望台だったが、エレベーターがないので階段で登っていく必要があった。
おそらく二度と来ないだろうし、登ることにする。

頂上に着くと、やはりこんなものか、と思っていた通りの景色が広がっていた。一面灰色で、窓ガラスの汚れが目立つ。
小さい赤いボタンがあって、説明を聞くことができる。

押すと、しばらく間があって、平成初期に録音したと思われるチープな音楽と女性の声が流れ始めて、誰もいないので笑った。このような音楽は、自動車の講習所のビデオなどで聴くことができる。

慊りない気持ちが次第に、そのまま、幸福に思えてくる。
家族でする旅行の、2日目を思い出す。旅館を出た後の、車で家に帰るまでの、その土地の道の駅などに寄ったりする2日目。うら淋しい、港の物産展などを見て回る。おそらく、二度と来ない。
眠く、リュックが重い。物産展の通路は狭く人とぶつかる。人生にはこのような退屈な時間が多く存在する。

あとは何も見て回る元気がないが、家族はいないし車もないので、駅まで歩いて電車に乗る必要があった。
ここは、完全に義務として過ごした。







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