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曇りで、外来見学は何もしない。
午後は待機で、ピッチが鳴るのを待つ必要があった。
何も手につかないので、ピッチを横に置いて寝る。

起きて、彼女と電話をする。
彼女が街を歩いている。
街の音がする。
『街とその不確かな壁』を読みながら話していたが、もうその文体に飽きている。

夕方になってやっと雲が切れてきて、夕日がぼうっと見える。
もう待機しなくていいので、散歩に出る。
なんだか、あきたりない。映画でも見れば違うのだろうか。
病院から駅に行く道は、2つあって、
逆にいうと細かな分岐はあれど2つしかなくて、分岐も別に面白くはない。

1つは、舗装された林道を下って、国道に続き、駅に登っていく坂道とぶつかり、その坂道は一つの大きなアーケードみたいになっていて、学習塾や中華料理屋、小綺麗な集合住宅、サイゼリアとジョナサンがある道。

もう一つは畑の間を通って行って、林道を無理やり切り開いた坂道を下っていき、大きな田圃の真ん中に出て畦道を進み、線路の下をくぐって、駅の裏手に出る道。

畑の方を行く道を選ぶ。夕方のこの時間が、いちばん虫が顔に当たる。椋鳥のような、小さな鳥が大量に電線に止まっていて、糞を落とされるのが嫌だったので「うわあああああ」と声を上げて脅かしたけれど、半分くらいしか飛び立たない。仕方なくその下を走って通り抜ける。

ユーカリプラザにつく。
5階のイオンシネマでの上映はほとんど終わっていて、コナンも見ないし、見るものがなかった。
4階の宮脇書店で、光文社古典新訳文庫のブコウスキー『郵便局』を買って、
2階のマックでポテナゲ大を買って食いながら読む。

隣の席に男子高校生の4人組がやってくる。
どうやら同じ中学校から同じ高校に上がったばかりの1年生のようで、制服の肩パットが新しく、肩幅が必要以上に大きく見える。ニキビも多い。

それぞれ違うクラスに振り分けられたようで、クラスの報告をしている。

「うちのクラス、みんなこのゲームやってるわ」
「うちは全員ツムツムしかやってない」
「おれの隣のやつ、生粋の陰キャなんだけど、授業中ずっと机タンタン叩いてて、みたら太鼓の達人やってたわ」
「一人ウマ娘やってる奴いる」
「ウマ娘とプロセカやってるやつはヤバい」
スマホをみながら、てりたまを食いながら、時々目を合わせて話す。

「結局入るとこなくてバドミントン行きそうだわ」
「マネジャー可愛いから野球部行くわ」
「はい、お前甲子園行けないー、グラウンド立てない」
「なんか今日野球部見たけど、おれでも試合出れそうだったわ」

「茶道部入ろうかな」
「茶道部何すんの?」
「え、なんかお菓子食う」
「お菓子部あんじゃん」
「お菓子部がお菓子作って
 茶道部がお菓子食べて
 ECCが英語話してお菓子くう」

それぞれ自分のクラスにいて、集めて、温めてきたリリックを披露しあって、テンポがしゃべっているような、こういう喋りは偏差値帯に関係なくあるんだ、と思った。
きっとこの人たちの部活選びはうまく行くのだろう。

歩いて、1つ目の道を帰ると、クビキリギスの鳴き声はなくなっていて、代わりに、蛙の鳴き声が総体のように聞こえた。暗い中で見るつつじは不気味だった。

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