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蒲田にチェリーという喫茶店があって、1960年からやっている。
石打の床に、年季の入ったソファ席が20席ほどあって、60年代のジャズが流れている。店内の壁は赤い。ロートレックの絵画がかけられている。時代がかったランプシェードには厚い埃の層がある。
蒲田に住み始めて間も無くの頃、大学の友達と見つけて、それからは蒲田で飲む度に締めとして使っていた。その時は23:00まで営業していて、ドリンク一杯がついた背の高いシフォンのようなパンケーキのセットは540円だった。煙草も吸うことができた。

その店の裏メニューに、プリン・ア・ラ・モードがあり、それはプリンの上にアイスクリームが4玉と、ブラッディオレンジ一切れ、オレンジ一切れ、スイカ1/16メロン1/16、ぶどう1玉、パイナップル1/8、りんご1/4、が乗っかって塔のようになり、そこに大量の生クリームが載せられた代物だ。頂上にはトレードマークのチェリーが2個。

そのプリンア・ラ・モードがインスタグラムで話題になり、連日超満員になり始めたのが、ここ1、2年のことで、今年の3月まではタバコが吸えていたが、吸えなくなった。

僕はそのプリンア・ラ・モードを食べたことがなかったので、初めて休日の昼間に行ってみることになった。日曜が定休なので、土曜の昼がいちばん混む。
席には座れたが、40分以上来ない。その間いくつものプリンアラモードが厨房から出て行き、他の席に配給されていた。厨房が見える席に座ったので、過密なオペレーションを目の当たりにすることになり、忙しさがこちらの身にうつり、落ち着かなかった。人間の悲しさを思った。
プリン・ア・ラ・モードは、アイス・ア・ラ・モードだった。・がうまく打てないので、いちいち「てん」と入れて変換している。その煩わしさが、まさに、アイス・ア・ラ・モードだ。「爽」だったら3カップ分のアイスを食べながら、生クリームの甘みで酸味のみが際立つフルーツを処理していき、たどり着いたプリンは美味しい。ずっと前にきた、冷めた紅茶は渋い。

これで800円なのは、何でなのだろう。と思いながら、チェリーを出る。
外にはまだ客が並んでいる。
プリン・ア・ラ・モードを食べるがいい。
喫煙所は外にある。

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