「悲しきASIAN BOY」レビュー

swamipremabhisheka
4 年前
三島由紀夫と一緒に腹切りをした森田必勝の気持ちを歌っていることをいったいどれだけの人が理解しているのだろうか?

 「悲しきASIAN BOY」は三島由紀夫ではなく、森田必勝が主人公の歌。
 「桜色の唇に 触れたいのに唇に」というのは、三島の唇。三島は何色かの夢を見て、死を選ぶが、おれ森田は「強さと引換えに命は散らせない」ただ君(三島)を愛しているだけ。でももう後ろで神様が剣をかざして待っている。(具象的には介錯の古賀。)
 この割腹は悲しいがやりとげるしかない。
 ああ、森田はなんと悲しいASIAN BOYなんだろう。
 なお、ASIAN BOYという英語には男娼という意味もある。この歌は、欧米に強姦されたアジアの悲しみ、男娼の悲しみ、森田と三島の悲恋の悲しみが渾然一体となったもの。
 だが、ハラキリにも、その目的とする憲法改悪にも、吉井和哉は根源的には批判的で、本当にあったのは(ゲイの)愛だったはずという愛と平和の歌だと僕は思う。
 だけど、途中まで森田の気持ちに限りなく寄り添ってから、悲しいというだけなので、ジョンレノンのような愛と平和の歌とはまるで違ったタイプの愛と平和の歌だと思う。
 ロックンロールでそのことをここまでのパワーで歌い、何万人の観衆がそれに沸いている動画を見ていると、この歌を大コンサートで歌うこと自体が、三島・森田のハラキリとエネルギー的に釣り合うぐらいの膨大なエネルギー放出だと感じられる。
 弔いとしても一流だ。だけど、ほとんどの観衆はこの歌の意味に気づいていないだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=ruNBGK9FVaw&list=RDMMruNBGK9FVaw&start_radio=1

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