勝手にシャクティパット

  あれはまだオウム真理教事件以前だったから、授業で瞑想を教えようと、誰も文句を言わなかった。
 僕は、インド人の女性グル、愛称グルマイ、名前をスワミチッドヴィラサーナンダという人からシャクティパットを受けて、いつもクンダリニーがビンビンに上がっていたから、たまにやってみますかーてんで、クラスの皆で「オームナマーシヴァヤ」のマントラを唱えて、そのときグルマイから僕を通して皆にシャクティパットしちゃったのです。
 そしたら、あとでKちゃんというグルマイの幼い頃に容貌がそっくりの女の子が前に来て「先生。両手からびりびりってエネルギーが上がって、胸が熱くなりました」って言いにきた。
 「じゃ、今度、万博記念公園にグルマイがインドから来るから、一緒に行く?」と聞くと「行く」と言うので一緒に行きました。
 てか、Kちゃんとは本番の日に一緒だったんだけど、その前日、瞑想プログラム本番前の宣伝のための無料デイに、「たけしの元気が出るテレビ」のダンス甲子園で人気者だったいまきた加藤と一緒にグルマイに会いに遊びに行ったのです。
 そしたらもう千里の駅でコンビニの中でフアンに見つかってしまって、「あっ、いまきた加藤や!」って大騒ぎになり、加藤は鶏歩きの吉本ギャグを一発かまして皆が笑っている隙に「逃げろー」ってビートルズの「ア・ハードデイズナイト」みたいに、フアンから逃げて走って、有名人の気分を味わって楽しかった。
 その日、加藤が言ったことでおもしろかったのは、「あびちゃん。あの人(グルマイ)、なに? あの人、すごい。あ、あ、風が来る。あの人から風が来て、私椅子に押し付けられて動けない」って。僕はそれを質量をもった光のように感じていたけど、加藤にとっては知っている言葉で近い言葉が「風」やったんやね。
 そして本番。Kちゃんも来て、クンダリニーが上がって幼少期からの心の傷がたくさん癒されたようだった。で、二日間のプログラムが終わって、グルマイの前にひとりずつ出ていって挨拶するダルシャンというのがあって、僕はそのとき、グルマイに「たくさんの人を招待したあなたに」と言われてショールを一枚もらった。で、Kちゃんはと言うと後で聞くと
 グルマイが「あなたは私を知らないかもしれないけど、私はあなたを待っていた」とKちゃんに言ったって。(通訳付き)。ふーん。だから、あのとき、授業中にびりびり来てわざわざ僕にそれを言いに来たのか。
 僕は家に帰って、「はい。おみやげ」と言って、ショールを妻の肩にかけた。すると、妻は驚いて「なに、これっ!」って。シュワーシュワーとペパーミントのようなエネルギーが体中を包んだんだって。
 不思議なもんやね。
 にもかかわらず、拙著「魂の螺旋ダンス」でシャクティパットについて僕が一番言いたかったことは、これは特別な現象ではないこと。宇宙の普遍的なエネルギーの流れに自覚的になるというだけのことであって、グルを崇拝する必要はないこと。グルの言説はそれとは別に批判的に検討するべきだし、事実グルマイの言説はカルマの名のもとにカーストを肯定する危険性を孕んでいることなどなどです。

そのときの、いまきた加藤のライバルだった、ダンス甲子園のお笑い系ダンサーの人気者がメロリンQこと山本太郎。
秘密保護法反対キャンペーンで奈良で会ったとき「いまきた加藤を教えてました」というと、山本太郎は「懐かしいなあ。全然、会ってないもんなあ。どうしてんねやろなあ」と言っていました。

司会 いまきた加藤。 
ダンス メロリンQ=山本太郎。

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