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小説

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#吉村萬壱

「哲学の蠅」を読んでるとき

「哲学の蠅」を読んでるとき

吉村萬壱「哲学の蠅」を読んでいるとき、7年前のこの書き込みを思い出した。

 皆50をいくつも過ぎた 旧友たちとの鴨鍋パーティは案の定、夜明けまでの文学談義、人生談義、恋愛談義、その他秘密会議に及んだ。
 最初のうち、それは何十年も繰り返してきた互いの視点の違いの提示、確かに相互理解は少しずつ深まっているものの、明らかに異なる部分の照らし合わせに見えていた。何にこだわり、何をもっと見つめたいと感じ

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吉村萬壱「臣女」

2015年3月19日

 再読せずにメモするので不正確かもしれないが、『臣女』の一番目のテーマが介護であるという説が流布し、作者も「それで受けるなら、それでいこう」と思っている節があるが、私が読むと違う。
 私が読むと、そういうありきたりのものでなく、もっとおもしろい。
 『臣女』の第一のテーマは、妻という存在の理不尽さと恐怖(こっちには保護意識が混じる)、二つ目のテーマは母という存在の理不尽さと

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吉村萬壱「出来事」

吉村萬壱「出来事」読了。細部に気を配って飽きさせない文体を維持する苦労がしのばれる。作品としては、どこまでをフェイク、どこまでをホンモノとするのかが、中途半端な気がした。人間の社会的合意がフェイクなのか。人間の脳の認識パターンそのものがフェイクなのか。

おそらくはそのせめぎあうどこかで書いている。だから緊張感があるともいえるが、だから脳の認識パターンそのものの徹底破壊の恐怖も清々しさもないとも言

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