Tips of Buddhism

No.19
Notwithstanding the radical differences in their philosophical notions Jainism and Buddhism,which were originally both orders of monks outside the pale of Brahmanism,present some resemblance in outward appearance,...(S.Dasgupta;A History of Indian Philosophy,vol.1,1997 rep.of 1922,p.169)
 

(訳)
ジャイナ教と仏教は、そもそも、両者ともバラモン教の枠組みの外にある僧団ではあるが、哲学的考えにおいて、根本的に異なっている。にもかかわらず、ちょっと見には、幾分似たところがある。
 
(解説)
世界的に著名な、ダス・グプタの『インド哲学史』から引用した。仏教もジャイナ教も、インドでは非正統派の宗教である。インドでは、何と言っても、最古の聖典ヴェーダを重んじ、それを中心とした宗派が正統派なのである。そこでは、バラモンが宗派を司る。それに対し、仏教もジャイナ教も、在野の修行者、シュラマナ(samana)が開いたものである。日本で、
沙門(しゃもん)と呼ばれる修行者の本々の名だ。非正統派という点で、仏教とジャイナ教には、当然共通項も多い。特に、原始仏教と原始ジャイナ教は、驚くほど、似ているのである。しかし、決定的な違いもある。仏教は「無我」を説き、「我」即ち輪廻の主体であるアートマンを認めない。これに反し、ジャイナ教ではアートマンを認める。そして身体を不浄視し、苦行によって身体を離脱したアートマンだけの状態を最上のものとする。仏教は、しかし、極端な苦行を排するし、身体への嫌悪感も本来ないのである。現今の仏教諸派の中には、ジャイナ教と見間違うほど苦行を尊び、また、身体への不浄観を示すものがあるが、それは仏教ではない。専門家の解説を紹介しておこう。
  ジャイナ教と仏教は、ともにヴェーダ祭式宗教に対する批判的革新勢力として、既に成立していた業(ごう)と輪廻の思想に基づきながら、最終的にはこの業と輪廻を超克(ちょうこく)することを目指した。このため両教には共通点が多い。まず、聖典をはじめとする文献において、両教は、その思想や実践の根幹に位置する術語を多く共有する。漢訳の仏教術語で挙げると、無常、愛、貪(とん)・瞋(じん)・癡(ち)、業、漏(ろ)、律儀、禅定、解脱、涅槃(ねはん)、比丘、阿羅漢(あらかん)、如来、仏陀などである。…また、共通点として前に挙げた両教の文献の共通箇所にも多少の異同は認められ、それらを仔細に検討すると、前に記したジャイナ教と仏教の違いが鮮明に浮かび上がることがある。欲望に限度がないことを達観する共通詩において、ジャイナ教は「苦行tava(tapas)」の、仏教は「正しくバランスを保つことsama」の実践を強調する。…歴史的には、仏教は、東南アジア・チベット・中央アジア・中国・朝鮮・日本にまで伝播して、世界の三大宗教の一つに数え挙げられるが、ネパール・スリランカ等の周辺部を除いてインド本国では十三世紀頃に滅びた。他方、ジャイナ教は、インド外にまで伝播することはなかったが、少数派ながら現代までインドで生き残ってきた。(榎本文雄「コラム②ジャイナ教と仏教」『新アジア仏教史02 インドII 仏教の形成と展開』平成22年所収、pp.116-118、ルビ私)
仏教の真の姿を探ろうとすれば、ジャイナ教はもとより、他のインド学派との比較も重要であろう。始めに仏教ありきではないことを認識して欲しい。
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?