仏教豆知識

その2
続けて、藤井氏は、アメリカでのマインドフルネスを論じます。それを見ていきましょう。
 現在マインドフルネスの語と結びつけられている言説(げんせつ)と活動は、大きく2つに分けることができる。第一のものは、上座部(じょうざぶ)仏教の用語としてのマインドフルネスと、その概念に基づいた瞑想の実践である。そこから派生した第二のものは、米国で生まれた医療行為としてのマインドフルネスである。(藤井修平氏「マインドフルネスの由来と展開―現代における仏教と心理学の結びつきの例として」『中央学術研究所紀要』46,2017,p.63,ルビ私)
次に藤井氏は、アメリカの仏教事情に触れ、マインドフルネスの源(みなもと)を辿(たど)っていきます。
 19世紀から現在まで、米国にはさまざまな形でアジアの仏教が持ち込まれてきたが、第一の大きな動きは、1893年のシカゴにおける万国宗教会議に刺激された日本仏教の米国への進出であった。…1950年代には、〔世界的に知られる〕鈴木(すずき)大拙(だいせつ)…らが日系でない米国人を対象に教えを広め、「禅ブーム」が巻き起こった。…〔その後〕マインドフルネスが仏教の中心であるとする教えを展開する僧侶が1960年代から米国で活動するようになった。…とりわけ著名だったのがスリランカ仏教を伝えたニャナポニカ・テラやベトナムのティク・ナット・ハンであり、彼らは英語でマインドフルネスに関する著作を多く残している。こうした上座部・大乗(だいじょう)仏教(ぶっきょう)の影響を受けて、米国発の組織として1976年にインサイド・メディテーション協会が生まれた。(藤井修平氏「マインドフルネスの由来と展開―現代における仏教と心理学の結びつきの例として」『中央学術研究所紀要』46,2017,p.63,ルビ・〔 〕私)
ご存知の方もいるかもしれませんが、ごく初歩的な仏教の知識を述べておきましょう。まず、仏教は大きく小乗(しょうじょう)仏教(ぶっきょう)と大乗仏教に分類されます。藤井氏の言う「上座部」は、小乗仏教に当たります。ただ、小乗という呼称は、差別的意味合いを含むことがあるので、上座部と
いっているのだろうと思います。主に、東南アジアやスリランカの仏教を指します。これに対し日本の仏教は、大乗仏教です。禅宗も浄土宗(じょうどしゅう)も日蓮宗(にちれんしゅう)もみなそうです。歴史的には、小乗仏教が古く、大乗仏教は新しい仏教です。その新しい仏教が、旧来の仏教を小乗仏教と呼んだのです。詳しい説明は省きますが、自分たちは「大」で、それまでの仏教は「小」ですから、何となく意図はわかると思います。藤井氏によれば、マインドフルネスは小乗・大乗両方の影響を受けたようです。

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