仏教論理学序説

その14

この第40偈は、実は、ドレイフェス氏にとっても、すこぶる重要な意味を持つ。彼は、同偈に対するシャンカラナンダナ(Sankaranandana)注をmoderate realismの震源の1つとしているからである。その注は、以下のようなものである。
 〔ダルマキールティの偈中の〕「すべての集合体(dngos,bhava)」とは、単に、可視的なもの(gsal ba,vyakti)にとどまらず、普遍でもある、という意味なのである。dngos kun te/gsal ba ‘ba’ zhig tu ni ma zad de/spyi yang yin no zhes bya ba’i don to//(Tshad ma rnam ‘grel gyi ‘grel bshad,デルゲ版、No.4223,Pe.152b/6)
ドレイフェス氏は、こう述べている。「そのような文言は、以下のことを示している。普遍のゲルク派的見解は、オリジナルたるインドモデルの改竄ではなく、インド発の思想的発展である。」(G.Dreyfus”Universals in Indo-Tibetan Buddhism”Proccedings of the 5th Semonar of the International Association for Tibetan Studies Narita 1989,vol.1,Naritasan,1992)

 

 


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