Tips of Buddhism

No.81
The Salem witch trials were a series of hearings and prosecutions of people accused of witch craft in colonial Massachusetts between February 1692 and May 1693.More than two hundred people were accused .Thirty were found guilty,nineteen of whom were executed by hanging.(from Wikipedia Salem witch trials,2020/02/20)
 
 
(訳)
セーラムの魔女裁判は、植民地時代のマサチューセッツで、1692年2月から1693年5月中に〔行われた〕。魔術のかどで告発された人々の一連の審理と起訴のことである。200人以上の人が告訴された。30人は罪が認められ、うち19人は絞首刑に処せられた。
 
(解説)
仏教とは無関係な記述に思えるだろう。しかし、探っていくうちに、つながりも見えてくる。魔女裁判は、ヨーロッパで行われたことを知る人は多いと思う。しかし、新大陸アメリカでも起こったのである。アメリカの宗教史上、最大の汚点である。実は、経済的あるいは政治的理由で、アメリカという国へ、移住してきた人ばかりがいるわけではない。宗教的な信条の異なりから、ヨーロッパでは暮らしにくい人も、多数、渡ってきた。アメリカは、近代の経済・文化をリードしてきたが、一見古臭い宗教的な事柄に、いまだこだわっているのである。
  セーラムの魔女裁判は、後に、アメリカを代表する文学作品『緋文字』(Scarlet Letter)を生む。作者は、ホーソン(N.Hawthorne,1804-1864)である。彼の先祖は、魔女裁判の判事をしていた。ホーソンは、このことに悩み、それを題材として『緋文字』を著した。このホーソンは、宗教的理由からであろうが、当時、センセーショナルな宗教的活動を行っていたグループ、「超絶主義」(transcentalism)者達としばらく生活を共にしていた。中に、エマーソン(R .W.Emerson,1803-1882)という宗教家であり、かつ文学者でもあった人物がいて、指導者の立場にあった。また、仲間には、ソロー(H.D.Thoreau,1817-62)という今では著名な文学者がいる。
このソローが、仏教とつながりがあるのである。鈴木(すずき)大拙(だいせつ)(1870-1966)は、欧米に禅を広めた人として、名高い。大拙は、ソローに関心を示し、あるエッセイで、こう述べている。
 基(き)教(きょう)が神に熱するの余り、前後を忘却(ぼうきゃく)せんとするに比すれば、印度(いんど)宗教の超然(ちょうぜん)脱俗(だつぞく)の趣(おもむ)きある処(ところ)、大にソーロ仙人を動かしたりと見えたり。(「米国田舎だより」『鈴木大拙全集』別巻一、昭和46年、p.197,初出『新仏教』6-5明治38年(1905)、一部現代語標記に改める、ルビ私)
ソローを仙人と呼んでいる。実際、ソローは仙人のように暮らした。彼は、ウオールデンという湖の近くで、3年程、自給自足の暮らしを営んだ。後に、そこでの生活を『ウオールデン』Waldenと題した小説にまとめ、出版した。生前はあまり評価されなかったが、やがて、大拙の目にも止まり、現代では、自然主義者達の教祖的存在になっている。
 こうして見ると、全く無関係に思えたセーラムの魔女裁判も、仏教と必ずしも、無縁ではないことがわかってもらえると思う。ズバリ仏教に関する題材も取り挙げることはもちろんであるけれど、今回のように、一見すると関わりのないものも紹介していく。
 


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