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コートールド美術館展 2019年11月1日

#コートールド美術館展
#東京都美術館 #2019年11月1日
#ドガ #ルノワール #ブーダン

「コートールド」という名前は知りませんでした。そんな美術館があるなんて、ましてや人の名前だなんて。世界の名だたる蒐集家としてはアメリカの方(実業家など)が有名なのかなと思いますが、ま、私が無知なだけですね。

美術品等のコレクションは蒐集家の好み(特質)が表われてとても面白いです。でも現実的には内容はともかくその膨大なコレクション数に圧倒されてこちらはぐうの音も出ませんけどね。
今回はサミュエル・コートールド氏の品の良さを痛感した展覧会でした。展覧会は展示品が主役なのは勿論ですが、補足情報として蒐集家の家の様子が掲示されている場合があります。(例 フィリップスコレクション展、三菱一号館美術館、2019年)
その邸宅内の写真を(原寸大?)に大きく伸ばし、展示室の壁面に設置していました。そのセンス(内装、美術品の展示の方法、調度品など)の良さに嘆息・・・、展示品よりそちらを凝視してしまいました。蒐集家の邸宅内は美術品が数多く陳列されていると思いますが(※)、コートールド氏のそれは一部屋にポツンと1点(或いは数点)飾られているだけです。私にとっては理想の空間に見えました。最初は図録を買うつもりはなかったのですが、見本をめくってみると邸宅内の写真が少しだけ載っていたので、それを手元に置いておきたくて買いました。

※「邸宅美術館の誘惑」、朽木ゆり子、集英社、2014年10月29日発行

さて、気に入った作品をいくつか。

#舞台上の二人の踊り子
エドガー・ドガ、油彩、カンヴァス、1874年
何時もの如く、実物を観るとテレビや印刷物で見るのとは全く違います。私には踊り子たちがその画の中から浮き立っているように見えました。舞台上の光の具合、踊り子(特に手前)の顔に当たる光の加減の表現が絶妙で素晴らしいです。このような表現の画を見た覚えがありません。今回の展示品の中では一番気に入りました。

「春、シャトゥー」
ピエール=オーギュスト・ルノワール、油彩、カンヴァス、1873年頃
素直に単純に美しいです。いろいろな緑色が夢の世界を表現しています。画の中の人物、或いはそれに重ね合わせた自分が自然(草木、風、土、花、匂い、虫・・・)の中にいることで、「生きる喜び」を無意識に感じている様子が描かれていると思います。

「ポン=タヴェンの郊外」
ピエール=オーギュスト・ルノワール、油彩、カンヴァス、1888-1890年
「春、シャトゥー」もそうですが、額縁が窓(ウインドウ)になっています。その窓の向こうにその光景が本当に広がっていると感じさせてくれます。窓を開けると隣りのビルの壁が見えるような都会にいても、この画が室内にあれば気持ちはいつも自然の中に泳いでいることができます。

少し気になったのが、

「トゥルーヴィルの浜辺」
ウジェーヌ・ブーダン、油彩、板、1875年
とっても小さな画です。ところがです、遠目に見ても何が描かれているか何となく分かるんです。時代背景は色々あるようですが、明るく描かれた情景にハッとする作品です。

「ドーヴィル」
ウジェーヌ・ブーダン、油彩、カンヴァス、1893年
雲が多いとはいえ、(自分の心が)青空に突き抜けることができる光景です。描かれている人々は無心ではないです(「春、シャトゥー」とは違う)。人生の(心の)重しを引きずりながらもこのひととき(太陽の光、海風、砂の粗さ)を感じている、そんなことが表現されていると思います。

このような展覧会に出向くときは私は額縁を見ることも楽しみにしています。恐らく作品が描かれた当時のものが多いのでしょう。多くの額縁が古臭く、黒ずんで、中には一部損傷したようなものまで。細工がとても凝ったものからシンプルなものまで。額縁を見てるだけで何100年前の迷宮に迷い込んだ気分にもなれます。

東京都美術館では多くの展覧会で、来場者が写真を撮れる一角を設けています。この椅子に座れば一瞬だけ大富豪の気分が・・・、ね。

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